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愛媛出版文化賞<7>奨励賞/第3部門 文学 川名大氏

2022年1月24日(月)(愛媛新聞)

「私の(富沢赤黄男に関する)研究を踏み台に、研究がさらに進むことを願う」と次代に期待を寄せる川名大さん

「私の(富沢赤黄男に関する)研究を踏み台に、研究がさらに進むことを願う」と次代に期待を寄せる川名大さん

[戦争と俳句(創風社出版)]

 

【赤黄男の日記を翻刻 推敲など句作過程再現】

 

 八幡浜市出身の俳人、富沢赤黄男の新たな資料「戦中俳句日記」と、戦中の俳誌から抽出・分類した1万6千句余を基に、俳句が戦争にどう向き合っていたのかを考察した。著者の川名大さん(82)=横浜市=は「短歌や小説では詳しく研究されているが、俳句では多くない。私の研究を踏み台に、研究がさらに進むことを願う」と次代に期待を寄せる。

 

 近代俳句の研究は昭和40年代後半から始めた。赤黄男に師事した俳人高柳重信から教えを受け、いわば孫弟子にあたる。今回、翻刻した日記の一部は研究されていたが、全体像は公になっておらず、新出といえる貴重な資料という。国の施策に同調して戦意を高揚させる聖戦俳句が多い中で「中国を転戦した赤黄男は、戦争と直に向き合い感じたことを象徴的な作り方で詠んだ」と評価する。

 

 新たな資料などを基に、従来とは一線を画した句作の解釈を提示する。赤黄男の代表句「蝶墜ちて大音響の結氷期」は、太平洋戦争を予言的に詠んだと読み解かれてきた。だが、句の生成過程をたどることで連作5句のテーマ「冬影」に収束していくと指摘し、戦争には結び付けず、季節的な冬の厳しさに思いをはせたと見立てる。

 

 こうした経緯もあり、推敲(すいこう)といった句作の過程がたどれるよう翻刻の再現性にこだわった。日記は黒の万年筆で書かれているが、推敲は赤鉛筆や青の万年筆で加筆されている。注意書きを細かく入れることで、元通り読めるよう腐心した。研究者として後の世代に「役立ててもらいたい」との願いからだ。

 

 戦中に特集された「支那事変三千句」「支那事変新三千句」で前線俳句が銃後俳句より2倍以上収録されたのは戦意高揚の情報操作ではとの疑問に、同時期の主要な17俳誌に掲載された句を約2年かけて収集・分類することで、銃後の方が圧倒的に多いと解明。「俳誌ごとで戦争への立ち位置に温度差があった」と振り返った。(武田亮)

 

=おわり

 

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