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見ないNHKのBS放送 受信料は?(西日本新聞)

2021年8月21日(土)(友好社)

 

 「NHKのBSデジタル放送を見ていないのに、受信料を要求された」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、福岡市の男性から投稿があった。NHKの営業員からは「配線を変えたら映る」と迫られたという。見たくなくても視聴できる環境であることから「受動喫煙」になぞらえ「受動受信」と言われ、2007年に始まった総務省の会議以降、問題視されてきた。有識者は「BSは付加的なサービスで民放との違いがはっきりしない。受信料支払いの根拠が不明確だ」と見直しを求めている。

 

 「アンテナと、チューナー内蔵のテレビがあるなら支払うように、との一点張りだった」。投稿した男性は、営業員から迫られた時のことが忘れられない。

 

 14年、BS放送の共用アンテナがある集合住宅へ転居。壁面のテレビ端子からテレビの地上波用端子につなぎ、BS放送は全く見ていない状態だった。ところが17年になり、訪れた営業員から「壁面の端子から分波器でテレビのBS端子につなぐと視聴できる」とチラシを見せられ、支払いを求められた。男性はその後、一戸建てに転居。当時の受信料の請求が今も届いているが、納得がいかずに支払っていない。

 

 放送法64条は「受信設備を設置した者は(中略)契約をしなければならない」と規定。1950年施行当時から基本的に変わっていない。これを根拠に、視聴者が意図せずにBS受信環境が整っている場合も、支払いが求められている。

 

 NHKにとって、89年にスタートしたBS放送は今や“稼ぎ頭”だ。

 

 放送開始当時、視聴者は自らパラボラアンテナとBS対応のチューナーを取り付け視聴していた。しかし、現在は対応チューナー内蔵のテレビが標準化。共用アンテナのあるマンションも増えた。テレビを設置した場合、いや応なくBSの受信環境が整ってしまう。

 

 こうしたこともあり、地上波とBSを合わせた契約数は2016年度、地上波のみの契約を上回った。NHKは、職員の不祥事が相次いで発覚した04年以降に支払い拒否が急増したものの、BS契約の増加もあり20年度の受信料収入は05年度比で14%増えている。

 

 「適切な措置が講じられるべきだ」。総務省が07年に設置した有識者会議「公平負担のための受信料体系の現状と課題に関する研究会」は、BSの受信料制度の在り方を主要テーマとして取り上げ、当時からその見直しは課題となっていた。菅義偉総務相(当時)の提案で設置された会議だった。NHKは「さまざまな観点からしっかりと検討していきたい」としていた。

 

 ところがその後に進展はなく、18年に再び衆議院総務委員会で取り上げられた。長年問題を指摘してきた立憲民主党の寺田学氏は「放置され続けてきた」と追及。それでもNHKは「引き続き検討を進めたい」と11年前と同じ答弁だった。研究会は「BS放送はスポーツ中継や映画の視聴が多く、地上波とは違う付加的なサービスではないか」などと指摘した。公共放送とは言いにくくなっており、受信料支払いの根拠が明確でないというのだ。

 

 寺田氏は取材に「BSがNHKの大きな財源となっており、見直しづらくなっているはずだ。ただ、BSは付加的サービスであり、(料金を支払った人のみが受信できる)スクランブル化も十分検討するべきだ」と強調する。

 

 前総務相の衆院議員、高市早苗氏(自民)も強く批判する。総務相を退任する直前の20年9月、自身のブログで「NHK改革は絶対に必要だ」として問題を取り上げ、「BS受信料は、撤廃を含めた引き下げが必要」と指摘。退任直後にも、受動受信が若年層や高齢世帯に重い負担だとして「受信料引き下げの実現を切望する」と訴えた。(西日本新聞)

 

 

 

【識者「受信料体系全体の再検討が必要」】

 

 中央大の鳥居昭夫教授(経済政策)の話 有料放送を含め民放でも類似の番組を視聴できるBS放送で、受信環境がたまたま整ってしまった場合も一律に受信料を課すことは、公共放送の役割として適切なのか問い直すべき重大な問題だ。早急に対処が必要であるにもかかわらず、先送りされてきた。スクランブル化や地上波との契約一体化も含めて、受信料体系全体の再検討が必要だ。NHKが「質の高い番組を提供している」という理屈だけで、現在の受信料体系を維持してよいということにはならない。

 

 

 

【NHKの受信料】

 

