愛媛新聞ONLINE

2022
88日()

新聞購読ボタン新聞購読
新規登録ボタン新規登録
メニューボタンメニュー

悲劇の先に(下)願い 命を守る活動広がる 継続へ具体的仕組みを

2022年7月18日(月)(愛媛新聞)

西条市と愛媛大が連携して開いている講座。水難事故に限らず、さまざまな観点で子どもの命を守る方法を学ぶ=2021年7月、西条市

西条市と愛媛大が連携して開いている講座。水難事故に限らず、さまざまな観点で子どもの命を守る方法を学ぶ=2021年7月、西条市

 子どもの命を守りたい―。その願いは、行政も一緒だ。2012年7月20日にお泊まり保育中の川遊びで命を失った吉川慎之介ちゃん=当時(5)=の事故を契機に、西条市も水難事故の防止に取り組んできた。当事者らが手探りで始めた活動の輪は、思いとともに少しずつ広がっている。

 

 市は18年、無料でライフジャケットを借りられる「レンタルステーション」を市内2カ所の消防署に設置した。ライフジャケットは顔が水面より上に浮くため、溺れても命は助かる場合が多い。死亡事故を防ぐ最も効果的で手軽な対策となる。慎之介ちゃんの母・吉川優子さん(50)が設立した「吉川慎之介記念基金」から100着を寄贈されたことがきっかけで、当時としては全国初の取り組みだった。

 

 19年には、子どもの事故のリスクや対応などを学ぶ「子ども安全管理士講座」と「子ども安全セミナー」を愛媛大と連携して開講し、誰でも事故防止の考え方を学べる機会をつくった。これまでの受講者が連携し、今後の活動につなげようとする新たな試みも、有志によって予定されている。

 

 「行動し続けることが風化を防ぐことにつながる。所属する部署は変わっても、その場所でやれることはやってきた」。越智三義副市長は事故当時、現場に隣接する市有施設を所管する産業経済部の部長だった。別部署に異動後も遺族や当時の保護者らと顔を合わせ、今も意見や要望を直接聞いている。10年間、事故や当事者と向き合う過程で、ライフジャケットのレンタルや講座開設という施策に結びついた。

 

 水難事故をなくす取り組みは、隣県でも進んでいる。香川県教育委員会は22年度、スポーツ庁の補助事業を活用し、ライフジャケットの団体向けレンタルなどの事業を始めた。保健体育課によると、予算170万円を計上し、寄付分も合わせて計200着を用意。要望があった学校や子ども会などに貸し出したり、海上保安庁などと協力して着用講座を開いている。

 

 事業のあり方を検証する委員会を立ち上げ、講座での効果的な指導方法を確立する方針だ。担当者によると、今後は市町や地域も同じ取り組みができるような仕組みづくりを進めるという。

 

 加茂川の事故から10年。水難事故から子どもを守ろうという機運は、少しずつだが高まっている。一方で、西条市で活動に携わる関係者は一様に「今は属人的なものが多い」と課題も指摘する。個人の活動は最初の原動力にはなっても、持続力や規模には限界があるためだ。

 

 共通の願いは、これまでの活動を基礎として、永続的な取り組みへとつなげること。優子さんは力を込める。「やっと子どもに向き合おうという流れができてきた。これから具体的な仕組みをどうつくるか。私たちは今、そのスタートラインに立ったところです」(高橋圭太)

 

    アプリ取得

    愛媛の情報なら、愛媛新聞のアプリ。

    欲しい情報をいつでもあなたにお届け!プッシュ通知機能も充実。

    • iosアプリ
    • androidアプリ