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2021
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大丈夫、一歩ずつ 愛媛のスクールソーシャルワーカー ⑤居場所ないなら、つくる

 午後6時ごろ、小中学生らが三々五々、砥部町中央公民館に集まってきた。好きな机に座って算数や国語のワークブックをバッグから取り出す。「かわいい筆箱やね」。スタッフに声を掛けられた女子児童は少しはにかんで問題を解き始めた。開始の合図はなく、会話も自由。和気あいあいとしている。それでいて子どもたちは勉強にまっすぐ向かっている。

 7月9日にあったNPO砥部みらい会議が運営する「学びクラブ」。月2回、午後6~8時に開催しているが、新型コロナウイルス対策のために延期続きだったので、この日が本年度2回目だった。

 いつものように子どもとボランティアのスタッフがそれぞれ10人前後参加。自習して、分からないところをスタッフが教える。勉強の後は自由時間。子どもも大人もカードゲームなどで盛り上がる。「ここでは、ちゃんと勉強してから遊んでる」。小学4年の女子児童が得意そうに語った。

 クラブでは、見違えるほど学習習慣が身について志望校に合格した生徒もいるが、「実は勉強を第一にはしていないんです」と町教育委員会スクールソーシャルワーカーの古谷大志さん(35)。2019年の設立当初から一貫しているという。

■社会とつながる接点を

 

スタッフにほめてもらいながら、宿題を進める児童

 最初にクラブを立ち上げようと言い出したのは古谷さんの前任者だった。当時、不登校の子どもが社会につながるきっかけになる場を探していた。定期的に子どもが集まる学校以外の場所がよかったが、近隣になかった。

 ないなら、つくろう、ということになった。

 個人のニーズから必要な仕組みを考えて、行政や地域に働き掛けるのは、ソーシャルワーカーの社会的役割の一つだ。「勉強」は集まる理由として掲げた。福祉施設の職員を中心にさまざまな職種の大人がスタッフとなった。

 クラブは誰でも参加できる。小中学生が中心だが、高校生もおり、学校に行っている子も、行っていない子もいる。参加するうちに自然と関係ができていくという。

 子どもと大人の関わりが深い点もクラブの特徴だ。毎回、子どもとほぼ同数のスタッフが参加する。「スタッフと会いたいからと言って参加する中高生も多いんですよ」と砥部みらい会議の村上明子代表(45)は語る。「時間の半分はたわいないこと、進路、悩みなどを話しているんじゃないかと思います。地域の大人に話を聞いほしいという子が多い。親とはまた違うんだろうと思います」

■親のためにも

 

勉強だけでなく、遊びなども通して子どもと関係を深めていく

 保護者にとっても友人とゆっくり話したり、スタッフに相談できたりする場所になっている。スタッフに福祉や保育、障害、介護分野の有資格者が多いこともクラブの特色だ。  この日参加していた男子生徒の母親(40)は以前、「教員に子どもの発達障害の特性を理解してもらえない」と古谷さんに相談。古谷さんに特性について説明してもらったことで、生徒と教員の関係がよくなったという。

 新型コロナでクラブが休止だった間は本当に息が詰まったと母親は再開を喜ぶ。「皆さん、いつも話を聞いて受け止めてくれる。家庭内のことも共有してほしいと思えるくらい、温かい方ばかり。とても気持ちが楽になります」

 

 【メモ】活動状況
 スクールソーシャルワーカーにはいくつかの活動スタイルがある。県内では、市町の教育委員会などに配置され、学校から相談があった場合に派遣される「派遣型」と、特定の学校を拠点としながら別の学校の相談にも対応する「拠点校型」が多い。
 県内のスクールソーシャルワーカーは全員、非常勤。多くが「1日4時間、年間90日」といった条件で働く。
 家庭訪問は親の生活に合わせる必要があるので、勤務時間は不規則になりがち。支援した子どもを民間団体の運営する子ども食堂や学習支援の場につなげることも多いので、そのままボランティアスタッフとして協力するスクールソーシャルワーカーも複数いる。

 

■声をお寄せ下さい

 

 

 生まれた環境によって子どもの将来が左右されている現実があります。妊娠期から成人期までの子ども・家庭支援や、社会的養護について取材しています。社会に課題を伝えるため、当事者の方の現状や経験を聞かせてください。支援者の方も声をお寄せください。連絡先をご記入の上、電子メールはkyotaro@ehime-np.co.jp 。LINEはQRコードかこちらから友だち登録をお願い致します。

 

 

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