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大分県警が隠しカメラ 違法捜査の背景徹底検証求める 2016年08月28日(日)

 参院選公示直前の6月、大分県警別府署員が、野党の支援団体が入る建物敷地に無断で隠しカメラを設置した事件を巡り、県警は建造物侵入の疑いで、設置した署員2人と上司に当たる同署の刑事官、刑事2課長の計4人を書類送検した。
 会見で県警は「他人の敷地内を撮影する必要性、相当性はなく、不適正な捜査だった」と認めた。建造物侵入という違法行為を犯した捜査は許されるものではない。なぜ隠し撮りに至ったのか説明を尽くし、第三者を入れて検証せねばならない。
 県警は、公選法で選挙活動が禁止された立場にある自治体職員の出入りの確認が目的だったとする。だが、カメラが狙った建物には野党の候補者を支援する団体の選対事務所があり、不特定多数の市民が訪れる。特定の個人だけでなく、出入りする全員を撮影する行為は「監視」そのもの。プライバシーの侵害に当たる。憲法が保障する思想・信条の自由や、民主主義の基本である政治活動の自由を犯しかねない重大な問題であり、決して看過できない。
 県警の調査結果によると、カメラ使用を別府署の刑事官が発案した際、報告義務のあった同署の刑事2課長は県警本部へ連絡せず、その日のうちに署員2人がカメラを設置。翌日に設置状況を聞いた刑事2課長は、建造物侵入の疑いがあると認識したが「(いまさら)報告しても認められない」と思って放置したという。
 建造物侵入の疑いは捜査員2人も認識していたが、幹部との間でカメラ使用の是非や侵入の違法性を巡り議論が交わされることはなかった。事件の背景には、こうした風通しの悪い組織の体質があるのではないか。
 県警は自らの責任に関し「知らなかったので落ち度はない」と否定したが、個人の問題に矮小(わいしょう)化することは容認できない。組織全体で省み、再発防止に取り組むよう強く求めたい。
 違法手段までとった捜査の理由はいまだ判然としない。参院選大分選挙区では、野党統一候補と自民党候補が激しい選挙戦を繰り広げた。市民からは「情報収集」「選挙妨害」を疑う声が上がっている。隠し撮りが他にも、また大分以外でも同様に行われているのでは、との疑念も募る。信頼を取り戻すためにも、全国の捜査機関のチェックが必要だ。
 5月には、捜査で電話やメールのやりとりを傍受できる対象犯罪を大幅に拡大する改正通信傍受法が成立した。専用機器を導入すればNTTなど通信事業者の立ち会いは不要に。捜査機関の施設内で傍受することも可能になる。
 さらに政府は、過去3回にわたり国会で廃案となった「共謀罪」法案を、形を変えて9月の臨時国会に提出する方向で調整している。知らぬ間に監視され人権やプライバシーを踏みにじられないよう、捜査機関の暴走は食い止めなければならない。