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県内情報公開 四半世紀の現在地

県内情報公開
四半世紀の現在地

個人の特定につながるなどとして、「黒塗り」がある県の資料(画像を一部加工しています)

 行政機関などが保有する公文書を請求に基づいて開示する「情報公開制度」。請求できる内容は多岐にわたり、愛媛新聞でも、公務員の処分や、内部会議の議事録といった資料・文書の開示に活用している。個人の特定につながるなどとして大部分が「黒塗り」になる文書もあるが、警察官の不祥事など請求で明らかになった事実は少なくない。

自治体ごとの違い

 今回、別の取材のため県内全自治体に情報公開請求をしようとして思わず「うん!?」となった。市町の関係者以外は申請できなかったり、手数料が必要だったりする自治体があるためだ。県内で情報公開条例が施行されて四半世紀。「開かれた行政の推進」を目指す制度の現在地を点検する。

 県内の情報公開条例は、1996年4月に松山、新居浜両市と大西町(現・今治市)が施行し、現在は県と全20市町が定めている。請求者が確認したい内容を書いて提出し、行政が公開・非公開を判断。決定に不服があれば有識者らでつくる審査会に申し立てができ、非公開が覆った事例もある。

 県と20市町の請求書を確認すると、「内容」「公開方法」の2点は全ての自治体で記入が必要だ。どんな行政情報が必要かを明確にするためで、公開方法は庁舎内での閲覧か、コピーした資料を受け取る「写しの交付」かなどが選べる。

 

住民らが記入する項目が大きく違う県の請求書(左)と大洲市の請求書

 一方、対応が分かれたのは住民ら以外でも請求できるかどうかを示す「請求者の区分」だ。2006年に愛媛新聞が県と20市町の情報公開制度を調べた際、どこの誰でも請求ができたのは松山市だけだったが、現在は、同市や県など10自治体にまで広がっている。18年に改正した松前町は「情報化が進み、町域を越えた交流も広がる中で町民に制限する必要がない」。上島町も「『透明な行政』を目指す中で、限定しているのは趣旨に反する。全国を調査しても同様の流れだ」として今年4月に切り替えた。

 08年に改正した県は「他都道府県との不平等さ」を理由に挙げた。制限がある自治体の住民は、制限がない自治体に請求可能だが、その逆はできないため平等性に欠けるとの考えだ。

今もなお半数弱の自治体が制限

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」(東京)の三木由希子理事長は「(全国で情報公開制度ができた)40年以上前から当然、誰でも請求できるようにするべきだと訴えてきた」と話す。徐々に減ってはいるが、現在でも全国自治体の半数弱が制限を設けている。特に小規模自治体は「必要性を感じておらず、制限を撤廃して申請が増える可能性を負担に思っているのかもしれない」と懸念する。

 

「請求者の区分」がある公開請求書。徐々に項目を記載する自治体が減ってきた

 制限がある県内市町の多くは条例制定時から大きな改正をしていない。松野町は「市町村合併がなく、見直す機会がなかった。周辺自治体は変えているので必要性を感じている」と話す。制限を設けていても柔軟に運用し、申請を認める自治体もあるが、請求者が部分公開・非公開決定に対して不服申し立てができない恐れがあるという。

「受け取り方」の差も

 スマートフォンの普及で、情報の「受け取り方」も多様化した。開示した情報の撮影を許可すると明確に答えたのは、県と松山市、四国中央市と上島、鬼北、愛南の3町。制度の利用が多い県と松山市では、実際に撮影した事例があった。残る15市町は「費用がいる写しの交付との公平性がとれない」「データは流出の恐れがある」と断る可能性が高いという。

 

自治体によってはスマートフォンで資料を撮影する事例も出てきている

 ただ、三木理事長は「撮影が問題になることが問題だ」と指摘。写しの交付にかかる費用はコピー代であり「撮影を制限する法的根拠はない」。他の都道府県では公開を求められたデータをメールで送る自治体もあるとする。

手数料はアリかナシか

 全国的には情報公開請求時に手数料を求める自治体も増えている。県内では宇和島市が、10年の条例改正で「公開請求手数料」として300円を定めている。市の担当者は「請求に関わる人件費などが必要なため」と説明。県内自治体では写しの交付の費用がA4モノクロで1枚10~50円と差があるが、請求自体に費用がかかるのは同市だけだ。

 三木理事長によると、過去に大量請求などがあった自治体で手数料を設ける傾向があり、近隣自治体に広がるケースもある。ただ「行政が説明責任を果たすのは基本的な仕事であり、手数料規定は入れるべきではない」と言い切る。

今後の情報公開制度はどうなっていくか

 年月を重ね変化してきた情報公開制度。県への情報公開請求は条例を施行した98年度の96件から、19年度には2584件に増加しており、一定程度、制度が社会に根付いてきたと言える。

 三木理事長は、本来は行政の自発的な情報発信が重要で、情報公開制度は「誰でも使える最終手段であるべきだ」と表現する。さらに「公開・非公開は明確に白黒がつくものではなく、請求を通じて行政の判断を積み重ねていかなければならない」とも述べ、行政と住民らがともに制度を育て続けていく必要性を訴えた。(竹下世成)

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