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社説

生活保護費引き下げ 酷薄な弱者切り捨て許されない

2017年12月18日(月)(愛媛新聞)

 5年に1度の生活保護費見直しで、厚生労働省は食費や光熱費などに充てる「生活扶助」を最大約5%減額しようとしている。ひとり親世帯の母子加算も一部引き下げる方向という。

 前回2013年度改定でも、発足間もない第2次安倍政権がいの一番に生活保護費に手を付け、生活扶助が6.5%減額された。「自助」「適正化」の名の下、多くの税の無駄や大盤振る舞いの防衛費を放置したまま安易に「最後の安全網」を崩壊させることは許されない。最も困窮している人々をさらに追い込み、切り捨てる政権の姿勢に抗議し、強く撤回を求める。

 しかも厚労省は当初、約14%もの大幅切り下げを目指していた。審議会の反対で一転して翌日、5%に抑制したが、それほど簡単なら下げ幅の根拠や妥当性にかえって疑問が生じよう。

 国は引き下げの根拠を、低所得世帯との「均衡」に置く。だが、15年時点の日本の相対的貧困率は15.6%。2千万人近くが貧困に陥っている。対して生活保護受給者は、直近の今年9月時点で約216万人。この20年で2.7倍に増えたが、それでも生活保護が必要なのに受給していない人が約8割と指摘される。均衡ラインは、実態よりかなり低い可能性が高い。

 低所得世帯の生活が落ち込むと「逆転現象」を避けるために生活保護費を下げるという、果てしない「切り下げ合戦」を続ければ、社会の底は完全に抜けよう。働いても最低限度の水準に届かない労働環境をまず改善して、低所得世帯と生活保護世帯の暮らしの水準を、ともに引き上げることこそが急務だ。

 審議会も、現在の算定方法について「最低生活を保障する水準を満たすと言えるか、検証する必要がある」と異例の言及をした。厚労省は重く受け止め、「引き下げありき」の算定基準を早急に見直さねばなるまい。

 さらに看過できないのは、母子加算の引き下げ。子ども1人の場合に月約4千円減らす方針という。シングルマザー世帯の過半数が貧困状態にある中、政治の酷薄に憤りを禁じ得ない。

 政権は「子どもの貧困解消」「教育無償化」を言い立てるがまるで整合性がない。子の貧困は当然に「大人の貧困」。削減分は生活保護世帯の高校生の進学支援などに振り向ける考えというが、別に予算を確保すれば済むこと。「貧困の連鎖」の放置、拡大を強く危惧する。

 生活保護費の切り下げは、誰にとっても決して人ごとではない。市町村などの低所得世帯向け減免制度の多くは、適用基準額が生活保護基準額に連動している。今は無関係な人も、解雇や病などを機に、いつ貧困や孤立に陥るかも分からない。

 生活保護制度は、時の政権による「施し」などではなく、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を守るための権利である。政治に分断され、冷たい自己責任論に陥らぬよう関心を寄せ続けたい。

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