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陸上「軽量化」の陰で 女子アスリートと健康

<上>リスク 骨密度低下 摂食障害も

2020年3月28日(土)(愛媛新聞)

女子アスリートに広がる軽量化の危険性を訴える大阪学院大の山内武教授=2月、大阪府

女子アスリートに広がる軽量化の危険性を訴える大阪学院大の山内武教授=2月、大阪府

 陸上の長距離ランナーが体重や体脂肪率を大きく落として競技力を向上させる「軽量化」。好記録につながる一方、特に10代の女子アスリートにとって過度な食事制限を伴う減量は健康被害のリスクが高いとされ、教育現場での採用に警鐘を鳴らす専門家もいる。松山大女子駅伝部の複数の部員が昨年11月、当時の監督からパワハラを受けたなどと大学に申し立てた問題でも、背後に体重調整を巡るあつれきが透けて見える。陸上界の現状を問う。

 

 県外在住の女性は電話口で、西日本の大学を今春卒業したという娘の身の上について怒気をにじませながら話し始めた。

 練習は一年を通じて過密なスケジュールで、監督から過度な食事制限も強いられたという。「娘は半年以上、無月経の状態が続き、体や顔がむくみ、疲労骨折で大会にも出られなかった」

 大学3年で他の部に移った。「体重が増えることは許されず、周りにはつぶされて辞めてしまう選手がたくさんいた。顔面神経痛に悩まされたり、摂食障害の人もいたり。才能を生かすのも、つぶすのも指導者」と女性は憤る。

 心身をむしばまれる女子アスリートがいる。なぜ過酷な減量が求められるのか。

 スポーツトレーニングが専門の大阪学院大の山内武教授は「長距離走に必要な要素の一つが心肺機能に関わる有酸素性パワーで、最大酸素摂取量が代表的な指標となる。自動車の排気量に似ているが、トレーニングによる増加はある程度で頭打ちとなる」と説明。そこで有効な手段として登場したのが、「車体」となる選手自身の軽量化だ。

 一般的に男性より体脂肪がつきやすいとされる女性は、運動量を増やすだけでなく食べる量を減らして体を絞り込むことになる。1989年、全国高校駅伝に女子の部が設けられ、90年代から若年層の指導でも本格化したという。

 ただ、特に若い女性が長期的に軽量化を続けた場合、運動性無月経となり女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下、骨密度が低くなる恐れがある。頻繁に疲労骨折を発症し、けがの回復も遅くなる。一度骨密度が下がれば、健康な人のレベルに戻ることは難しく、骨粗しょう症など一生涯にわたる健康被害を招くことになると山内教授は解説する。

 とりわけ食事制限は貧血を引き起こすだけでなく、摂食障害の危険性も増し、精神疾患である窃盗症(クレプトマニア)につながるケースも。山内教授は「半年以上の長期の無月経状態は、競技よりも医療が優先。骨密度がピークに達する20歳までは軽量化を採用すべきではないし、少なくとも教育機関で行うべきではない」と考える。

 一時的に競技力は向上しても、選手の将来を脅かしかねない軽量化は「よく効く代わりに副作用が強すぎる劇薬」。山内教授は「不健康な人を多く生み出す。結果的に日本の競技力を低下させる原因になる」と警告している。

 

 陸上競技の女子選手の軽量化について、ご意見をお寄せください。郵便番号790-8511(住所不要)愛媛新聞社スポーツ・映像報道部▽ファクス089(931)4362▽電子メールundou@ehime-np.co.jp▽なるべく居住市町、年齢、性別をお書き添えください。

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