愛媛新聞ONLINE

2023
1211日()

【縮む地域で】担い手減少、伝統の練り物再開に苦心 コロナ後の秋祭り

トップ画像

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類へ移行して迎えた秋祭りシーズン。15日は愛媛県内のあちこちで待望の祭りばやしが響き渡った。人口減少が進む地域では、2020年の感染拡大以来中止が続いていた伝統行事の再開は容易ではない。人員確保が難しく練り物を復活させる見通しが立たなかったり、地元を離れた元住民と協力したりと懸命に運営している2地区を訪ねた。(今西晋)

■静かな神事

 

練り物の再開が難しく、神事が中心となった磐根神社秋祭り=10月15日午前、西条市丹原町鞍瀬

 険しい山に囲まれ、鞍瀬川の渓流が美しい西条市丹原町鞍瀬地区。磐根神社の社殿から、住民ら6人が小型のみこしを担ぎ出した。19年までは毎年地元内外から観衆が集まる秋祭りだったが、今年は数人に見守られながら境内を回り、静かに神事を終えた。

 祭礼の名物は、江戸時代末期に開催された記録が残る奴(やっこ)行列だった。4人一組の奴が長さ4メートル、重さ7キロの毛槍(けやり)を抱えて練り歩き、くるりと向き合うと息を合わせて空中で投げ渡す。ベテランの役者が高低差がある石段でもうまく投げ合い、観衆を沸かせた。

 

重い毛槍を空中で投げ渡す妙技を見せる奴行列が名物だった磐根神社秋祭り(2011年撮影)

■妙技の伝統

 行列にはお箱やなぎなたの担ぎ手もおり、獅子舞も花を添えていた。しかし新型コロナ禍以後、毛槍やみこしなど祭り道具は倉庫に納まったままだ。長年祭りを支えてきた渡辺昭美さん(83)は「若いころは100人ほどで行列を組んどった。奴は年齢制限もあって、参加できん住民すらおったのに」とさみしがる。

 コロナ対策緩和後、地元の集落は再開を模索しているが、めどは立っていない。行列には最低でも30人程度必要だが、今年も人手を確保できなかった。佐伯明区長(73)によると、10年前に60戸以上あった鞍瀬地区は、現在30戸程度。死去したり、体調を崩し地区外に住む家族の元に転居したりする高齢の住民が相次いでいるという。

 

 

    残り:1039文字/全文:1777文字

    有料記事のためデジタルプラン購入が必要です。