
フジ・尾﨑会長が描く未来図 「エミフルはエミフルのまま」
2024年3月までにイオン(千葉市)傘下のマックスバリュ西日本(MV西、広島市)と合併し、新会社を設立する県内スーパー最大手のフジ(松山市)。合併に先駆け、22年3月1日にフジとMV西が経営統合し、フジはイオンの連結子会社となる。MV西はマルナカなどを展開しており、シェアは拡大する。「エミフルMASAKI」(松前町)は「イオンモール」になるのか、プライベートブランド(PB)は―。長年、フジを率いてきた尾﨑英雄会長に聞いた。
(聞き手・森口睦月)
■事業維持のための決断
「将来的に単独では難しく、地域で連携できるパートナーを考えないといけないという思いがあった」と語る尾﨑英雄会長
18年にイオンと資本・業務提携に至ったきっかけは。
人口減少、高齢化が進む中、一定の規模で事業を維持するにはそれなりの経営基盤が必要だ。未来に向けた投資に加え、激甚化する自然災害や南海トラフ巨大地震のリスクもある。財務基盤やノウハウ、人材などを組織の力にできるところが残っていく。前々から将来的に単独では難しく、地域で連携できるパートナーを考えないといけないという思いがあった。
(イオンと)中四国で地域の未来、新しい経営構造をつくっていくのは一つのチャンスだと思った。1番は自分たちで考えて将来を切り開ける、ハンドリングできるタイミングにやるべきだとも。厳しいときではなく、先が見えて頑張れるうちに、上に上がっていこうじゃないかという思いで決断したのが18年だった。
業務提携で商品調達の効率化や電子マネー「WAON」の導入などを進めてきたが、さらに合併、子会社化へと踏み込んだ。
新型コロナウイルスで暮らしや環境が大きく変わり、急ぐべきだと決断して今年9月1日、イオングループとしての新たな出発を発表した。コロナが動きを早めたのは事実だ。
新型コロナ下でモノがない時期でも、イオンは調達先があり、情報を持っている。さらに、日本全国に店舗があるため、どこかで災害があり、それに伴う教訓や経験がある。組織全体で水平展開で対処ができ、参考になることがたくさんある。(今後必要な)デジタルトランスフォーメーション(DX)でも(イオンの)基盤力は大きい。
■社員らの不安解消も
現場の不安の声を解消する必要性も説く
経営統合発表後の反応は。
もう1段上がって高い夢が見られる、活躍のフィールドが広がる。しかし、これは僕ら(経営側)の論理。「今度は兵庫に転勤?」「本部は広島になるんですか」など現場はやはり不安だ。「本社をよそにするつもりはなく、ずっと松山にいるから安心してほしい」と伝えている。
ただ、現実的に判断しやすい場所として広島も重要な場所になってくる。これから整理していく。山口普社長を中心に現場を回って店長と話し、従業員の不安を聞いている。思いを制度文化としてどう解決できるかが僕らの仕事だ。
「1段高い夢」とは。
経営基盤が強固になることで、地域の暮らしをもっと支えられる体制ができる。流通業は地域の購買力のおかげで成り立つ。物やサービスの提供だけでなく、文化を残して磨き、地域ならではの産業をどう応援していくかもわれわれの使命だ。自然、環境を守り、社会、暮らし、産業、雇用をつくる。
トップの夢がみんなの夢であるはずがなく、一緒に夢を見られるような会社でないといけない