愛媛新聞ONLINE

2023
128日()

愛媛県循環型社会推進課

海ごみゼロにむけて私たちにできること

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2022年9月5日(月)(愛媛新聞ONLINE)

つくる責任つかう責任海の豊かさを守ろう

 海ごみには、私たちの普段の生活で出たペットボトルやお菓子の袋などのプラスチックやビン、缶などが多く含まれており、その7~8割は陸からのごみとも言われている。ウミガメやクジラの体の中からは、ビニール袋やペットボトルなどたくさんのプラスチックごみが見つかっているほか、小さくなったプラスチックごみはマイクロプラスチックとして生き物の体に蓄積し、影響を与えている。

 県では、2020年度の海洋プラスチックごみ調査で南予の漂着ごみの量が多かったことを受け、2021年度、新たに南予の立入困難海岸における漂着ごみ現状把握調査を実施した。調査は、船舶から目視等により漂着ごみの量及び種類を評価、記録した結果、南予全域で563か所、軽トラック約3万2千台相当の漂着ごみが確認された。

調査で確認された漂着ごみの一部

調査で確認された漂着ごみの一部

調査で確認された漂着ごみの一部

調査で確認された漂着ごみの一部

 

プラごみ削減 意識啓発

 海洋プラスチックごみによる生態系への影響が問題になる中、県は2021年に「海岸漂着物対策活動推進員・団体制度」を全国で初めて創設した。県と連携して海岸や河川の清掃に取り組み、住民への助言や情報提供することで、プラスチックごみ削減に向けた県民意識の啓発を図る狙い。

 令和4年9月1日現在、ボランティアで6人・20団体を委嘱・指定している。東、中、南予の個人・団体を紹介する。

 

「SEA」を合言葉に 

今治・ビーチクリーンしまなみ

海岸の砂の中からマイクロプラスチックをより分ける上野鮎美代表

海岸の砂の中からマイクロプラスチックをより分ける上野鮎美代表

海岸の砂の中からマイクロプラスチックをより分ける上野鮎美代表

海岸の砂の中からマイクロプラスチックをより分ける上野鮎美代表

 毎月第2日曜が定例活動日の「ビーチクリーンしまなみ」。今治市湊町2丁目付近の海岸で7月、約10人が清掃活動を始めた。同日は図らずも市民大清掃と重なり、大きなごみは取り除かれた後だったが、「あると思わないと見えないごみがあるんです」とは、事務局を務める宇佐美浩子さん(52)。きれいに見えた海岸で突堤の岩と岩の間に手を差し伸ばすと、ペットボトルやライターなどが次々出てきた。

 メンバーらが着るおそろいのポロシャツには、See(現場を見て)、Enjoy(楽しんで)、Act(行動に移す)の頭文字をとって「SEA」(海)。グループの合い言葉だ。

 コミュニティーFMラヂオバリバリを母体に2015年に正式に立ち上がった同団体。「海をきれいに」と呼び掛けるだけでなく、自ら汗をかく行動を心掛けてきた。ただ、周囲を巻き込むことも大事で、そのためには実際に現場を見てもらおうと考えた。「そうすれば問題の在りかが見え始めるかもしれない」と代表の上野鮎美さん(33)。一方で、小難しく生真面目にやるよりはと、拾ったごみの重量を競う「スポーツごみ拾い」やどれだけヘンテコなごみを見つけられるかという「ごみクエスト」など楽しみながら活動を続ける。

大人と一緒にごみを拾い集める子どもの参加者

大人と一緒にごみを拾い集める子どもの参加者

大人と一緒にごみを拾い集める子どもの参加者

大人と一緒にごみを拾い集める子どもの参加者

 父親と来ていた〝常連〟の寺岡由唯子さん(3)は「なんやろ、いっぱい拾ったよ」。集めたのは、カキ養殖用パイプが摩滅して小さくなった赤や緑のマイクロプラスチック。次回のイベントでつくるアート作品の材料にするという。

 大人より子どもの方が、学校で教わりSDGs(持続的開発の目標)などに詳しい昨今。上野さんは「学んだことを海に来て見て、実際に経験してほしい」と話す。「すると、買い物の仕方やごみの捨て方、日々の生活の仕方そのものが、変わってくるかもしれないから」

 

未来の変化 生み出す 

松山・中村優理子さん

 松山市の環境モデル都市推進課の職員でありながら、個人として県海岸漂着物対策活動推進員をしている中村優理子さん(42)。環境学習支援をする県環境マイスターでもあり、大学在学中から松山市エコリーダーとなり、講師も務めてきた。

 複数の活動を並行し知り合いが増えることで相乗効果が生まれているという。長年、活動を続けてきて感じるおもしろみは「人の生活に合わせて社会のルールが変わり、ルールからさらに人の行動が変わっていく」点だという。

子どもたちに環境かるたを読み上げる中村優理子さん

子どもたちに環境かるたを読み上げる中村優理子さん

子どもたちに環境かるたを読み上げる中村優理子さん

子どもたちに環境かるたを読み上げる中村優理子さん

 例えばプラスチック製品が増加する中、1997年に本格施行された容器包装リサイクル法。従来の市町村だけでなく、事業者や消費者にも廃棄物減量への一定の役割を担わせることになり、ごみの分別方法、特にプラスチックの取り扱いが変わった。「当時、市の環境部清掃課にいたが、住民の方から『新しい分別法が分かりにくい』といった電話をたくさん受けた」と苦笑い。今も変化していく仕組みを学び、市民にフィードバックして、「少しずつでも自分たちで環境負荷が軽減できることに取り組めたらいいなと思っている」と話す。

