愛媛新聞ONLINE

2023
129日()

自転車ステッカーなぜあの貼り方? 「松山東高方式」の謎を大調査

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「あの自転車に乗っていたら、知らない人にめちゃくちゃ話し掛けられるんですけど!」。後輩のこの一言が、今回の記事の発端である。駅から会社まで通うための自転車を探していた後輩に、自分の娘がかつて使っていた自転車を貸したのだが…。

「へえ、なんて話し掛けられるん?」「『松山東なん? 賢いんやねえ』とか『うちの孫も東高で』とか。いやいやいや、私、西条なんで。借りてるだけなんで」。ああ、確かに。娘の自転車には、通っていた「松山東高」のステッカーが貼ったままだ。

「あれって目立ちますよね。サイズも大きいし、貼り方も特徴ありますし」。そうそう。前の学年のシールの番号だけ見えるようにして、その上に階段状に縦に重ねるのが、松山東高生独特の貼り方。実はあの貼り方は、別に学校のルールではないらしい。でも、みんなそうしてるって。いつからの伝統なんだろう。「ちょっと調べてみよか」

…その場のノリのような話が、思いがけない大調査に。自転車ステッカー「松山東高方式」の発祥に迫る大長編、さあ、スタートです。(坂本敦志)

🚲「東高方式」のルーツは?

「松山東高」のステッカーを貼った自転車。娘が使っていたものです

まずは松山市の城山公園で自転車の松山東高生に話を聞いてみた。3年生男子は東高方式。「由来は知らないですが、過半数はこの貼り方です。前の学年が分かるのと、先輩もしていたのでいいなあと思って」。別の3年生男子は「先生には自由にしてもいいって言われたんですけど、僕は自分の歴史も分かるのでこっちがいいかなあと思って。普通に(3年分の)3枚重ねている子もいます。そういえば他の学校ではあまり見ないですよね」。この日、10台以上の東高生の自転車を観察したが、東高方式以外の貼り方をしているのは1台だけという浸透ぶりだった。

後日、いろいろな駐輪場を巡って各校の自転車を観察したが、同じ松山市内の松山南、松山北、松山商、松山工は1枚で貼っていた。愛光は階段状の重ね貼りをしている自転車を複数見かけたが、貼り方はまちまちで、浸透率も松山東ほどではない印象。それにしても松山東、愛光という愛媛を代表する進学校が階段状の貼り方というのはなぜか面白い。

同僚の東高卒業生など、周囲の情報を総合すると、平成に入るか、入らないかの頃、プレートからステッカーに替わり、当初は下の学年が見えないように重ねる貼り方が主流だったようだ。それが変わった時期。そしてそのきっかけとは―。

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