2020年 年末回顧
県内芸能 公演中止や延期相次ぐ
2020年12月28日(月)(愛媛新聞)
2020年の県内の芸能分野にも新型コロナウイルスの影響が色濃く影を落とした。感染拡大が顕著になった3月ごろからは芸能・舞台芸術公演の中止や延期が相次ぎ停滞ムードに覆われた。
愛媛発のガールズバンド「たけやま3・5」はリーダーの武田雛歩が2月の愛媛マラソンに挑戦するなど、東京の事務所への移籍後も音楽にとどまらない活動を見せた。
【先行き不透明】
松山市の小劇場シアターねこでは3~7月の公演がキャンセルに。客席制限や換気など対策を講じ、支援公演なども行われたが先行きは今も不透明な状況だ。
東温市見奈良の坊っちゃん劇場は新作ミュージカルの開幕を2度延期し、21年8月まで公演期間を延ばした。作品をDVDや高精細の8K映像で展開。11月に開館以来の入場者数100万人を突破する明るい話題もあったが県外公演の中止など厳しいかじ取りが続く。
音楽シーンでは県内のライブハウスも営業を自粛。クラウドファンディング(CF)や別事業でしのいできたが再開後も厳しい状況で、6月に県内16店が独自のガイドラインを作り県に支援を求めた。アーティストの公演も中止・延期が相次いだ。
ご当地アイドル「ひめキュン フルーツ缶」が結成10年を迎えた。インディーズの2代目が躍進を誓う。西条を拠点に活動するシンガー・ソングライターのレーモンド松屋もメジャデビュー10周年。70歳を目前に年齢を感じさせない楽曲制作を続け、オンラインでの発信にも挑戦している。
【映画祭見送り】
映画関係では1~2月に第1回愛媛国際映画祭があり、県内10市町で俳優、監督らを招いた作品上映などを実施。県によると来場者総数は計約1万1千人だった。新型コロナの影響で第2回の本年度開催は見送られた。砥部町出身の大森研一監督の「未来へのかたち」が公開を延期した。
新型コロナが直接の原因ではないが、来場者減少を理由に「シネマサンシャイン大街道」が21年1月で閉館する。松山市の中心市街地にはミニシアターの「シネマルナティック」を残すのみとなる。
済美高校出身の高岸宏行と前田裕太のお笑いコンビ「ティモンディ」がテレビや動画投稿サイトなどで活躍し、暗くなりがちな世の中に笑いを提供していた。
人形浄瑠璃文楽の太夫で人間国宝の豊竹嶋太夫(松山市出身)と刑事ドラマ「太陽にほえろ!」で人気を集めた俳優宮内淳(松前町出身)が8月に、即興演奏の世界的ジャズトランペット奏者近藤等則(今治市出身)が10月に亡くなった。
暗雲が垂れ込める中、業界でひときわ目立ったのがオンラインを活用した練習や発表。苦肉の策とみる向きもあるが、表現の幅を広げる動きにつながったことは間違いない。感染対策や発信方法の模索など「今できること」が各ジャンルの糧になることを期待したい。