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第5回愛媛防災シンポジウム

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 芸予地震から20年、東日本大震災から10年、熊本地震から5年―。節目の2021年に地震について考える第5回愛媛防災シンポジウム(愛媛新聞社・NHK松山放送局主催)が2021年5月30日、松山市大手町1丁目の愛媛新聞社で開かれた。愛媛で起こりうる地震はどのようなものか。どう備えればいいのか。専門家と市民が意見を交わした。

第5回愛媛防災シンポ全景

愛媛で起こりうる地震と備えについて意見を交わした第5回「愛媛防災シンポジウム」=2021年5月30日、愛媛新聞社本社

パネリスト 愛媛大防災情報研究センター長 バンダリ・ネトラ・プラカシュさん、
県歴史文化博物館専門学芸員 大本敬久さん
ゲスト タレント スザンヌさん
参加者 五明地区自主防災組織 吉金茂さん、山本知美さん、学生防災リーダークラブ代表 渡部友梨さん、学生防災リーダークラブ事務局代表 木原琴香さん、新居浜市危機管理課主管 高橋直樹さん、新居浜市金栄小教諭 印南友統さん、金栄小6年 浅野愛結さん、山口慧大さん
司会 NHK松山放送局チーフアナウンサー 永井伸一さん
コーディネーター 愛媛新聞社編集局次長・オンライン編集部長 山本良

※肩書・年齢はいずれも当時

第1部 愛媛の地震を知る

どこも安心できない スザンヌさん  土地の特性 理解必要 大本さん

どこも安心できない スザンヌさん
土地の特性 理解必要 大本さん

大本敬久さん
  • 大本敬久さん

永井 国が発表している活断層や海溝型地震の長期評価で、四国を横断する中央構造線、中でも愛媛県の区間は最も地震の可能性が高いSランクに設定されている。
ネトラ 中央構造線はそこまで地震が頻発するところではないと言われているが、前回の地震から時間がたち発生する可能性が0~12%と上がってきている。熊本地震も中央構造線沿いの地震として知られる。地震は大きく海溝型と断層型の2つに分かれ、愛媛でも両方の地震が被害をもたらす可能性がある。
スザンヌ 東日本大震災の時は東京に住んでおり、震災後は防災バッグとスニーカーをそばに置いて寝るようにしていたが、まさか引っ越した先の熊本で被災するとは思わなかった。どこに住んでも安心はできないと実感した。
大本 年表にまとめると、愛媛は周期的に大地震の被害に遭っている。例えば南海トラフ巨大地震は100~150年で繰り返し起きており、地球の活動が続く限りは再び発生すると予測される。30年以内に70~80%の確率で発生するというのは決して大げさではなく、地震の周期から見ても妥当性が高い。
永井 大本さんは災害に由来する石碑の調査もされている。2019年にはそのような「自然災害伝承碑」が地図記号にもなった。
大本 石碑の内容を読み解くことで、その地域でどんな被害があったのかうかがい知ることができる。例えば西条市禎瑞地区の石碑には、1946年の昭和南海地震の被害として「地盤が60センチ沈下した」とあり、そこに海水が流入し農地として使えなくなってしまったと記録している。震源地から遠く離れた瀬戸内海側の西条市でも甚大な被害が起きたことが分かる。土地の特性を知り、防災に生かすことが大事だ。
山本良 南海トラフ地震と聞くと津波に注目しがちだが、県の被害想定では西条市の被害者数が最も多い。
ネトラ 津波到達時間が早く、大きな被害が想定される南予はもちろんだが、瀬戸内側も決して油断できない。津波に加えて、砂でできた地盤が多い沿岸や川沿いでの液状化、市街地の強い揺れには注意が必要だ。
永井 県全体の被害を頭に入れておかないといけない。東京から愛媛に異動になったとき周囲から「愛媛は災害が少ないところでしょう」と言われたが、実際はどうなのか。
大本 愛媛は災害が少ないという安全神話が流布したのは1965年ぐらいから。それ以前に災害が少ないと書かれた書物はない。人の記憶は発生から10年で忘れ始め、20年でリアリティーがなくなってくると言われている。ちょうど昭和南海地震が発生した後の時間の経過と合致する。大規模災害の事実を忘れることで誤解や油断が生まれ「災害が少ない」が言われ始めたのではないか。定説に対して常に疑問を持つ姿勢が大事だ。

