食中毒に気を配るのは妻だけの役割?(京都新聞)
2022年5月15日(日)(友好社)

厚労省が作成した食中毒予防の動画。買い物から後片付けまで主役は妻になっている

厚労省が作成した食中毒予防の動画。買い物から後片付けまで主役は妻になっている
食中毒に気を配るのは妻だけの役割なの? 厚生労働省が作成した家庭での食中毒予防に関する動画に対して、中学で家庭科を教える女性から疑問の声が京都新聞社に寄せられた。動画は買い物から調理、後片付けまでの全てを妻一人が担っていた。
意見を届けてくれたのは私立中の非常勤講師、岩崎正美さん(57)=京都市西京区。動画はアニメーションで、厚労省のホームページに掲載されている。岩崎さんは教材に使おうと内容を確認したところ、驚いたという。
動画は、「新婚の今日子さん」が夫にハンバーグとサラダを作るという設定。食中毒を防ぐポイントを挙げながら、今日子さんがスーパーで買い物をし、料理を作り、残った食品を保存するまでを描く。夫は食事シーンに登場するのみ。途中「今日子さん、愛する旦那様のために楽しそう」とナレーションが入り、最後は「家族を食中毒から守りましょう」と締めくくられる。
岩崎さんは「いまだに女性の家事分担が多いのが現実ですが、共働き家庭がとても増えている中で国がそれを当たり前のこととして広報していいのでしょうか」と指摘。「『食中毒から守りましょう』という呼びかけも、守るのは女性で、男性は『よろしく』と言う側になっている。本来は男性も食べるものに責任を持たないといけない。自分を守るという視点が欲しい」と話す。
中学高校では、30年ほど前から家庭科の男女共修が行われており、調理実習に男子生徒も参加している。岩崎さんは授業で家庭生活と仕事をバランスよく充実させるワークライフバランスについても取り上げている。だからこそ「余計に動画に違和感を抱いた」と言う。
厚労省によると動画は2010年に作成した。担当者は「認識が不足していた。早々に見直したい」としている。(京都新聞)