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2021
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飲み頃 愛媛のクラフトビール

 長期にわたって居座った前線が離れ、蒸し暑い夏が戻ってきた。暑気払いにはビアガーデンなどで生ビールをグイッと飲みたいところだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で今年の夏も難しそうだ。「外飲みは我慢するけれども、おいしいビールは飲みたい」。そんなもどかしさを解消するため、家に持ち帰って堪能できるクラフトビールはいかがだろう。香りや口当たり、味わいにこだわった逸品を造る県内の3醸造所や、クラフトビール初心者にお勧めのスタイルなどを紹介する。
(デジタル戦略室)

●梅錦山川(四国中央市金田町金川)

 

 各地に小規模な地ビールメーカーが生まれるきっかけとなった1994年の酒税法改正で、全国初の製造免許を取得したのが梅錦山川(四国中央市金田町金川)だ。県内最大の酒造会社のプライドとともに、地ビールの憂き目の時代も醸造を続けてきた。県鳥のコマドリをラベルに描いた定番のラインアップや、県産かんきつを使ったシリーズなど「愛媛を味わうビール」として全国に販路を広げる。

 

「実は梅錦に入るまでお酒は苦手な方で…」と苦笑いする佐伯さん

 たくさんの蔵や貯蔵タンクが並ぶ、広い敷地の一角にビールの醸造所がある。「会社にも自由にさせてもらってます」と笑顔で語るのは、ビール部門を1人で担っている佐伯政博さん。2011年にビール担当に戻り、のどごしではなく、舌で味わうビールを追求してきた。

 

かつては日本酒造りに使っていた倉庫に並ぶ釜。佐伯さん1人で醸造する

 梅錦山川の日本酒は甘口が多く「ビールも発酵由来の甘みを大切にするようにしている」。レギュラーのヴァイツェンやブロンシュは県産の裸麦などを使っており、口当たりが柔らかく、フルーティーな香りと軽い苦味でビールが苦手な人でも飲みやすい。

 

県内産のかんきつをふんだんに使った3品

 はやりに迎合することは避けてきたが、近年は新たなスタイルにも挑戦。18年8月に河内晩かん、20年12月にイヨカン、そして今年6月には岩城島(上島町)のレモンを使ったクラフトビールを期間限定で相次いで発売。原料の皮は手作業で処理するため大変だが「良しあしは自分次第。飲んだ人の『おいしい』の一言がうれしいので」と丹精する。

 

県産の小麦などを使うレギュラーの5品

 冬場の酒造りの時期には、日本酒と同じように清酒酵母や米こうじなどで仕込むビール「ソクジョウ」も手がける。通常のビールに比べて完成まで時間がかかることなどもあり、数量限定でイベントなどで販売している。味わいは「不思議なビール」(佐伯さん)とのことで、早く新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、ビアフェスタなどのイベントを開催できる日を一緒に待ちたい。

 ホームページhttps://www.umenishiki.com/products/promotions/beer/tokusyu.html

●DD4D BREWING&CLOTHING STORE(松山市千舟町4丁目)

 

 2019年5月の開業からわずか2年ほどで、約120種類のクラフトビールを世に出した。松山市中心部のアパレルショップ内にあり、仕込みタンクは500リットル4基のみ。毎週新作を出し続ける「DD4D BREWING&CLOTHING STORE」(千舟町4丁目)は、多様なビールの楽しみ方を提案する県内屈指の醸造所だ。

 

アパレルショップ店内の奥にあるDD4Dの醸造所

 県外のクラフトビール専門店に勤め、ビール醸造の国際大会での入賞経験もある山之内圭太さんが帰郷して開業した。醸造長のマイケル・ダナヒューさんと常に酵母やホップなどの組み合わせを考え、レシピのアイデアは「造りきれないほど」あるという。

 

2019年に醸造所を開いた山之内さん

 1種類につき330ミリリットルの瓶約1500本分しか造ることができず、IPAなどクラフトビールの王道とされる種類は1カ月ほどで売り切れることも。伊予市の蜂蜜や、石鎚山系の天然水などさまざまな事業者と連携した商品も多く、プロジェクトコーディネーターの村上慎さんは「『正解は一つではない』ということをビールで伝えたく、さまざまなスタイルを提供しています」。

 

麦汁を作るため砕いた麦芽と湯を混ぜるダナヒューさん

 個性的な顔ぶれがそろうDD4Dのビールの中でも、この夏お薦めなのがブリュットIPAだ。糖分を飛ばして造るため非常に辛口だが、ホップ由来のフルーティーさと絶妙にマッチ。ユズを加えてさらに爽やかさを増した同じ系統の一品もあり、ともに何度も購入したくなる味わいだ。

 

毎週新作が加わるDD4Dのラインアップ

 9月には同市住吉に新たな工場を稼働予定で、製造量が最大10倍になり種類も増える。4種類ほどは定番として常時生産する考えで「愛媛のかんきつを使ったビールや『これを定番にするのか』と皆さんが驚く種類を検討しています」と村上さん。今後も、私たちの想像をはるかに超えるような一杯で心も舌も楽しませてくれそうだ。

