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受賞者に聞く

愛媛出版文化賞<2>部門賞/第2部門 美術 今井琉璃男氏

2022年1月18日(火)(愛媛新聞)

「多くの人の助けがあって出版できた」と受賞を喜ぶ今井琉璃男さん

「多くの人の助けがあって出版できた」と受賞を喜ぶ今井琉璃男さん

[晴嵐 今井恭介画集 遊心遊目(愛媛新聞サービスセンター)]

 

【無名画家 照らし出す 父を鎮魂 作品買い戻し】

 

 明治から昭和にかけて、松山市の三津浜地域を拠点に活動した日本画家今井恭介さん=画号・晴嵐=の作品など55点を、長男である琉璃男さん(94)=同市若葉町=がまとめた画集。琉璃男さんが覚えている限りの人柄やエピソードを添え、画壇では無名に近かった「晴嵐」の姿を浮かび上がらせた。

 

 琉璃男さんによると、恭介さんは幼少期から絵を描くことを好み、15歳で京都の日本画家今尾景年の内弟子となり、20歳前には京都市立絵画専門学校(現京都市立芸術大)に入った。しかし、卒業を前に学資の頼みだった次兄が急逝し中退。大正末期に帰郷した。助産師だった妻マツさんの支えもありほそぼそと画業を続けたが、1948年、琉璃男さんが20歳の時に63歳で亡くなった。生活費の足しに絵を売っており、作品は手元に一枚も残らなかったという。

 

 琉璃男さんは約50年前から画商や弟子筋に連絡を取り作品を買い戻し始め、軸、扁額(へんがく)、色紙、短冊、ついたてなどが集まった。「僕が死んだらおやじの作品は雲散霧消だ」と、作品を後世に伝えるため2021年の七十三回忌を前に本の制作に取りかかった。

 

 解説は、愛媛新聞社相談役の琉璃男さんが自ら執筆。「遊心遊目」の題は「絵を見、鑑賞することによって人は心を開放し、自由にする」という恭介さんの言葉から取った。

 

 出版した本を見た人から作品がさらに4点戻ったといい、琉璃男さんは「10点集まったら追加版を出したい」と力を込める。恭介さんが中退した京都市立芸術大に本を寄贈し「父への鎮魂であり、僕の気持ちも納まった」と満足げに話す。「自分なりの親孝行ができたかな」とほほ笑んだ。(尾上芽吹)

 

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