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社説

東京五輪まで半年 現実に即して開催を巡る議論を

2021年1月28日(木)(愛媛新聞)

 新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない中、東京五輪まで半年を切った。日本政府や大会組織委員会などは7月開催の立場を崩していないが、現実は厳しさを増している。

 国内外で懐疑的な見方が強まり、国内の世論調査では再延期や中止を求める回答が計8割を超えた。予定通りの開催への賛同は1割台しかいない。祝祭ムードにはほど遠く、このままでは開催意義を失う恐れがある。政府や関係機関は大会の安全確保を第一に、観客制限や中止などあらゆる選択肢をオープンな形で議論すべきだ。ここに至っても開催決意を語るだけでは選手や国民の不安は拭えない。

 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「代替案はない」と強調。菅義偉首相も開催への意欲を重ねて表明している。仮に中止や再延期となれば、努力してきた選手たちの目標を奪い、多額の開催経費を肩代わりする国民の喪失感も計り知れない。感染を拡大させないことが担保できるのなら当然開催すべきだ。だが、世界中から人々を迎えるにあたって現状はかなり心もとない。

 政府は、緊急事態宣言とビジネス往来停止に合わせ、1月中旬からスポーツ選手やスタッフらの入国特例措置を中断している。連日のように新規感染者が過去最多を更新し、感染力が強いとされるウイルスの変異種も確認された。来月7日に期限を迎える宣言が延期されれば、選手や関係者の入国ができない状況が続く。1年延期を決めた昨年3月よりも環境は厳しい。

 開催を目指すとすれば、従来の祭典の姿は変わらざるを得ない。政府は観客数について無観客、上限なし、50%の3案の検討に入った。それでも損失は甚大で無観客の場合、チケット収入はゼロとなり、経済効果もさほど見込めまい。

 主役であるアスリートがそろうのかどうか懸念も尽きない。自国での選考会は進まず、感染状況が深刻な国が参加を見送る事態もあり得る。そんな情勢下で強行しても公平性は保てず、真の世界一を決める大会と呼ぶには疑問符がつくだろう。

 異文化の人たちと触れ合うことも五輪の大切な意義だ。しかし、国際交流の場である選手村は感染防止のため、滞在期間が厳しく制限される予定。東日本大震災の被災地でも復興をアピールするはずだった選手や訪日客との交流も見通せない。復興五輪の理念も揺らぎつつある。

 ワクチン接種が普及すれば、事態が好転する期待はあるものの、供給が遅れ気味となっている。首相は「ワクチンを前提としなくても安全、安心な大会を開催できるよう準備を進める」と表明したが、具体策は見えない。まずは緊急事態宣言を脱した上で、感染拡大防止に資する開催基準を明示しなければならない。時間的猶予は少ない。現実を直視した議論を詰め、国民と参加国の理解を得るのは開催国の責務である。

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