県高校サッカー
今治東、悲願の頂点 FKから決勝点 新田振り切る
2019年11月3日(日)(愛媛新聞)
サッカーの第98回全国高校選手権県大会最終日は2日、県総合運動公園ニンジニアスタジアムで決勝を行い、今治東が新田を1-0で下し、初の全国大会出場を決めた。
大会最優秀選手には、今治東で4得点を挙げるなどして攻撃の中心となった山中建斗を選出。5得点をマークした今治東の高瀬太聖が得点王になった。優秀選手には今治東と準優勝の新田から最多の各4人が選ばれた。
全国大会は組み合わせ抽選会が18日に東京で行われ、12月30日に開幕する。
【評】今治東がセットプレーで決勝点を挙げて競り勝った。
前半はボールを持つ今治東と、ゴール前への侵入を防ぐ新田のせめぎ合いとなり、展開は膠着(こうちゃく)。両チーム合わせてシュートは計3本にとどまった。
後半開始から今治東が連続でチャンスをつくり、28分に長井のFKに山中が頭で合わせて先制した。新田は前線の福井をターゲットにロングパスを送って反撃を狙ったが、抑え込まれた。
◆よく我慢した◆
【今治東・谷監督の話】 苦しかった。選手がよく我慢して、最後までやり抜いてくれた。お互いが硬い状況で始まったが、出し惜しみしないことをテーマに後半は戦った。一瞬のチャンスを逃さずに決めてくれた。
◆全国で結果を◆
【今治東・高瀬選手】(5得点で得点王)「得点王は一つの目標だったので、獲得できて良かった。自分の力というより、チームが取らせてくれたゴールばかり。今日も決めたかったが、また全国大会で結果を出したい」
◆精いっぱい走った◆
【新田・小野監督の話】 ボール保持される展開は想定内。少ないチャンスをものにする狙いだった。今治東にスペースを与えず、精いっぱい走って頑張った。ベストを尽くしても結果が付いてこないのがスポーツの厳しさ。
◆仲間に感謝◆
【新田・三好主将】(0―1の敗戦に)「チーム発足時はここまで来られるとは思わなかった。1年間ついてきてくれた仲間に感謝の気持ちしかない。今治東とは何度も戦っており、FWの速さとシュート力を警戒していた」
【際立つ集中力 最後まで 初優勝の今治東】
「ずっと『永遠の優勝候補』と言われて。先輩が流した涙に、やっと恩返しができた」(大谷主将)。2013年から通算3度目の決勝。激闘を終え、選手たちの目からこぼれたのは、初めてのうれし涙だった。あと一歩で逃し続けてきたタイトルを、今治東がついに手にした。
大会を通じて際立ったのは、眼前の試合に懸ける集中力だった。立ち上がりから緊迫した大一番でも、勝負を分けた後半28分にそれが凝縮されていた。
左サイドで山中がボールを持つ。1対1の場面で仕掛けたドリブルは新田の主将・三好に阻まれた。いったんボールを奪われたが、10番を背負う男はそこでプレーを途切れさせなかった。
「相手は奪ったボールをすぐに前線へ当ててくる。自分のミスからピンチにはしたくなかった」と山中。直後にプレスを開始し、パスを体に引っかけた。そのまま三好ともつれ込み、絶好の位置でFKを勝ち取った。
キッカー長井も嗅覚を研ぎ澄ませていた。「いつもならファーサイドだが、今日は相手がそこに固まっていた。なら逆を突こうと思った」。とっさの判断でニアへ放ったクロスに、あうんの呼吸で山中が反応。フリーで頭を合わせ、値千金の1点を勝ち取った。
同じ顔合わせになった6月の県総体決勝で敗退。失意の中、夏は地味な走り込みに「死に物狂い」(大谷)で打ち込んだ。この大会は近場でも試合前日に宿泊。準備に一日の全てをささげることで、あらゆる不安要素を振り払おうとした。
その積み重ねが、途切れることのない集中力に結実した。「自分たちのプレーができれば勝てると信じていた。互いが信頼し合ったから最後に勝てた」と岡本。泣いて、悩んで、それでも一歩ずつ進んだ。やっと「最強」にたどり着いた。
【耐えて粘ってベストゲーム 新田】
「個々の能力では上回られている」と認める今治東を相手に、成長した姿を示した新田イレブン。「自分たちの良さの粘り強さを見せた。負けた悔しさはあるが、今年のベストゲームだった」。試合後、小野監督はうっすらと涙を浮かべ、ねぎらいの言葉をかけた。
同じカードだった県総体決勝。一方的に押し込まれながらCKからの1点を守りきって勝利した新田は今回、長短のパスを使い分け、サイドを起点に試合を組み立てた。
中盤と最終ラインで網を張り、狙い通りサイドに展開して攻め上がったが、前線の福井が「常に2人のマークに付かれた」とポストプレーに苦しんだ。それでも前半18分、福井がマークを引きつけて中田がシュートに持ち込む得意の形でゴールを脅かした。
守備でも波状攻撃に耐え、野本は「手応えを感じていた」という。それだけにセットプレーでマークを外してしまい、失った1点が「狙っていた形を逆にやられた」(小野監督)とチームに重くのしかかった。
紙一重で頂点を逃し、涙に暮れるロッカールームで舛田は声を絞り出して後輩に伝えた。「わずかなミスが勝敗を分けた。この試合を教訓に、普段から気を引き締めて練習してほしい」