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この人の物語 えひめ

第1部 病と共に<6>明日を信じて恩返し

2020年5月28日(木)(愛媛新聞)

「QOL(生活の質)を考える上で大切なことを五つ挙げてください」。毎年の聞き取り調査で秋山智教授(左)の質問に答えるうちに、岡田行美さんの心の中も整理され、自分を見つめ直すきっかけになる

「QOL(生活の質)を考える上で大切なことを五つ挙げてください」。毎年の聞き取り調査で秋山智教授(左)の質問に答えるうちに、岡田行美さんの心の中も整理され、自分を見つめ直すきっかけになる

 〓今はただ ただひたすらに 明日を信じて 生きていこうよ

 県内のパーキンソン病患者が定期的に集まる交流会。「テーマソングがあればいいね」という声に応えて、2007年、岡田行美さん(70)=松山市=が「若者たち」の替え歌で作詞した。毎年のクリスマス会では、岡田さんが寸劇をやろうと提案、7年ほどシナリオを担当した。病に苦しめられながらも、何か楽しいことを企画するのが好きだった。

 趣味だったピアノは、もう弾けない。コーラスもできなくなった。代わりに最近、通っている教会でオカリナを習い始めた。腹式呼吸でしっかり息を吐くのは難しいが「ぼけ防止のためにも、何かやってないとね」と笑う。

 そんな岡田さんの元を、約15年前から年に1度、訪れる人がいる。広島国際大看護学部の秋山智教授(59)。若くしてパーキンソン病を発症した患者約60人を全国に訪ね、聞き取り調査をしている。

 秋山教授が若年患者に目を向けるきっかけになったのが、岡田さんだった。03年、県内で開かれた会合で岡田さんが登壇。仕事を持つ身として「困るのは、お化粧ができないこと」と話した。それまでお年寄りの患者ばかり見てきた秋山教授にとって、まさに「目からうろこ」の衝撃だった。

 45歳の時、パーキンソン病と診断した医師とは、心が通わなかった。窮地を救ってくれたのは、当時勤めていた特別養護老人ホームを定期的に訪れていた別の医師。01年に出版した岡田さんの手記「頑張らないで」が千部に増刷された時は、「少なくとも千人の読者に対して、生き抜くという責任が生じましたね」と励ましてくれた。

 現在も市内の総合病院に、月1回通院している。今の主治医は「穏やかで、ぶっきらぼうに話す中にも優しさが感じられる人」。岡田さんが以前、救急搬送され入院した時は、毎朝、診察前に様子を見に来てくれた。昨年11月、70歳の誕生日を迎えた岡田さんは「古希になり、これからは『おまけの人生』ですね」と、おどけてみせた。すると主治医から「『おまけ』ではなく、これまでお世話になった方に恩返しする人生でしょう」と返された。

 そうか、恩返しか…。病のため、つらいこともあったが、思いがけず人の優しさに触れたこともあった。恩返し、不自由なこの体で何ができるだろうか。進行性の難病、日常生活でできないことが徐々に増えてきた。いつかは、体が全くいうことを聞かなくなる日が来るかもしれない。だからといって、甘えてはいけない。もう少し前を向いて生きていこうか。明日を、信じて。

=第1部おわり

☆〓は歌記号

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