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社説

「共謀罪」 五輪名目の危険法容認できない

2017年1月24日(火)(愛媛新聞)

 通常国会は衆院の代表質問が始まり、本格論戦に突入した。またも政府が提出しようとしている「共謀罪」法案は、大きな焦点の一つだ。

 犯罪を計画するだけで刑事処罰の対象となる「共謀罪」。政府は、罪名と構成要件を変えた「テロ等準備罪」創設を柱に、組織犯罪処罰法改正案の提出で調整している。東京五輪・パラリンピックのテロ対策を主張して成立を急ぐが、共謀罪はこれまで3度国会に提出され、人権侵害を生む恐れがあるとして、いずれも廃案になっている。

 法案は、犯罪の実行を罰することが原則の日本の刑法体系を根底から覆す。名を変えてもその危うい本質に変わりはない。安全な五輪やテロ防止といった聞こえのよい口実を目くらましに、問題の多い法の成立を押し通すことは断じて許されない。

 当初の政府案は犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象としていた。政府は国民の反発をかわすため、適用対象を「団体」から「組織的犯罪集団」に限定、拳銃の購入資金を用意するといった犯罪の「準備行為」を新たな要件として追加した。だが、何をもって「組織的犯罪集団」とし、どの時点で「準備行為」とみなすか、定義は実に曖昧。捜査機関の恣意的な判断が入り込む余地は大きく、冤罪の温床となる懸念が拭えない。

 政府は、当初676としていた対象犯罪に関しても、慎重姿勢の公明党に配慮して「テロの手段となり得る犯罪」を中心に200~300程度に絞る方向で検討中という。だが、数を減らしても、特定秘密保護法とセットで運用され、何が犯罪か分からないまま処罰されかねないことを強く危惧する。

 法が成立すれば厳しい監視社会が待つ。昨年対象が拡大された改正通信傍受法と合わせ、会話、電話、メールなどの個人の日常的なやりとりが捜査対象となり、思想の自由やプライバシー権など憲法が保障する基本的人権が侵害される恐れがある。にもかかわらず、テロの動向を見ると、組織でなく個人の犯行が目立っており、肝心な法の実効性すら疑わざるを得ない。

 安倍晋三首相は代表質問を受け、法整備を前提とした国際組織犯罪防止条約の締結が五輪に不可欠だと強調した。しかし、世界180以上の締結国全てが「共謀罪」を設けているわけではない。日本には「予備罪」など組織犯罪集団の重大犯罪を計画段階で取り締まることができる法律が既にある。この条約以外にも国連のテロ対策に関連した国際的な条約は13件あり、日本は国内法を整備するなどして既に全てに対応している。条約締結に新法が必要だという根拠も疑わしい。国連の要請だとして「外圧」を都合よく利用することは許されない。

 首相は法案について施政方針演説でひと言も触れなかった。批判を避ける計算が透ける。なし崩しを許さぬよう、国会には問題点の徹底追及を求める。

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