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若年がん患者に子どもを

愛媛大医学部附属病院で県内初「卵巣組織凍結」実施

2021年8月1日(日)(愛媛新聞)

 

「情報や選択肢があることを、必要な患者さんに知ってもらい、丁寧に説明していきたい」と語る安岡稔晃医師=愛媛大医学部附属病院(提供写真)

「情報や選択肢があることを、必要な患者さんに知ってもらい、丁寧に説明していきたい」と語る安岡稔晃医師=愛媛大医学部附属病院(提供写真)

 

「情報や選択肢があることを、必要な患者さんに知ってもらい、丁寧に説明していきたい」と語る安岡稔晃医師=愛媛大医学部附属病院(提供写真)

「情報や選択肢があることを、必要な患者さんに知ってもらい、丁寧に説明していきたい」と語る安岡稔晃医師=愛媛大医学部附属病院(提供写真)

【小児・若年がん患者の妊孕性温存の選択肢増える】

 

 愛媛大医学部附属病院(東温市)は7月、若年がん患者の「妊孕(にんよう)性(子どもをつくる能力)」温存のため、県内で初めて卵巣組織を凍結保存した。国内では臨床研究の段階だが、卵子や受精卵の凍結などに比べ、治療の時間的猶予がなく採卵が難しい場合にも温存が可能。将来に希望を残す選択肢が増えた。

 

 小児・若年がん患者らが治療によって損なわれる妊孕性を温存する「がん生殖医療」には、未受精の卵子・精子や受精卵、卵巣の凍結保存、卵巣をつり上げて放射線照射を極力避ける方法、一部切除で子宮や卵巣を残す方法などがある。

 

 県内では2018年、小児・思春期・若年がん患者らの生殖医療充実を目指す「県がん生殖医療ネットワーク(EON)」(代表=杉山隆・愛媛大大学院医学系研究科産科婦人科学教授)が発足。18施設が参加し、連携して勉強会の開催や啓発、治療、カウンセリングなどに当たっている。

 

 同病院産婦人科助教の安岡稔晃医師によると、今回の対象は白血病の県内の10代女性。治療が進み、骨髄移植を待っている状況で、本人と家族に妊孕性の温存について説明。いったんは卵子凍結の希望があって試みたが、がん治療による卵巣のダメージや時間的な制約から断念。卵巣組織の凍結に到った。

 

 卵巣組織の凍結は04年に世界で初めて実施され、出産例の報告も100例以上ある。二つある卵巣の片側を腹腔(ふくくう)鏡手術で摘出し、多数の卵子(原始卵胞)が存在する卵巣皮質の部分を薄く切除。シート状にしてガラス化凍結法で凍らせ、液体窒素タンクで保存する。入院期間3~4日程度で実施できる。

 

 将来的に患者が妊娠を希望した場合、一般には凍結保存した卵巣組織を融解して体内に戻す「自家移植」を実施した上で、自然妊娠や人工授精(体内受精)、体外受精などを目指す。ただ今回のように血液のがんなど全身性の病気の場合、保存した組織にがん細胞が混入し、体内に戻すことで転移する可能性があるため自家移植はできない。その場合は、卵巣組織を体外で培養し、卵子を取り出して体外受精を行う方法が研究されているが、まだ出産例は報告されていない。

 

 安岡医師は「まずは病気の治療が最優先。確実に妊娠を約束できるわけではなく、可能性も現段階では低い」ことを説明。すべて自己負担で60~70万円かかる高額な費用もネックだったが、「(本人と家族が)悩んだ末、希望を残すことに賭けてくださったと思う。10年後、20年後には医療の進歩で、自家移植でなくても体外受精を行えるようになっているかもしれないと期待しているし、治療を待っている今、できることがあれば最善を尽くしたかった」と語った。

 

 また、県内で妊孕性温存の問題に直面する小児・若年がん患者は、年間で男性約10人、女性は約20人程度いると推計。実際に同病院の「がん・生殖医療相談外来」を訪れる人は「半分にも満たず、十分に情報が届いていないのでは」と心配する。かかる費用への助成、支援も行政に要請中で、県内での温存の選択肢が増えたことや相談・カウンセリングの場があることを「多くの人に知ってほしい」と話している。

 

 同病院の「がん・生殖医療相談外来」は、原則毎週金曜日午後2時~、費用は60分まで5千円、60分以上1万円(自費診療)。

 

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