第2部 地震から身を守るには

マップ 事前に確認を ネトラさん  被害の情報 次世代に 高橋さん

マップ 事前に確認を ネトラさん
被害の情報 次世代に 高橋さん

バンダリ・ネトラ・プラカシュさん
  • バンダリ・ネトラ・プラカシュさん

山本良 熊本地震で被災するまで、防災についてどれくらい考えていたか。
スザンヌ 生まれ育った熊本は地震が少ない場所と思っていた。地震が起きるまで防災意識は低かった。
永井 京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)によると、災害の危険を知っていてもすぐに行動に移せない心理には、楽観的タイプ(自分だけは大丈夫)▽先延ばしタイプ(まだ大丈夫)▽悲観的タイプ(もうだめだと思って何もしない)―の3パターンがあるという。
スザンヌ 以前は先延ばしタイプだった。子どもが生まれて意識が変わり、地震が起きた場合の対応を子どもとよく相談している。近所のコミュニケーションも大事にするようになった。熊本地震では祖母と連絡が取れなくなり心配したが、同じマンションに住む若い男性が祖母を避難所に連れて行ってくれていた。近所の人を互いに把握しておく大切さを学んだ。
吉金 地域の高齢者は災害経験が少なく、防災訓練への関心も低い。
山本良 地震が起きる前に、まずすべき備えとは。
ネトラ 全国どこにいても災害に遭う可能性は高く、行政のハザードマップなどを基に自分の地域を知ってほしい。マップは広域で情報量が多く、分かりにくい面もあるため、マップを持って避難所や避難経路を確認することがソフト対策として重要だ。
永井 自分の住む地域を知ろうと、新居浜市の金栄小学校は2004年の豪雨災害を機に防災教育に力を入れている。5年生は防災の授業が週に2時間あり、町歩きを通して防災マップを作成している。
大本 学校教育の中で現地を歩き、見聞きしたことを基に考えるという良い取り組みだ。西予市野村小も18年の西日本豪雨を受け、同様の取り組みを実施し、乙亥会館の災害伝承展示室で成果を紹介している。ここ数十年、大規模水害が発生していない地域でも進めるべきだ。
永井 金栄小は防災新聞も作り回覧板で回している。活動を通して気付いたことは。
浅野 公民館にこんろを収納した防災ベンチがあった。火をおこしたり、調理できたりすることが分かった。
永井 地元小学校の取り組みは心強いのでは。
高橋 金栄校区は豪雨災害により大規模な範囲で浸水被害があった。次世代に伝えていくことが大切だ。
山本良 地震が起きた後のことも、今のうちに対応を考えたい。
永井 矢守教授はその意識付けができるゲーム「クロスロード」を考案した。被災地では難しい判断を迫られる場面が多いという。「大地震が起きたとき、避難所にペットを連れて行くか」といった質問にイエスかノーで答え、さまざまな状況への対応を考えるが、正解はない。
スザンヌ 地震が起きる前に、テーマに沿って家族で話し合っておきたい。異なる意見を聞くことも勉強になる。

