主人公の旅 駅や港登場 「聖地巡礼」市も発信
新海誠監督最新作「すずめの戸締まり」 八幡浜も物語の舞台に
2022年11月13日(日)(愛媛新聞)
11日に全国公開された新海誠監督のアニメ映画作品「すずめの戸締まり」で、一部に八幡浜市の旧八幡浜港フェリーターミナルやJR八幡浜駅の風景が登場し、市民を喜ばせている。主人公をまねて写真を撮る市民も現れ「美しい映像で八幡浜が認知され、訪れる人が増える機会になってほしい」と期待している。
新海監督は「君の名は。」「天気の子」など多数のヒット作で知られる。新作「すずめ―」は九州の港町に住む女子高生・鈴芽の物語。小説版によると、不思議な力を持つ猫を追ってフェリーで八幡浜港に渡る。10月に公開された予告編映像には、旧フェリーターミナルの建物や千丈川沿いの風景が映っていた。
早速反応したのは市政策推進課シティプロモーション係の兵頭亮係長(39)。10月上旬、地元の女子高校生に映像と同じポーズをとってもらい、建物前で写真を撮影し市公式インスタグラムにアップした。
1カ月余りたった11日現在で普段の倍以上の580「いいね」がつき、県外からもコメントが寄せられているという。兵頭さんは「影響力の大きさに驚いている。多くの人に見てもらえてうれしい」と喜び「撮影するなら午前中がおすすめ」とアドバイスした。
市ボランティア協議会の猪石壮会長(60)は、主人公と一緒に旅する脚が1本欠けた椅子を製作した。日曜大工の技術で縦横45センチ、高さ60センチの椅子を作り黄色に塗装。「きれいな映像で古里を描いてもらえるのはうれしい。明るい話題になればいい」と期待する。
ただ映像に映る建物は、2022年4月の新ターミナル使用開始に伴い7月から解体工事中。来年3月末までに完了する予定で、現在建物の3割程度しか残っていない。市水産港湾課は「耐震性の問題もあり、取り壊しは決まっていた」としつつ「この時期の取り壊しはもったいない気がする。事前に情報があれば保存方法を検討できたかもしれない」と残念がる。
市は今後、映画の影響力を生かして市のPRを狙う。解体前の建物の写真を新ターミナルに展示し認知向上に努めるほか、主人公が訪れた地を交流サイト(SNS)に投稿するなどして観光客の動線づくりに取り組む予定という。
映画の舞台を訪れる「聖地巡礼」では、多数のファンが殺到することによる混乱も懸念される。映画の製作委員会は8日、公式ツイッターで「近隣住人の方々へのご配慮、及び節度ある行動、マナーに十分心掛けながらお過ごし頂きます様、お願い申し上げます」とのメッセージを掲載した。市は「映像をまねて公道に椅子を置いたり、座ったりといった近隣の迷惑や通行の妨げになることは遠慮してほしい」としている。(河野梨奈、今西晋)
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