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社説

水俣条約発効 世界の水銀汚染根絶へ役割重大

2017年8月22日(火)(愛媛新聞)

 世界の水銀汚染根絶へ、ここからが真のスタートだ。

 「水銀に関する水俣条約」が発効した。鉱山での水銀産出から輸出入、使用、廃棄まで全て国際的に規制し、環境汚染と健康被害の防止を目指す。史上最悪の公害病とされる水俣病を経験した日本は、負の歴史に学び地球規模の対策を主導しなければならない。

 毒性が強い水銀は、環境に排出されると分解されずに循環する。先進国では使用量が減っているが、途上国では金の精錬に触媒として使われ続けており、管理も野放し状態だという。対策は急を要する。来月始まる締約国会議で、確実な実施に向けた具体策を議論し、行動を加速させてもらいたい。

 条約は、水銀を使った体温計や電池などの製造、輸出入を2020年までに原則禁止。水銀の大気や水、土壌への排出を削減し、適切な保管と廃棄に取り組むよう定める。

 だが課題は残る。輸出入は原則禁止だが、一定の用途に応じ輸入国の同意があれば認められる。日本は国内法を整備し、水銀を含む電池やランプの製造禁止に前倒しで取り組んでいるものの、回収した水銀の多くを輸出し、その方針を変えない。流出によって相手国での被害につながらないよう、速やかに輸出をやめ、自国で責任を持って処理すべきだ。含有製品の回収と廃棄物処理の仕組みづくりに早急に着手するよう求めたい。

 アジアやアフリカ、南米では採掘した金を水銀を使って抽出する方法が広く普及している。安価な設備投資で、簡単に事業が始められるため、農家などが安定した現金収入を求め、家族で金採掘や精錬に手を出している。労働には子どもたちが携わっており、健康被害は看過できない。

 田畑や河川に水銀を含んだ廃液や汚泥が垂れ流され、大気中にも放出されている。空中の水銀は雨とともに川や海に流れ、魚介類にたまる。食を介して体がむしばまれる上、環境汚染が進めば、金が採れなくなった後に農業もできなくなる。

 背景にあるのは貧困だ。生計に関わるとして、条約は禁止に踏み込まず「できる限り削減」との曖昧な表現にとどめた。しかし、今このときも被害がまん延している現実を忘れてはならない。日本を含む先進国は連携して、住民が金を採掘しなくても生活できるように、きめ細かい支援を進める必要がある。専門家の育成、危険性の啓発・教育、検診や治療のプログラム作りが欠かせない。

 条約名には、二度と水俣病の苦しみを繰り返さないとの願いが込められた。その水俣病は、公式確認から61年たった今も終わっていない。悪化する病と闘う人。認定さえ受けられず救済を待つ人。差別を恐れて声も上げられない人―。政府は、世界の水銀禍根絶を進める中で、国内の被害者を全面救済する姿を示さなければならない。 

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