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社説

労災認定基準 「過労死ライン」見直しも必要だ

2021年7月25日(日)(愛媛新聞)

 過労死を含む脳・心臓疾患の労災認定基準が今秋にも20年ぶりに見直される。「過労死ライン」に残業時間が届かない場合でも、不規則な勤務などを判断材料として重視すべきだ―。厚生労働省の専門家検討会がそうした報告書をまとめた。

 

 2019年度から残業時間の上限規制を柱とする働き方改革関連法が施行されたが、過労死ゼロには遠い。政府は働く人の命と健康を守るため、過重労働を許さない姿勢を明確に打ち出す必要がある。過労死ライン自体の見直しも含め、対策を強化しなければならない。

 

 厚労省によると、過重労働が原因の脳・心臓疾患での労災申請は20年度784件。認定は194件、うち過労死は67人だった。ただ、これらの数字は「氷山の一角」だろう。

 

 報告書は残業が発症前1カ月で100時間、または2~6カ月で平均月80時間とする過労死ラインは維持。一方、過労死ラインに近い残業時間がある上、不規則勤務など他の負荷要因があれば労災認定できるとした。近年の医学的知見を基に残業以外の要因として、拘束時間の長い勤務、休日がない連続勤務、終業と次の始業までの「勤務間インターバル」が11時間未満と短い勤務などを挙げた。

 

 労災認定では、現行基準でも労働時間以外の負荷要因も考慮するとしている。しかし、実際は労働時間が重視され、残業時間が過労死ライン未満で認定されたケースは少ない。今回、基準をより明確化することで認定の幅が広がれば、労働者保護へ一歩前進といえる。

 

 一方、過労死ラインを維持することは課題として残る。過労死遺族らは、残業が月65時間に及ぶと脳・心臓疾患のリスクが高まるとの国際機関の調査を踏まえ、過労死ラインの引き下げを求めている。命が脅かされる長時間労働は一刻も早く解消しなければならない。日本が世界の流れから取り残されないためにも、国際的な水準に合わせて引き下げるべきだ。

 

 近年、在宅勤務や副業、兼業など働き方の多様化が進む。新型コロナウイルス禍でテレワークする人が増えているが、半数が出社時より労働時間が増えたとの連合の調査もある。企業にとって従業員の労働時間の把握が難しくなっており、労災につながる過重労働が広がることも懸念される。

 

 労災は認定基準を緩和することも必要だが、何より予防が大事なのは言うまでもない。企業には個々の従業員の状況に目配りし、適切に労務管理することが一層求められる。

 

 少子高齢化による働き手不足や働き方改革を背景に、政府は企業が従業員の健康に気配りする「健康経営」を推し進めている。市場で企業価値を判断する際の材料として定着させる狙いもあるという。従業員が健康に働くことで生産性も高まり、収益向上につながる。企業はそんな経営を目指したい。

 

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