愛媛新聞ONLINE

2021
421日()

新聞購読
新規登録
メニュー

愛GIVER project

がん理解へ最新知見 四国がんセンター講演会

2021年2月4日(木)(愛媛新聞)

 がんの正しい知識や治療法への理解を深める講演会「がんと共に生きる」(四国がんセンター主催、愛媛新聞社共催)の収録が1月18日、松山市南梅本町の同センターであり、センターの医師3人が放射線治療や乳がんの遺伝、術後の乳房再建といったテーマで最新の知見を解説した。2月6日から愛媛CATVなどで放映される講演の要旨を紹介する。

 

 

 

【遺伝性の診療 重要に 若年から特別な検診を】

 

【がん診断・治療開発部長 大住省三さん(63)】

 

「予防や早期発見に加え、治療の面からも遺伝性乳がんの診療が重要」と語る大住省三さん

「予防や早期発見に加え、治療の面からも遺伝性乳がんの診療が重要」と語る大住省三さん

「予防や早期発見に加え、治療の面からも遺伝性乳がんの診療が重要」と語る大住省三さん

「予防や早期発見に加え、治療の面からも遺伝性乳がんの診療が重要」と語る大住省三さん

 一般的には放射線や発がん物質、活性酸素など体外のものが正常な細胞をがん細胞に変えていくことが多いが、がん患者の5~10%はがんを起こしやすい体質。「遺伝性腫瘍」と呼ばれ、ほとんどが一つの細胞に二つあるがん抑制遺伝子の生まれつきの異常が原因だ。遺伝子の両方が壊れるとがん細胞に変わるが、片方が壊れた状態で生まれた人は、がんになりやすい。

 

 遺伝性腫瘍は若い年齢で発生しやすく、一つの臓器に複数、あるいは複数の臓器に別のがんができるという多重性も特徴だ。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は乳がん患者の3~5%で、80歳までに70%の確率で乳がんにかかる。

 

 対策としては、25歳という若い年齢から磁気共鳴画像装置(MRI)を使うなどの特別な検診がメインで、米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんのように予防的に乳房と卵巣を切除する方法もある。

 

 四国がんセンターでは、遺伝的腫瘍を見つけ出すシステムをつくっている。入院中に患者の家族の病歴を聴取して疑いのある家系を見つけ、場合によっては血液を使って遺伝子を調べる。異常がある人には検診や予防的手術を行い、血縁者にも遺伝子検査を勧めている。重要になるのがカウンセリングで、遺伝のがんの詳細や対策、選択肢を説明し、不安を持った方の心理面にも対応している。

 

 予防や早期発見に加え、治療の面からも遺伝性乳がんの診療が重要となってきた。「PARP」という酵素を阻害する薬を使うと、遺伝子変異のあるがん細胞は傷を治せなくなり、死に至る。日本でも承認され、化学療法歴や遺伝子変異などがある乳がん患者らに投与できる。

 

 がんゲノム医療は、遺伝と無関係のがんを対象とした医療。再発・転移のある患者のがん細胞を調べ、どの遺伝子が異常を起こしたかを明らかにして治療薬を見つける。この治療法で、遺伝的ながん体質が分かることもある。今後、遺伝性腫瘍の患者が多く見つかると思われ、血縁者のがん予防も非常に重要となる。

 

 

 

【効果向上副作用も減 免疫療法追加「標準」へ】

 

【放射線治療科医師 浜本泰さん(56)】

 

放射線や粒子線によるがん治療の最新の動向や知見を紹介する浜本泰さん

放射線や粒子線によるがん治療の最新の動向や知見を紹介する浜本泰さん

放射線や粒子線によるがん治療の最新の動向や知見を紹介する浜本泰さん

放射線や粒子線によるがん治療の最新の動向や知見を紹介する浜本泰さん

 放射線治療は、手術や抗がん剤と並ぶがん治療の柱。体の形態や機能を温存しやすく、体内の奥深い部分の病巣も切らずに治療でき、高齢者や体力の弱った人にも負担なく行える利点がある。高精度化で効果が高まり、副作用は減っている。免疫療法の併用も効果的で研究が進んでいる。

 

 高精度放射線治療の一つ「定位照射」は、少数の小さながん病巣に多方向から少しずつ、ピンポイントで弱い放射線を照射していく方法。ビームが集中した部分だけ強い放射線になるため、腫瘍の部分だけ、がん細胞を一気に殺す。早期の肺がんの局所制御率は80~90%で、不必要にほかの正常な部位を傷めることがなくなった。

