
愛媛の不思議スポット 街中、山中、道路沿い・・・ふと気になるあれは何!?
じっと見つめてくる寺の本堂、カッパ姿のこま犬、雑木林から顔を出す人面岩…。どうしてこんな所にこんなものが? 愛媛にはおのずと疑問が湧いてくる「不思議スポット」が各地にある。見た目のインパクトやスケールの大きさに、ちょっぴり及び腰になりながらも、作者や詳しい人に思いやいわれを尋ねた。頭の中の「?」が消えるにつれ、親しみや感動、尊敬の念が生まれてきた。いくつかのスポットを案内する。(森満里子)
■岩に大書した望郷の詩
久万高原町柳井川の岩壁に現れた「望郷の詩」。現在は「永久」「仁」の文字が残る
「荒れて行く 故郷の姿 哀しくも 永久なる 母か 仁淀川」―。久万高原町柳井川の国道33号沿いにある面河第三ダム湖畔。岩壁に白いペンキで記されたのは望郷の詩だ。
作者は久万高原町久万でうどん店「心」を営む山中留吉さん(82)=久万高原町柳井川。35歳だった1974年夏に自作の詩を高さ約40メートルの絶壁に幅100メートル以上にわたってしたためた。岩の所有者の了解を得ると、手製の縄ばしごを崖につるして足場を作り、たった1人で、10日かけて描いたという・・・
■雑木林に人面岩
大洲市豊茂の雑木林からのぞく人面岩
大洲市豊茂の県道沿いの雑木林には、男性の顔が彫られた大きな岩がある。高さ5メートル、幅3メートル。明らかに人が彫った形跡があったというが長年、その作者や制作意図は分からなかった。
人面岩の謎が明らかになったのは1999年。近くの農業、米岡幸一さん(84)が1年がかりで調べた。
米岡さんによると、作者は地元の石工、力石力造で、1848(嘉永元)年ごろに制作。力造は、力強さと器用さを兼ね備え、見事な石垣を造ると評判だったという。県道がなかった当時、山越えする住民のために主要道が整備されることになり、参加した力造は道の完成記念を祝って大岩を彫ったそうだ・・・
■本堂に目玉がギョロリ
強い視線を放つ萩生寺(新居浜市萩生)の仏眼。目の長さは約2メートルもある
本堂から強い視線を感じるという寺がある。新居浜市萩生の住宅街にある萩生寺は、本堂を見上げると、長さ約2メートルもある目玉がギョロリ。萩生寺の斎藤友厳住職(78)が自ら筆を執った。この目は仏眼と呼び、物事の真実を肉眼ではなく、心の目で見抜く力を養ってほしいとの願いを込めた・・・
■こま犬が、カッパに?
西予市明浜町高山の若宮神社にあるカッパのこま犬。伝説にちなみタイを抱えている
神社のこま犬は犬だけとは限らない。全国でも珍しいカッパ姿のこま犬(西予市指定有形文化財)がいると注目を集めるのは、西予市明浜町高山の若宮神社だ。2体のうち、タイを大事そうに抱えた1体。城主の恩情を忘れなかった「カッパの恩返し伝説」にちなむ。
この神社は、戦国時代に地域を治めた高山城主、宇都宮正綱をまつっている。正綱にいたずらして捕まったカッパ。命乞いして正綱に逃がしてもらうと、お礼のタイを毎日届けるようになった。正綱が討ち死にした時は「ヒュウヒュウ」と鳴いて悲しんだという・・・