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受賞者に聞く

愛媛出版文化賞<4>部門賞/第4部門 その他文化全般 中村英利子氏

2022年1月20日(木)(愛媛新聞)

「松根東洋城の魅力が広く知られるようになれば嬉しい」と語る中村英利子さん

「松根東洋城の魅力が広く知られるようになれば嬉しい」と語る中村英利子さん

[渋柿の木の下で 孤高の俳人・松根東洋城の生涯 (アトラス出版)]

 

【浮かぶ温かな人物像 多彩な逸話 丁寧に拾う】

 

 受賞作は、夏目漱石門下で俳誌「渋柿」を創刊した宇和島藩主伊達家ゆかりの俳人松根東洋城(1878~1964年)の評伝。フリーライター中村英利子さん(73)=松山市久保田町=は「最初に興味を持ってから20年余り。いろんな苦労を思い出す。本当にうれしい」と受賞を喜ぶ。

 

 長年、地域の歴史や文化、偉人を雑誌や書籍で紹介してきた中村さん。本書では東洋城の生きた当時の世相や、文学関係者ら多彩な周辺人物たちとのエピソードを丁寧に拾いつつ東洋城の生きざまや人物像に迫った。

 

 東洋城は俳句指導の厳しさなどから「孤高の俳人」と評されるが、神経質な漱石の「低気圧」を根気よく和らげることのできる気遣いの人でもあった。中村さんは、気難しいと思われがちな東洋城のこうした心根の温かさ、親しみやすさに引かれたという。真偽不確かな「うわさ」についても史料を洗い出し、名誉回復にも注力した。

 

 その執筆姿勢は、選考委員から「決して孤高ではない、人間的魅力にあふれた人物であったことを浮かび上がらせることに成功している」と評された。正岡子規や高浜虚子らに比べ、あまりスポットが当たらなかった東洋城。読者に「親近感がわいた」と言われることが一番うれしいという。

 

 生前を知る人々がいる人物を書く難しさに悩み、1度は筆を置いた作品。それだけに「これでほっとしたというか、肩の荷が下りたというか。本当によかった」と感慨もひとしおだ。

 

 出版業界が厳しい時代を迎えて久しいが、中村さんは「地域の歴史、文化を発信する仕事を絶やしてはいけない」と強調。「次の時代を支える人材育成が重要になる。教育機関などと連携しながら自分に何ができるのか考えたい」と決意を新たにしている。(江頭謙)

 

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