 

 強度変調放射線治療(IMRT)は、機器の放射口の絞りをコンピューターで動かしながら放射線を調節し、患部に集中的に当てる。四国がんセンターにある機器「リニアック」は、あらかじめ入力した腫瘍の情報をコンピューターが認識し、患部にぴったりと合った放射線ビームを出す。照射直前に付属のコンピューター断層撮影(CT)で位置がずれていないかを再度確認して治療ができる。

 

 昔ながらの放射線治療と異なり、腫瘍のある場所以外に強い放射線が当たらないため副作用や後遺症がかなり軽くなり、治療後の患者の生活が変わってくる。

 

 粒子線治療は、陽子や炭素に強い電圧をかけ、超高速にしてがんにぶつける方法。エックス線と異なり設定した深さの所で止まるのが利点で、病変の裏側にある正常組織を傷めにくい。陽子線の強さはエックス線と同じぐらいで、重粒子線はエックス線よりも強い。放射線に弱い臓器に近いがんや小児がんなどに有効だ。

 

 免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法は、正常細胞になりすましたがん細胞の隠れみのを剥ぎ取る。免疫細胞が、がん細胞を認識して攻撃できるようになり、患者自身の免疫の力でやっつけることができる。放射線治療との併用が最近話題になっており、治療後に免疫療法を追加すると生存率の向上が見られ、標準治療になりつつある。

 

 

 

【再建で生活の質向上 リンパ浮腫 肌ケア徹底】

 

【形成外科医師 山下昌宏さん(41)】

 

乳房の再建方法やリンパ浮腫のケアポイントを解説する山下昌宏さん

乳房の再建方法やリンパ浮腫のケアポイントを解説する山下昌宏さん

乳房の再建方法やリンパ浮腫のケアポイントを解説する山下昌宏さん

乳房の再建方法やリンパ浮腫のケアポイントを解説する山下昌宏さん

 乳がんで乳房を切除した患者への対応に「再建」という方法がある。失ったふくらみを取り戻し、生活の質を上げることが目的で、乳房を失う喪失感の軽減などが期待できる。

 

 再建のタイミングには、乳房切除手術と同時に再建手術を行う1次再建と、ある程度期間をおく2次再建がある。1次は手術回数が減るので経済的・身体的負担を少なくできる。2次は乳がん治療が落ち着いてからゆっくり検討でき、それぞれにメリットがある。

 

 再建方法は2種類。自分の背中や腹部の皮膚を使う「自家組織再建」は、自分の組織を使うため柔らかさや形が自然になる。一方、体の別の場所に大きな傷ができ、手術時間も長くなるデメリットがある。

 

 人工物を使う再建では、ティッシュエキスパンダー(TE)と呼ばれる組織拡張器を初回の手術で胸の筋肉の下に挿入。徐々に生理食塩水を入れて膨らませ、皮膚や組織を伸ばす。2回目の手術でTEをシリコン製の人工乳房(シリコンブレストインプラント)に入れ替え、形を整える。手術時間が短く体の部位の犠牲はないものの、人工物の破損がないか定期的にフォローすることが必要になる。

 

 乳がんの手術では、脇のリンパ節を切除する場合があり、リンパ液の流れが悪くなることでリンパ浮腫に悩む人も多い。浮腫は慢性進行性のため、治すというよりも病気と付き合いながらより良い生活を目指す考えのもと、治療していくことになる。

 

 治療は、スキンケアや弾性着衣を使用した圧迫療法などの複合的理学療法と日常生活の管理を組み合わせていく。浮腫になると乾燥やひび割れで細菌が侵入しやすくなるため、スキンケアで保清、保湿、保護を徹底する。日常生活で擦り傷や虫刺されなどに注意することも重要だ。

 

 リンパ管細静脈吻合(ふんごう)術といった手術療法もあり、顕微鏡下で直径0・5ミリほどのリンパ管と細静脈をつなぎ、リンパ液の通り道を作る。そうすることで皮膚の質感や、浮腫部位の周径が改善できる見込みがある。

 

    <プレスリリース>一覧

    愛媛の主要ニュース

    トップ10ニュース

    愛媛の情報なら、愛媛新聞のアプリ。

    欲しい情報をいつでもあなたにお届け!プッシュ通知機能も充実。