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社説

高浜再稼働高裁決定 原発の新たな安全神話危惧する

2017年3月30日(木)(愛媛新聞)

 国の原子力政策に追随し、電力会社の主張をうのみにする司法の姿勢を、強く危惧する。

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた昨年3月の大津地裁の仮処分について、大阪高裁は関電の抗告を認めて取り消す決定をした。地裁の判断から一転、東京電力福島第1原発事故後に策定された原子力規制委員会の新規制基準の合理性を認め、その「合格」を根拠に高浜原発を安全と結論づけた。

 福島の事故は「発生やその後の基本的な事象は明らかになっている」とし、教訓を踏まえた新基準は「最新の科学的、技術的知見に基づいて策定」されているため、それをクリアした原発は安全、との論理だ。国や関電の言い分をそのまま受け入れた判断はあまりに安易で、住民の不安を置き去りにしており、失望と懸念を禁じ得ない。万が一への想像力に欠け、新たな安全神話を生むことを憂慮する。

 6年たっても福島の事故の検証は途上にある。ようやく原子炉直下の撮影がかなった段階にすぎず、汚染水対策のめども立っていない。大津地裁は、原因の究明が「道半ば」であり、その状況下で作られた新基準に疑問を呈していた。規制委自体も「リスクはゼロではない」と繰り返している。現実から目を背けた判断は納得できない。

 しかも、高裁は住民に、新基準や規制委審査に不備があれば実証するよう、立証責任を課した。事実上不可能な要求で提訴も困難になりかねず、看過できない。市民を守る最後のとりでである司法が役割を果たさず、責任転嫁するのは許されない。

 高浜原発の避難計画を巡っては、半径30キロ圏だけでも福井、京都、滋賀の3府県12市町に及び、住民18万人の広域避難体制は整っていない。避難に関しては規制基準の対象でなく、国は計画を自治体に任せている。こうした現状にもかかわらず、高裁は「改善の余地があるが、取り組みの姿勢は適切」とした。

 司法は住民の不安に向き合わなければならない。たとえ避難計画があっても、万が一の場合は「想定外」の連続で混乱を来す恐れが強い。それは福島の事故で身にしみたはずだ。取り組む姿勢だけを見て中身を問わないのは危機意識が低すぎよう。

 決定を受け、関電は再稼働を急ぐ。だが、高浜原発では1月にクレーン倒壊事故が起きるなど、安全管理への不安が拭えない。昨年、大津地裁が運転を差し止める以前にも冷却水漏れなどの不具合が相次いだ。事故時の対応拠点となる免震重要棟の整備を先送りするなど、安全対策にも疑問が残る。再稼働で電気料金の引き下げをアピールするが、経営優先で安全を軽視することはあってはならない。

 使用済み核燃料の処理など解決すべき難題は山積しており、今回の決定イコール国の原発政策への「お墨付き」とはならない。国には改めてエネルギー政策の見直しを求めたい。

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