 

みんな浜っ子 大清掃 

大洲・沖浦自治会

さまざまな漂着ごみを運び出す湊隼人会長

さまざまな漂着ごみを運び出す湊隼人会長

さまざまな漂着ごみを運び出す湊隼人会長

さまざまな漂着ごみを運び出す湊隼人会長

 海開き前の7月上旬、大洲市長浜町の沖浦自治会が地元の沖浦海岸をきれいにしようと今年も地域挙げての一斉大清掃を展開した。一見、美しく見える海岸も、海浜植物をちょっとかき分けると、ペットボトルや広島県から流れ着いたと思われるカキ養殖用パイプが次から次へと出てくる。

 「今年は海があんまりしけなんだから、少ない方よ。多いときは重機がいるほど岸がごみでいっぱい。行政から言われてやるんでは間に合わん。ここはみんな浜っ子。海を大事にしよる。回覧板一つで、ようけ集まってきてくれる」と、会長の湊隼人さん(74)。参加した約80人が黙々と、あるいはちょっと冗談を言い合いながら漂着ごみを拾い集め、海につながる水路の草木を伐採していった。大洲市には処分費用が無償になるボランティア用のごみ袋があり、開始1時間で45ℓのごみ袋約110袋が積み上がった。

 自治会では年間でさらに100袋超のごみ袋を使用するという。年1度の一斉清掃以外に、地元の人が散歩がてら毎日ちょっとずつ海岸でごみ拾いをしているからだ。ちりも積もればだ。

慣れた手つきでごみを拾い集める今岡ハルコさん

慣れた手つきでごみを拾い集める今岡ハルコさん

慣れた手つきでごみを拾い集める今岡ハルコさん

慣れた手つきでごみを拾い集める今岡ハルコさん

 そんなボランティアの一人、今岡ハルコさん(81)はいつも手ぬぐいを頭に巻いてもんぺ姿、地元で知らない人はいない。どうして、毎日ごみ拾いを続けるのか? 一斉大清掃後、堤防に腰掛け沖合を見つめながら今岡さんは「こない座って見よる時に、きれいな方がよかろ。海はええぜ。それに他にすることがないのよ」と笑う。

 ただ、沖浦地区にはごみを打ち上げる波とは別に、過疎と高齢化という波も打ち寄せる。会長の湊さんは「今後は、地元の学校との連携などで新しい担い手を増やし、確保していかなければ、この活動自体が持続可能ではなくなってしまう」と、少し心配そうに語った。

 

海岸 回収の最後の機会 

愛媛大 日向博文教授

海洋ごみ問題における海岸の重要さを強調する日向博文教授

海洋ごみ問題における海岸の重要さを強調する日向博文教授

海洋ごみ問題における海岸の重要さを強調する日向博文教授

海洋ごみ問題における海岸の重要さを強調する日向博文教授

 マイクロプラスチック(MP)問題に詳しい愛媛大大学院理工学研究科の日向博文教授(沿岸海洋学)に県内の海洋ごみ対策や活動推進員について聞いた。

―どんな対策が有効か。

 複雑に入り組んで全長約1700kmと全国5番目に長い海岸線がポイントだ。ごみは自然界に放出されると、基本的には分散・拡散していくが、海岸だけは例外で集積する。回収のコストパフォーマンスは外洋にいくほど悪くなる。海岸はごみを拾う最後のチャンスの場と言っていい。

 平均的な海の表面に拡散しているMPを回収するのに1km四方を船が走るより、海岸でペットボトルひとつ拾えば、同量のMPを集めたことになる。このようにビーチクリーン活動を数値化・可視化し、意味や意義を理解してもらえれば、長期戦になる環境活動も継続してもらいやすくなるのではないか。

―長期戦になるとは?

 例えば今、ごみの発生がゼロになったとして、海はきれいになるか。残念ながら、ほとんど変わらない。数十年はごみやMPが海岸に押し寄せ続ける。それくらい蓄積した負の遺産による「レガシー汚染」が海に広がっている。自然はすぐには応答してくれない。いったん汚くなると本当に大変だ。でもだからこそ、人間の活動で変えていかなければならないし、変えられる。

―具体的にどうすればいいか?

 ごみの発生を減らすことはもちろんだが、例えば「ごみ出し」の境界線を変えてみてはどうか。今は皆、家庭ごみを袋に入れて地域の収集場に出せば終わりだと思っている。ところが、その袋が収集場から川に転げ落ちたり、動物が散らかしたりしている。先進国の風景ではない。焼却場に届くまでを「ごみ出し」と意識を更新してほしい。

 ただ、ごみ問題は感情問題になりがち。だからこそ、推進活動に取り組む、身近で信頼を得ている個人や団体の呼び掛けは有効だと思う。「ああ、あの人が言うなら」と。ぜひ、活動推進員・団体が増えていってほしい。

 

「愛媛県海岸漂着物対策活動推進員等制度」について、ホームページはこちら

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