 インスタグラムhttps://www.instagram.com/dd4d_global/?hl=ja

●大三島ブリュワリー(今治市大三島町宮浦)

 

大山祇神社の参道沿いにある大三島ブリュワリー

 大山祇神社の参道沿い、古い商店を改装し、小さなビール工房と飲食スペースを併設したブリューパブを営む。街並みに溶け込んでいるせいか、通り過ぎるお客さんもいるそうだが「大三島らしい場所、建物での開業を目指していました」という代表の高橋享平さんの狙い通りといえるかもしれない。

 

古い商店を改装した大三島ブリュワリーの店内

 高橋さんは松山市出身、妻の尚子さんは富山県出身と大三島には縁のない2人。温かく迎え、開業準備を手助けしてくれた島の人たちに恩返しをしたいとの思いを強く持つ。インターネット通販を行わないのも「実際に島に足を運んで、味わってもらいたい」という考えからだ。

 

大三島ブリュワリーを経営する高橋享平さん、尚子さん夫妻。島からのビール文化発信に意欲的に取り組んでいる。

 シーズンなどで入れ替えながら4種類のビールを提供。優しく、バランスのよい味わいが特長で、ビールが苦手な人も好きな人も楽しめる。特に、大三島産の無農薬かんきつを使用したビールは人気が高い。「自分に合う味、料理やシチュエーションに応じた飲み方を見つけてもらえれば。そういうスタイルを追求していくことは日本人の気質に合っていると思います」と高橋さん。大三島から新しいビール文化を発信していくことも目標の一つだ。

 

クラフトビールを造るタンクで作業する代表の高橋享平さん

 店頭で味わってもらうのがお薦めだが、ペットボトルなど密閉できる容器を持参すれば持ち帰りも可能。量り売りは100ミリリットル168円から。冷蔵で2週間保存できるボトル缶(520ミリリットル)での販売も始めた(ラベルは制作中)。こちらは容器代込みで940円から。

 

優しい味わいが特徴の大三島ブリュワリーのクラフトビール

 10月2、3両日には大三島で、かつて高橋さんが働いていた箕面ビール(大阪)などとコラボレーションしたイベントを開催予定。詳細・予約はhttps://beercube2021.peatix.com/

 インスタグラムhttps://www.instagram.com/omishimabrewery/?hl=ja

【クラフトビールとは!?】

 いまや「第2のブーム」といわれる日本のクラフトビール。改めてその奥深い世界をのぞいてみよう。

 米国の業界団体はクラフトビールを、小規模醸造所が、単独で行う、伝統的なビール造りと定義。ただ、米国の小規模は日本では大規模とされる醸造量で、ビアバー「BOKKE」(松山市南堀端町)の店主沢村和高さんは「個人的には、1人の方が全ての工程を管理できる規模で、職人が丹精したビールという印象があります」と語る。

 クラフトビールは150種類以上あるとされ、よく耳にするのは、ホップが効いていて、香り高い「ペールエール」や、より苦味などが増した「IPA」、黒ビールの一種「スタウト」など。醸造方法はもちろん、風味や色合いがそれぞれ異なり、改良を重ねるようにして種類が増えているという。

初心者はどのようにビールを選べば?

 

クラフトビールの持ち帰り販売も行うビアバー「BOKKE」

 では、クラフトビール初心者は、何を基準に選べばいいのだろう。沢村さんは同じ醸造所でも種類が違えば、味わいが大きく異なると説明。「自分の好きな種類や方向が分かれば、新しいビアバーに行っても好みの一杯が見つかるはずです」と笑顔を見せる。

 初めてクラフトビールを飲む人も多く訪れる同店では「クラフトビールを知る入り口になれば」と大きく分けて5、6種類のビールを提供している。取材した7月下旬のメニューを例に挙げてみよう。

 一つ目は、乳酸菌などを酵母とした「サワーエール」に果物を加えた「フルーツサワー」。さっぱりしていて飲みやすく、苦味もほとんどない。「ホワイトエール」などの白ビールも苦味が少なく、飲み口が非常に滑らかで、バナナのような香りがする物も。定番のペールエールとIPAは全体のバランスが取れており、苦味も中程度といわれる。他には、黒ビールやIPAの派生型などが並ぶ。

楽しみ方は自由!

 

「ビールは楽しい飲み物。飲み手の風通しもいいんです」と語るBOKKEの沢村さん

 クラフトビールの種類と同じように、ビールの楽しみ方も千差万別。じっくりと1杯を味わう人もいれば、手当たり次第に店のビールを飲み比べる人も。ビアフェスタや醸造所で、直接造り手の思いを聞きながらビールを飲むという楽しみ方もある。各地の醸造所巡りを目的に、旅をするのも面白そうだ。

 現在、BOKKEでは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、店内での飲食は休止し、ボトル缶の販売を行っている。テークアウトが増えそうな現状に、沢村さんは「ビールは常に冷やしておき、日光に当てない方がいいです。味などが変わる可能性もあります」とアドバイス。自宅で造り手が飲んでほしい味を堪能するには、保冷バッグなどを持っていくのも良いかもしれない。

 BOKKE:インスタグラムhttps://www.instagram.com/craftbeerbokke/

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