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社説

キッズウイーク 効果疑わしい的外れ政策再考を

2017年6月27日(火)(愛媛新聞)

 政府が、有給休暇の取得促進を目指して「奇策」を打ち出した。小中学校の夏休みの一部を地域ごとに春や秋に分散させる「キッズウイーク」を来年度から導入し、それに合わせて親に休暇取得を促すという。経済財政運営の指針「骨太方針」に明記、近く「休み方改革」に関する検討会議を設置する。

 長時間労働の問題はなかなか改善されず、過労死など深刻な事態が後を絶たない。休みの取れる体制の整備が急務なことは言うまでもない。だが、この政策の発想はいかにも安易で的外れだ。真の狙いは大型連休の分散によるレジャーや旅行の消費喚起にある。政府の思惑通りになるとは到底思えない上、独立性を保つべき教育に、経済のために国が介入して利用することも看過できない。必要なのはゆとりある労働環境づくりだ。拙速な導入をやめ、政策を見直すよう求めたい。

 何より、実効性があるとは考えられない。全国で15歳未満がいる世帯は2割に満たない。逆に子どものいる社員が多い職場では一斉に休めず、子がいない労働者にしわよせがいって不公平が生じる。かえって忙しくなるであろうサービス業従事者は考慮されず、全体の4割を占める非正規労働者は休暇の取得が難しい上に、休めば家計を直撃する。これでは、学校は休みになったものの結局親は休めず、子どもの居場所に困るという状況が起こりかねない。

 教育現場に混乱を引き起こす恐れも大きい。夏休みは暑さ対策であり、豪雪地帯は安全のために冬休みを長く取っている。長期休暇を活用して普段できない腰を据えた教育活動に挑戦する意義も大きい。地域ごとに休みを変えれば、部活の大会などで不都合も生じる。子どものためという根本の視点を置き去りにし、経済活動のだしにすることは許されない。

 政府が2月にスタートさせたプレミアムフライデーを思い起こしたい。月末の金曜日に仕事を早く切り上げさせ、外食や買い物に誘導しようとしたが、中小企業ではほとんど導入されず制度は全く浸透していない。

 7年前にも地域ごとに時期をずらして連休を設ける休暇分散化が提唱された。だが、観光庁が全国9地域の一部の幼稚園と小中学校で行った実証事業の調査で「良かった」と評価した保護者は、約3割だけだった。

 そもそも、国が強制的に休みを決めて個人の時間やお金の使い方に介入し、一斉行動を促すこと自体、成熟社会の在り方とは言えまい。現場の声に耳を傾けない「官製イベント」のトップダウンではなく、有給休暇の最低限の取得率を定める法整備や人手不足を解消する労働政策を推進すべきだ。お仕着せの休日では工場生産や流通にも影響が出る。休みは職場の実情に合わせて調整するのが基本。そうでなければ、政府が説く生産性向上からも逆行することを、肝に銘じなければならない。

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