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元祖・高卒新人開幕マスクは愛媛県人!? ロッテ・松川から67年前の偉業

 

阪神の1軍バッテリーコーチを務めていた頃の谷本

阪神の1軍バッテリーコーチを務めていた頃の谷本

 

阪神の1軍バッテリーコーチを務めていた頃の谷本

阪神の1軍バッテリーコーチを務めていた頃の谷本

 

 3月に開幕したプロ野球でロッテの松川虎生が「高卒新人開幕スタメン捕手」でデビューした。長いプロ野球の歴史でたったの3人目という、まれな記録だ。球界の至宝・佐々木朗希とバッテリーを組むなどし活躍が続く様子からも、逸材ぶりがうかがえる。ところでこの偉業、第1号が愛媛県人だったことはあまり知られていない。60年以上前、大映(現ロッテ)に入団した愛媛・八幡浜高出身の捕手、故・谷本稔(1937~2010年)だ。

■18歳の「グラウンド上の監督」

 4月10日、佐々木が28年ぶりとなる完全試合を達成し、日本中を驚かせた。20歳の快投を支えた「女房役」は、もっと若い18歳の松川だった。剛速球や鋭い変化球を難なく受け止めリードする姿に多くのプロ野球OBが「新人、しかも高卒が…信じられない」と舌を巻いた。捕手は「扇の要」「グラウンド上の監督」などと言われ経験が求められるとされてきた。

 そんなポジションを高校を卒業したばかりの新人で初めて任されたのが、大映の谷本だった。1955年、東映(現日本ハム)との開幕戦に7番捕手で出場し勝利を収めている。この年、141試合のうち74試合で先発マスクを任され活躍した。

 

 

 谷本をよく知る人物が地元・愛媛県八幡浜市にいる。現役引退後に知り合い、40年以上の付き合いがあった菊池利和(73)の証言を基に、谷本の野球人生を追った。

 

■高卒プロ入りの選択

 八幡浜市で生まれ育った谷本。家庭が裕福でなく高校進学にはハードルがあったが、野球では目立つ存在で「この子はハチコー(八幡浜高)に行かんといかん」と地域が進学を支えた。

 念願の野球部入りをするも1年時に板前だった父を亡くした。谷本は母が複数の仕事をして必死に家計を支える姿に「母を楽にしたい」と大学進学をあきらめ、プロ入りを決意。夜間、映画館の駐輪場で自転車を並べる仕事をする母を練習終わりに手伝うこともあった。

 試合では1年秋から捕手として出続けるも、2年では春、夏、秋すべての公式戦で愛媛県大会ベスト4にとどまり、3年夏も準々決勝で敗れ甲子園出場はかなわなかった。それでも最後の夏は打率6割6分と持ち前の打棒をみせた。当時の八幡浜高の監督・徳田節次郎が大映の監督だった藤本定義の弟という縁もあり、プロ入りが決まった。

 

谷本との思い出を語る菊池=4月24日、八幡浜市松柏

 菊池はたたえる。「決して順風満帆ではない家庭事情の中で、親孝行しながらプロの道を切り開いた。家族を支えるとの思いがプロ野球で初という記録を打ち立てた原動力にもなっただろう」

■「ミサイル打線」の一角

 58年に球団合併で大毎に加入した谷本は、59年には初の二桁本塁打をマークするなど61年まで3年連続で100試合以上に出場。60年は榎本喜八、山内和弘ら強打者が並ぶ「ミサイル打線」で6番打者を担った。

 セ・リーグは王貞治や長嶋茂雄、パ・リーグは野村克也や張本勲などそうそうたるメンバーが名を連ねたオールスターにも60、63年の2度、出場を果たした。「バッティングがいい印象。谷本さんは『自分の打撃は理にかなっていなかった』と言っていたけど」と菊池は話す。

 

大毎時代の谷本稔(右)。左は当時の大毎のエース・小野正一

 60年、大毎は大洋(現DeNA)との日本シリーズを戦った。下馬評では大毎が優位だったが大洋の4連勝に終わり、大洋を率いた三原脩の采配を評価する「三原マジック」の言葉が生まれた。

 谷本は敵ながらその異名に貢献したかもしれない。第2戦、同点の八回1死満塁という絶好機に、打席の谷本はスクイズを試みた。しかし併殺となりチャンスをふいに。直前で投手を交代した三原の「魔術」を引き立ててしまう結果となった。

 一方でこのワンプレーで好機を逸し、4連敗を喫した大毎の監督・西本幸雄は引責辞任する事態にまで発展した。菊池が谷本に当時のことを聞いている。

 この試合5番に打順を上げた谷本はチャンスでの打席に「打て」の指示が出ると思っていた。しかしサインはスクイズ。バットに当てたがバックスピンがかかり捕手が捕球、三塁走者がタッチアウトになり、「球界一の鈍足」を自認していた谷本も一塁に間に合わず併殺になった。

 谷本はこのプレーを「自分はうまく転がした」と思っていた。しかし後日、映像を見返すと「完全にバント失敗やった」と頭をかいていたのだという・・・

65年に阪神に移籍した谷本。野村監督との対立や、球史に名を残す豪腕投手の発掘などまだまだ彼の人生は続いていく

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