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9月1日防災の日

どの段階でどう動くか 防災対応「タイムライン」に注目

2019年9月1日(日)(愛媛新聞)

 

肱川が氾濫し浸水した大洲市東大洲地区=7日午後(小型無人機で撮影。大洲市提供)

肱川が氾濫し浸水した大洲市東大洲地区=7日午後(小型無人機で撮影。大洲市提供)

肱川が氾濫し浸水した大洲市東大洲地区=7日午後(小型無人機で撮影。大洲市提供)

肱川が氾濫し浸水した大洲市東大洲地区=7日午後(小型無人機で撮影。大洲市提供)

 豪雨災害が頻発する中、防災対応を時系列でまとめる「タイムライン」(防災行動計画)が県内外で注目を集めている。地震のように突然発生する災害と異なり、水害は降雨から災害発生までに猶予時間があるので、危機の迫る前に関係機関が連携して適切な防災対策を取り、逃げ遅れゼロと被害軽減を実現するのが狙いだ。1日は「防災の日」。県や市町、消防などだけでなく、自主防災組織や家族単位でもタイムラインの活用が始まっており、各地の取り組みを紹介する。

 

【豪雨教訓 作成進む県内 自治体や消防連携 河川氾濫対策が軸に】

 県内では国の方針に沿い、県や市町、消防などが河川の氾濫対策を中心としたタイムライン作成を進めている。県などによると8月23日現在、県内の全ての国管理河川と、県管理河川の13区間で地元の防災関係機関がタイムラインを作っている。

 未作成の県管理河川の中にも、地元自治体が「氾濫すれば大きな被害が出かねない」と懸念する川が複数ある。県は今後、氾濫時の損害規模などを検討した上でそれらの川を水位周知河川に指定して浸水想定区域図を作り、タイムライン作成も推進する方針だ。

 2018年7月の西日本豪雨では県内の複数の自治体が想定を上回る事態に混乱して後手に回った。松山地方気象台やダムを管理する国土交通省と危機感を共有できず、避難勧告などを出すのが遅れたケースもあった。大きな被害の出た肱川流域では教訓を踏まえて国や県、大洲、西予両市、消防などが合同でタイムライン策定作業を進めている。

 一方、家族単位などで「マイ・タイムライン」を作る講座も開かれるようになっている。8月18日には伊予市灘町の公民館で、地元自主防災会が台風対策に主眼をおいたマイ・タイムライン講座を開いた。

 市職員や防災士が講師を務め、子どもからお年寄りまで約60人が班別で避難のタイミングなどを話し合った。参加した自営業、玉岡義規さん(63)は「災害が少ないので意識が低かったかも。災害リスクを考えるいいきっかけになった」。市町の多くがマイ・タイムラインを前向きに捉えており、県内でも浸透しそうだ。

 

至る所で斜面崩壊が見られる宇和島市吉田町白浦地区=12日正午ごろ(小型無人機で撮影)

至る所で斜面崩壊が見られる宇和島市吉田町白浦地区=12日正午ごろ(小型無人機で撮影)

至る所で斜面崩壊が見られる宇和島市吉田町白浦地区=12日正午ごろ(小型無人機で撮影)

至る所で斜面崩壊が見られる宇和島市吉田町白浦地区=12日正午ごろ(小型無人機で撮影)

 

【「進行型」の災害に有効 台風や豪雨 関係機関 シナリオ共有】

 タイムラインは地域で起こりうる典型的な災害に対して「いつ、誰が、何をするか」を時系列でまとめた計画。米国のハリケーン対策を参考に国内に導入され、全国各地の市町村などが防災対策に生かしている。

 有効なのは台風や豪雨などの「進行型」の災害。雨の降り始めから河川氾濫や土砂崩れが発生するまでには猶予時間があり、各機関の取るべき対応を事前に定めておけば効率よく活動できるためだ。同じ進行型災害の大雪などにも利用できる。

 地震など突発的に起こる災害の事前対策には向かない。ただ地震では、被災者の生存率が著しく下がる「発生後72時間」までの救助計画にタイムラインを応用する方法もある。

 地域でタイムラインを作成する際は県や市町、消防、警察など防災関係機関が集まり、どんな災害がどういったシナリオで起きるかを議論して共有。犠牲者ゼロと被害軽減を目指して災害の起きる「3日前」「24時間前」「12時間前」などの各段階で、それぞれの役割と連携の仕方を議論して決める。実際の災害は想定通りに進まないことや最悪の事態も念頭に置いて検討する。

 タイムラインの効果は、参加機関が「顔の見える関係」になり連携が円滑化▽危機意識の共有▽役割分担が明確になって縦割り行政の弊害を解消▽想定外の事態にも比較的余裕を持って対応可能▽災害時にチェックリストとして活用することで防災行動の漏れを防止―といった点が挙げられる。

