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[E4巻頭特集]3月号

担い手への農地集積目指す愛媛の農地中間管理事業 現状と課題

2021年3月1日(月)(愛媛新聞E4編集係)

 愛媛県内の農地と農家数は減少の一途をたどっている。農業センサスなどによると、県内の農地は、1971年に8万7900ヘクタールだったが、耕作放棄による荒廃や、ほかの地目への転用で、2020年には4万7000ヘクタールに減少。総農家数も1990年に比べ2020年は半分以下に減っている。全国的にも同様の傾向で、政府は、日本農業の構造改革、競争力強化、荒廃農地の削減などを目指し、2014年度に「農地中間管理事業」(農地バンク)を導入した。各都道府県に「農地中間管理機構」を設け、担い手農業者への農地の集積を推進している。スタートから6年が経過した同事業の県内での現状と課題をまとめる。

 

 

 

【貸主―機構ー借主 3者契約で安心感】

 

 「いわば、新たな不動産会社を作った形」と、愛媛県農地中間管理機構の阿部純市事務局長が形容する。従来、農地の賃貸借は、貸主と借主の2者間で契約されてきた。農地中間管理事業では、貸したい人から機構が借り受け、借りたい人へ貸すという3者契約を結ぶ。機構が間に入り、調整することで、担い手農業者への農地集積を加速しようという狙いがある。加えて、貸借期間が終了すれば確実に返還される安心感や、所有する全農地を、同事業で10年以上貸し付けると、農地の固定資産税が一定の期間、1/2軽減されるなどのメリットもあるという。

 

 

 政府は2016年6月、「日本再興戦略」を閣議決定し、2023年までに担い手に全農地面積の8割を集積するという目標を掲げた。2020年3月末現在で、担い手への農地の集積率は、北海道で91.5%と目標を越え、北陸や東北地方では60%を超える県もある。全国平均は57.1%と徐々に増えてきている。しかし、愛媛では31.8%にとどまる。その要因とは。

 

 

 

【中山間地域の苦悩 60歳以上83%】

 

 

 愛媛の農業の現状を見ると、県内の農業地域の多くが中山間地域にあたり、小さく、分散した田畑を耕作する農家が多い。また、果樹園の多くは、傾斜地にある。2020農業センサスによると、愛媛県では耕地面積が1ヘクタール未満の農家(経営体)が6割を超えており、全国平均を10ポイント以上、上回っている。

 

 さらに、中山間地域では、若者の都会への流出、過疎、高齢化が進み、多くの農家が「跡継ぎがいない」という課題に直面。このため、愛媛県内の総農家数は、1990年に7万7277戸だったのに対し、2020年には、3万5005戸に半減した。比例するように、農地面積は、1971年に8万7900ヘクタールだったが、2020年には4万7000ヘクタールと45%に激減しており、荒廃農地は1万4126ヘクタール(2019年)に達している。農業従事者の高齢化も進み、70歳以上が56%、60歳以上となると、83%に達している。

 

 

 「高齢化して農作業ができず、跡継ぎもいない。しかし、農地を荒廃させたくない」という中山間地域の苦悩は年々高まっている。一方、借り手側は「まとまった場所で農地を借り受け、耕作したい」との希望がある。農地が分散していると、作業効率が大きく低下するためだ。

 

 

 

【基盤整備と新規就農者増がカギ】

 

 「愛媛では段々畑に形容されるように、傾斜地の土地が多く、集積のメリットが乏しい。基盤整備が進んでいない農地を数多く引き受けるとかえって非効率になってしまう」。阿部事務局長は愛媛で農地集積が進まない要因を挙げる。

 

 もう1点、認定農家などの担い手農業者もまた高齢化し、新規就農者が少ないことを挙げる。「規模拡大しようという担い手農家が手一杯になってしまい、飽和状態に達している」と指摘。県内の認定農業者数は制度発足以降、右肩上がりに増加していたが、2010年の4985経営体(うち法人289)をピークに頭打ちし、2020年は4423経営体(うち法人387)。新規就農者が少なく、担い手も高齢化している状況だ。

 

 

 このような状況を打開するため2018年、「農地中間管理機構関連農地整備事業」が新たに制度化された。「機構が15年間借り受ける」ことを条件に、農業者(貸し手、借り手)の負担金なしで、区画整理、農用地造成ができるようになった。同事業で2021年1月現在、県内13地区で事業実施(予定含む)している。松山市下難波の樹園地では、山の斜面を削り、7.3ヘクタールの樹園地の造成が進んでいる。完成すれば、担い手農家に貸し付けられる予定だ。この事業により、収益性向上や、生産コスト低減を見込む。

 

農地中間管理機構関連農地整備事業が進む松山市下難波の樹園地

農地中間管理機構関連農地整備事業が進む松山市下難波の樹園地

農地中間管理機構関連農地整備事業が進む松山市下難波の樹園地

農地中間管理機構関連農地整備事業が進む松山市下難波の樹園地

 愛媛県農地中間管理事業による農地集積実績は、2014年~20年の7年間で借り受け、転貸面積ともに計約690ヘクタール。今後は「年間100ヘクタール」を目標に掲げる。県や市町もまた、研修制度や、補助金・支援金制度などを設け、担い手農業者を増加させるさまざまな施策を打っている。

 

 

 

 第二次大戦後の農地改革によって「耕作者が農地を保有し、耕作する」という日本農業の基本スタイルが構築された。その基盤が大きく変容する時期に差し掛かっている。農業の構造変革を実現するには、いかに経済的、職業的に魅力ある産業になれるかどうかがカギとなるだろう。

 

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