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社説

強制不妊救済法案 被害者の訴えを深く受け止めよ

2019年3月18日(月)(愛媛新聞)

 長い間人権を踏みにじられてきた被害者の願いがほとんど反映されていない。これでは「救済」からは遠い。

 旧優生保護法下で障害者らに強制的な不妊手術が繰り返された問題で、与野党の超党派議員連盟は被害者への「おわび」と一時金320万円の支給を柱とする救済法案を正式決定した。来月、共同で国会提出し、成立・施行を目指す。高齢化が進む被害者らの早期救済のために、一歩踏み出したことは評価できる。だが、一時金の額や救済範囲、認定手続きについては、被害者側と大きな溝がある。

 特に問題なのは、最大の焦点だった「おわび」で、旧法の違憲性に触れないばかりか、謝罪の主体を「われわれ」としたことだ。誤った法をつくり施策を進めたのは、国会と政府だ。訴訟への影響を避けるため、責任を曖昧にすることは決して認められない。健康な体に手術を強いられ、子どもを産む権利を奪われた被害者に寄り添い、真の救済となる解決策をあらためて検討すべきだ。

 旧法は「不良な子孫の出生防止」を目的に、知的障害や精神疾患などの障害や病気がある人に不妊手術を認めていた。1996年に母体保護法に改正し、人権上重大な問題がある規定を削除したが、不妊手術を受けた人は2万5千人に上り、このうち1万6500人は、本人の同意もなかったとされる。県内でも49~84年の間に、167人が同意なく手術されたことが判明している。

 昨年1月から被害者が全国各地の地裁で起こした国家賠償請求訴訟は、請求額が1人あたり1千万~3千万円台で、救済案との隔たりが大きく、被害者から「納得できない」との声が上がる。今春にも最初の判決が出る予定で、結果次第では訴訟による解決を選ぶ被害者が相次ぐ可能性もある。「訴訟合戦」となり、救済案が有名無実化しかねないことを危惧する。被害者の声を真摯(しんし)に受け止めることが欠かせない。

 一時金の支給対象を被害者本人とし、故人や遺族を対象外としたのも疑問が残る。家族をつくることを許されなかった点では、配偶者も同様に被害者といえる。より広い範囲で救済を進めてもらいたい。

 手術を受けた人のうち、個人が特定できる記録は3千人分にとどまる。記録のない人は厚生労働省に設置される認定審査会が本人の証言や医師の所見などに基づき判断するが、厚労省は強制不妊を推進した旧厚生省を引き継ぐ組織であり、被害者側は公平性に疑問を呈している。独立した第三者機関を設置し、審査すべきだ。

 旧法の背景には優生思想があった。誤った考え方と決別するためにも、旧法の人権侵害と正しく向き合う必要がある。責任の主体を明らかにし、徹底的に検証することが不可欠だ。それを、社会に残るさまざまな差別を解消する第一歩としたい。

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