 月額受信料(口座振替など)は、地上契約1225円、BS契約(地上契約を含む)は2170円。ともに沖縄県のみ異なる。NHKは職員の不祥事が相次いで発覚した2004年以降、支払い拒否が急増。その後、任意で契約を求めてきた方針を転換。06年から受信契約を結んでも支払いが滞っている場合、09年からは未契約のケースにも支払いを求め提訴するなど法的措置を取り始めた。最高裁は17年、受信料制度は合憲とする判断を初めて示した。

 

 

 

【NHK「受信料は、視聴者、国民の理解を得ることが大前提」】

 

 NHKは受動受信に関する西日本新聞の質問に回答した。主な内容は次の通り。

 

 -NHKの受信料や契約の相談電話のうち、受動受信に関する問い合わせ、苦情の件数などはどう把握しているのか。

 

 「個別集計はしていない。集合住宅などにお住まいの方から『BSデジタル放送を受信する意図がないのに、契約を求められるのは納得がいかない』というご意見があるのは承知している」

 

 -2007年設置の総務省の「公平負担のための受信料体系の現状と課題に関する研究会」では、NHKのBS放送がスポーツや映画など娯楽目的に偏った利用実態がみられるとして、公共放送として受信契約を義務付けるのは無理が出ていると指摘した。

 

 「BS放送は、教養、教育、報道、娯楽という各分野の番組の調和を保ち編成し、どの分野もよくご覧いただいている。NHKならではの見応えのある番組を合理的なコストで届け、契約に理解いただけるよう努めていく」

 

 -近年、契約件数でBS放送が地上波を上回っている。その理由は。

 

 「BS放送の契約割合が向上している要因として、地上デジタル放送の開始後にBS放送を受信できる受信機の普及が大きく進み、受信ができる世帯が増えてきたことなどがある」

 

 -BS放送を巡っては、受信料を支払った人だけが視聴できる「スクランブル化」の必要性が指摘されてきた。NHKは導入しない理由として「BS放送普及のため」などと説明してきたが、現在はBSが大きく広がっている。

 

 「受信料はNHKの事業を維持、運営するための特殊な負担金であり、放送の対価としていただいていない。BS受信料も、BS放送を見ることの対価ではなく、公共の福祉のために豊かで良い放送番組を放送するという公共放送の社会的使命を果たすための財源。BS放送をスクランブル化し、受信料を支払わない方に番組を視聴できないようにする方法は、NHKに求められている『公共の役割』と相いれない」

 

 -2007年に総務省が設置した研究会では、受動受信問題が取り上げられた。「受信規約の改正などの適切な措置が講じられるべきだ」と指摘され、NHKも「さまざまな観点からしっかりと検討していきたい」との意見を出した。検討が進展しない理由は何か。

 

 「受信料の在り方については、視聴者、国民の理解を得ることが大前提だと考えており、(BSなど4チャンネルある)衛星波の削減を予定している2023年度に、BS受信料を値下げしたいと考えている。ご指摘の件については、現行の受信料制度の下で、何が可能か引き続き検討していきたい」

 

 -受信料の公平負担という観点では、BS放送の受動受信者よりも、地上波の受信料未納者から徴収することを優先すべきだという指摘もある。

 

 「BS放送を受信できる受信設備を設置された方には、放送法および放送受信規約に基づき、BS契約の締結をお願いしている。その際には、BS放送が受信できる環境にあることを把握した上で、丁寧な対応に努めている。(地上波の)受信料のお手続きを頂いていない方やお支払いが滞っている方に対しても、公共放送の役割や受信料制度の意義などについて丁寧にご説明し、お支払いをお願いするなど、公平負担の徹底に努めていく」

 

 -NHKは近年、繰越金と建設積立資産が合計3000億円(剰余金)に達している。このような収支の不均衡は、NHKの公共的な運営として適切なのか。

 

 「受信料は公共料金の性格を有するものであり、事業運営に必要な経費に対し、収入が見合うよう設定する考え方(総括原価方式)が基本で、収支均衡が原則。こうした考えに基づき、受信料額を決定しており、毎年、国会で承認を受けている。結果として、決算において繰越金が発生した場合に、視聴者の方に受信料を還元できる仕組み(新たな勘定科目の設定)をつくるための法改正をお願いしている。建設積立資産は、放送センターの建て替えなどに必要な資金を積み立てている」

 

 -西日本新聞への情報提供などでは、NHKの営業担当者が集合住宅の住人に「リモコンを見せなさい」「共用アンテナが設置されており、テレビがあれば払わなければならない」などと高圧的、乱暴と取れる言動をしていた。どのような指導をしているのか。

 

 「BS契約の締結に当たっては、放送受信規約にのっとった説明や、受信料制度の意義を説明するなど丁寧な対応を行うよう指導している。説明不足の指摘があった場合は、改善に向けた指導をする」

 

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