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残価設定ローン、もらい事故で失った下取りの価値(西日本新聞)

2021年2月7日(日)(友好社)

事故に遭い、後部などが壊れた男性の軽乗用車。昨年購入したばかりだった(本人提供、一部修正しています)

事故に遭い、後部などが壊れた男性の軽乗用車。昨年購入したばかりだった(本人提供、一部修正しています)

 軽乗用車の購入時に5年後の残価(下取り価格)を設定し、それを差し引いた額を分割払いする「残価設定型」ローンを使った男性から、「こちらに全く非のない事故に巻き込まれ、残価が失われた」という不満の声が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に届いた。停車時に追突されたが、相手方の賠償額は修理代にとどまり、約70万円の残価を失った。特命取材班は、男性の事故の概要記事(この記事の下にあります)を本紙ウェブサイトに公開し、意見を募った。

 

 投稿名「つとむ」さんは「知人も残価ローンで買った車のドア部分をぶつけ、交換していた。このローンは万が一のときに面倒になりそうな気がする」と不安を抱く。

 

 「aki」さんは「評価額が下がった損害として認められた判例ってないんですかね。訴訟で争う余地はあると思う」と指摘した。同様に「残価の毀損(きそん)分は争うべき」とした上で「最近の保険会社は、法律に疎い被害者を軽視していないか」などと厳しいコメントも見られた。

 

 将来得られた可能性がある残価分を、加害者に賠償請求できるのだろうか。北九州第一法律事務所(北九州市)の天久(あめく)泰弁護士に解説してもらった。

 

 「残価ローンの返済中は、車両はローン信販会社や販売会社が所有しているため、評価損があっても、支払い中の使用者から加害者への損害賠償請求は当然に認められるものではない」との見解だ。

 

 一方で、賠償請求を認めた判例(横浜地裁2011年11月30日判決)も一部あるという。事故発生前、下取りに出すことを既に選択していた場合だった。

 

 天久氏は「判例からすると、なるべく早期に選択しておくことが事故への備えとしては有効だ。家族構成やライフスタイルの変化で乗り換えが必要な場合はなおさらだ」と指摘する。

 

 事故に遭った男性の場合だと、24年10月が購入から5年。その半年ぐらい前に買い替える準備に入ることを検討していたという。それに伴い、下取りに出す意思表示や契約を進めていれば、その間の事故で損害賠償が認められる可能性があるとみられる。

 

 自動車大手に聞くと、残価での下取り保証は「契約満了時にしか対応できないが、販売会社の通常の査定で、下取りして清算することはいつでも可能だ」と説明している。

 

 本紙ウェブへの投稿に戻る。「タナカ」さんは「過失がなくても運転している以上、何らかのリスクを背負っているものと思わないといけない。残価設定型にしても、必ずしも将来の(価格)保証があるわけではないことを理解したい」と投稿。天久氏も「ローンの制度や保険の仕組みについて、よく理解しておくことが大切だ」と呼び掛けている。

 

 事故に遭った男性は今も残価が失われたことに納得してはいない。ただ「私のような事例を通じ、損害賠償の在り方についてもっと社会で議論が進めばいい」と願っている。(西日本新聞)

 

【事故の概要】

 

 福岡市在住の会社員の男性は昨年6月、福岡市内で軽乗用車を信号停車中、後方の乗用車から追突された。「車に雷が落ちたような衝撃だった」と振り返る。

 

 スライドドアなど後部が破損した。購入時の新車価格は約260万円。5年後に70万円前後を残価とする残価設定型のローンを選んだ。この時点では正式に下取りに出すかどうかは決めていなかった。

 

 約130万円を頭金で支払い、60万円相当をローンで払っている最中。停車中だったことから、事故は「10対0」で相手方の責任となった。

 

 相手方の保険会社が提示したのは修理費用の約110万円。残価分が保険金に考慮されることはなかった。一方、男性が自動車販売会社に問い合わせたところ、残価が保証されるのは「無事故車」のみ。残価は失われ、このまま乗り続けた先に、男性はローンと失った残価分を全て支払うしか選択肢はなくなった。

 

 修理しても故障しやすくなっている不安もあり、男性は修理を諦めた。自分の加入保険を使い、同じような残価クレジットで別の車を購入。保険金の一部を、事故に遭った車のローン残金の返済に回した。男性は自分の保険を使ったため、保険等級が悪化したという。今後3年間の保険料が総額約12万円増えるが、自分で負担するしかない。

 

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