第3部 備えを継続するには

親しみ持ち学ぶ工夫 渡部さん  若者がゲームも企画 吉金さん

楽しく関われる工夫 渡部さん
若者がゲームも企画 吉金さん

スザンヌさん
  • スザンヌさん

山本良 防災への意識や行動は続けることが大切。「学生防災リーダークラブ」の具体的活動は。
渡部 県内の大学生で構成しており、子どもたちに防災教育をするほか、各地区の防災訓練や防災士向けの研修会にファシリテーターとして参加する。
 子どもには防災意識を促すことで家庭への波及効果も狙っている。中高生向けには、実践的な「避難所開設ゲーム(HUG)」やクロスロードを活用。どうすれば親しみを持って防災を学んでもらえるか工夫している。学生が地域に新しい風を吹き込み、防災訓練を活性化できればいい。
永井 五明地区の防災訓練や地域行事には学生が参加している。
吉金 5年くらい手伝ってもらっている。地域の防災訓練には毎年小学生や幼稚園児も参加するので、釣りの要素を取り入れて非常用持ち出し袋の中身を考えるゲームを企画してもらった。地区の運動会でも1種目、防災に関する種目を考えてくれた。
渡部 リュックにペットボトルを入れて運ぶリレーで、水の重さを知ってもらう。地域と子どもを巻き込むことで楽しく防災に関われないかと計画した。
吉金 もともと少子高齢化地域。学生約20人が競技に出るとにぎやかで、地域は喜んでいる。地域全体で防災意識を高める手段になっている。
スザンヌ 楽しみながら防災について考えているのが印象的だった。帰って家族や周りの人で話し合い、未来に防災のことを伝えられるようになりたい。
 熊本地震から5年たつと、覚えているつもりのこと、対策しているつもりでもできていないことがあると思い出せた。皆さんの話で意識を高められた。
永井 油断しないように、災害を自分事と捉えるためには何が必要か。
ネトラ 地震の時、頭に落下物が当たり死ぬ確率が高い。家の中の物の固定を怠らず、頭を守ることが大切だ。また、自分の地域や居場所を知ることも大事。自主防災組織や地域防災活動には、嫌がらず継続的に参加してほしい。
大本 各地で過去に起こった災害の歴史や履歴を把握することが大事だと改めて感じた。南海トラフ巨大地震の被害でイメージしやすいのは宇和海沿岸部の津波だが、昭和南海地震の犠牲者26人のうち、東中予の方が死者が多かったことを忘れてはいけない。
 昭和南海地震のマグニチュードは8.0。8.6の宝永南海地震や8.4の安政南海地震と比べ、規模が比較的小さかった。今後予想される南海トラフ巨大地震は9.0~9.1で、昭和南海地震の32倍の大きさだ。歴史を過信せず、忘れないことが大切だ。
山本良 防災活動に携わる人から話を聞き、今後の取り組みを考える上で参考になったと思う。県民が改めて災害に関するリスクを考え、自分事として捉えて、暮らしの中で防災減災につながる行動を実践してほしい。

参加者の声

山本知美さん

山本知美さん(57)

少しずつ取り組みを
 五明地区の住民は学生防災リーダークラブと協力し活動することで、それまで知らなかった防災知識を知ることができる関係をつくってきた。新型コロナウイルスの影響で約1年間活動がストップしているが、できることから少しずつ取り組みたい。
吉金茂さん

吉金茂さん(64)

思い込みを変えたい
 災害時の行動を想像してイエス・ノーで答える防災ゲーム「クロスロード」で、被災後の対応について考えさせられた。「五明地区は災害が少ない」と思い込み防災意識が低い住民もいる。意識を高めるためにどうするべきか、改めて考えなければならない。
木原琴香さん

木原琴香さん(21)

伝承碑の存在知って
 自然災害伝承碑はクラブでも近々取り上げようと思っていたので、勉強になった。確かに一般の人は読みにくいと思うので、古典の得意な学生に手伝ってもらうなどして多くの人に存在を知ってもらい防災意識の向上につなげたい。
渡部友梨さん

渡部友梨さん(20)

多くの人に伝えたい
 専門家の話やVTRで、愛媛で過去に多くの災害があったことを知った。(直接体験していない)若い世代はどこか人ごととして受け止めがちだが、愛媛は決して災害が少ない場所ではないということを、親の世代も含めて多くの人に伝えていきたい。
印南友統さん

印南友統さん(44)

「自分事」の認識必要
 年代を問わず、さまざまな人が防災意識を高めていくことが大切だ。子どもたち一人一人が防災について自分事として捉える必要があり、学校と地域との連携も欠かせないと思う。やりがいを持って取り組めるよう、地域との関わりを一層深めていきたい。
高橋直樹さん

高橋直樹さん(50)

言い伝えに甘えない
 県内の災害について改めて知る良い機会になった。「台風が接近しても石鎚山が守ってくれる」という言い伝えがあるが、信ぴょう性に欠け防災意識をさらに高める必要性を感じた。シンポジウムで学んだことを地域などに持ち帰り、防災力向上につなげたい。
山口慧大さん

山口慧大さん(11)

地域の助け合い 大切
 大地震は約100年周期で起きていて、自分が生きている間にも発生する可能性が高いことが分かった。災害が起きたときには積極的に行動して、地域の人を助けなければならないと感じた。地域の助け合いの大切さを下級生に伝えていきたい。
浅野愛結さん

浅野愛結さん(11)

多様な意見を知った
 さまざまな専門家の話が聞けて、とても勉強になった。クロスロードの「避難所にペットを連れて行くか」という質問では、「他人の迷惑になるから、ペットは自宅に置いていく」という意見があることも知った。学校でもゲームをしてみたい。
  • *2021年5月30日開催、2021年6月12日愛媛新聞朝刊掲載

愛媛防災シンポジウムの模様は、NHK総合テレビで6月19日午前10時5分から、NHKラジオ第1で6月22日午後4時5分から、いずれも県内で放送する予定。6月19日午前9時からは、愛媛CATVイベントチャンネルで放送します。

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