
新海誠監督が語る 「すずめの戸締まり」に愛媛が出てくる理由
新海誠監督のアニメ映画「すずめの戸締まり」が公開して約1カ月。愛媛県内が舞台のモデルということで、「どうして愛媛なんだろう?」と疑問に思っている県民も多いのでは。その謎を解明すべく、映画の公開後初めて愛媛を訪れた新海監督を直撃。愛媛を描いた理由や、災害に対する考え、そして愛媛への憧れも!?。約30分にわたったインタビューから、ヒットを続ける映画の裏側へと扉を開け、新海監督が「最も伝えたいこと」に触れる旅に出てみよう。
愛媛を描いたのは・・・
愛媛も舞台のモデルの一つになっている「すずめの戸締まり」©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
愛媛が映画の舞台のモデルの一つになっている。愛媛を描いての印象は 愛媛はとても楽しかったですね。僕以外のたくさんのスタッフが絵をいっぱい描いてくれてるので、現実的に1コマ、1コマの細かい絵を描いたのはスタッフたち。彼らもきっと楽しかったと思います。去年ロケハンに来て、色々愛媛を歩いて回って。ちょうどこの場所をすずめが経由していくと、映画前半の楽しいムードをより強くできるかなと思って、愛媛を通過することにしたんです。
やっぱり町を眺めていて思うのは、自然と人間がすごく綺麗なバランスで、気持ちのいいバランスで調和しているエリアだなと。険しい自然だけではなく、人々の雑踏だけではなく、それがこう優しく混じり合ってるような風景があるなという風に思いますね。山の近さ、海の近さ、食べ物のおいしさみたいなものまで含めて、本当に豊かな土地なんだなと。
愛媛が早い段階で登場したが、映画内での愛媛パートの位置付けや狙いは 愛媛では、海部千果という少女が出てくるんですね。家族経営の民宿で働いているということにしようと。「お遍路のお客さんを相手にしている民宿にしよう」みたいなことを考えていたんです。その愛媛で、すずめが同い年の少女と出会うということにしたのは、すずめが故郷から出ていって、だんだん社会のことを少しずつ、断片を知っていくっていうような話にしたかったんです。
なので、同じ年で学校に行ってるだけではなくて、接客をするような仕事をしている少女と触れ合う。次の神戸だと、スナックに出合ったりとか、コンビニとかいろんな自分の知らなかった大きな世界を知っていくという話にしたかった。愛媛の最初の役割はやっぱり、すずめが自分と同い年の少女がちゃんと社会の中で何か仕事を持って、働いているということに触れるというような役割。そこを描きたかったです。そこが何よりの愛媛パートの1つの目的だったんです。
他にも、愛媛でも戸締まりするんですけれど、廃校が後ろ戸になってるシーンがあって。ちょうど、この映画を制作している時に、西日本の豪雨災害があって土砂崩れがありましたよね。その時の連想がありはしました。九州が過疎になって人が来なくなってしまった温泉街、神戸が遊園地にしたので、愛媛はまた少し違うトーンの廃虚にしたいと。そこは人々の今の実感とどこか繋がるような場所にしたいと思ったので。被災地そのものを描いてるわけではないんですけれども、西日本豪雨災害からの連想で愛媛では土砂に埋もれた学校というものを描きました。
わりと最近の出来事なのに、多分地域外の人にとっては、 「あれはいつのことだったろう」という風に不思議に曖昧になっていってしまうものではあります。けれど、地元の方にとっては、まだ鮮明ですよね。
愛媛は過去の作品でも・・・
実は、過去の作品でも愛媛との関連はあったんです。そして、「すずめの戸締まり」に新海監督が込めた思いとは
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