 近年は自主防災組織や家族単位で「マイ・タイムライン」を作る取り組みも広がりつつある。毎年のように大規模な豪雨災害が発生する中、避難勧告が出ても住民がなかなか逃げないことが大きな課題となっており、避難意識を高めるツールとしても期待されている。

 

災害への備えを話し合う教諭ら=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

災害への備えを話し合う教諭ら=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

災害への備えを話し合う教諭ら=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

災害への備えを話し合う教諭ら=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

 

茨城県常総市の小学校教諭が作ったタイムライン。学校が避難所になった状況も想定した=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

茨城県常総市の小学校教諭が作ったタイムライン。学校が避難所になった状況も想定した=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

茨城県常総市の小学校教諭が作ったタイムライン。学校が避難所になった状況も想定した=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

茨城県常総市の小学校教諭が作ったタイムライン。学校が避難所になった状況も想定した=8月22日午前、茨城県常総市の岡田小学校

 

【浸水時間「こんなに」 常総市 学校で指導者向け研修会 被害想定や行動と手順 教材使い各人熟考】

 マイ・タイムラインの先進地、茨城県常総市では小中学校で児童生徒に作成方法を伝えている。8月22日、同市の岡田小学校で指導者向け研修会があり、教諭24人が挑戦したマイ・タイムライン作りに密着した。

 講師の市防災危機管理課職員が持参したのは教材「逃げキッド」。一般財団法人河川情報センターのホームページなどで入手可能で、台風などの風水害を想定している。

 教諭は台風発生から川の氾濫までの3日間の計画作りに取りかかった。まず学校周辺の浸水想定区域図を見て浸水の継続時間や、どの程度の深さになるかを調べる。

 「こんなに長いのか」。スクリーンに学校周辺の浸水想定が表示されると、教諭は驚きつつ「浸水深0・5~3メートル」「浸水継続時間168時間」と書き込んだ。避難所の場所、移動に何分かかるかなどもチェックした。

 浸水想定が何日間で、何ミリの雨を想定しているかもポイント。通常、ハザードマップなどに記載されている。大雨の際、気象台などが発表する累積雨量と降雨の予測を把握すれば、いつ、どの程度の災害が起きるかが推測できる。

 次に講師は災害前の備えを書いたシールや付箋を時系列に並べるよう求め「推奨される順番はありますが、個人個人で環境が違うので正解はありません」とアドバイス。教諭は「避難しやすい服装に着替える」「川の水位を調べ始める」などと書いて逃げキッドに貼り、見比べながら意見を交わし合った。

 最後に気象情報や氾濫危険情報の発表時間に沿って、シールなどに書いてある防災行動を取るタイミングを熟考。教諭は「携帯電話やモバイルバッテリーの充電は必須」「避難が始まると教員は寝られなくなるので仮眠も要る」などと議論しながら、それぞれ必要と考えた対策を書き込んだ。

 昨年も作ったという教諭の秋元あさひさん(28)は「やり直して新たな気付きもあった。1回作ったからいいというものではなく見直すことが大事」と語る。同校で近く開かれる講座では、児童と保護者が一緒にマイ・タイムラインを作る予定だ。

 

国交省下館河川事務所や常総市などが普及を進めるマイ・タイムライン教材「逃げキッド」

国交省下館河川事務所や常総市などが普及を進めるマイ・タイムライン教材「逃げキッド」

国交省下館河川事務所や常総市などが普及を進めるマイ・タイムライン教材「逃げキッド」

国交省下館河川事務所や常総市などが普及を進めるマイ・タイムライン教材「逃げキッド」

 

【環境に応じ自分で設定 浸透図るリーダー制度も 15年に鬼怒川決壊 茨城・常総市 「マイ・タイムライン」普及に力】

 2015年9月の関東・東北豪雨による鬼怒川の堤防決壊で茨城県常総市などは広範囲に浸水被害を受けた。同市を含む鬼怒川流域の防災関係機関はタイムラインを整備する傍ら、住民一人一人の防災意識向上につなげようとマイ・タイムラインの普及に取り組んでいる。

 鬼怒川の堤防決壊では避難の遅れや避難者の孤立が目立った。自衛隊や消防などによる救助者は約4300人に上り、国や茨城県、鬼怒川流域の市町は「逃げ遅れゼロ」を目標に緊急対策を始めた。

 その対策の一つがマイ・タイムラインの取り組みを広げる「みんなでタイムラインプロジェクト」。常総市は「自治体のタイムラインに住民一人一人にマッチした情報や行動が必ずしも記載されているとは限らない。それぞれの環境にあったマイ・タイムラインが必要」とする。

 16年11月から常総市の2地区で検討会を計5回開催し、大勢の住民がマイ・タイムラインを作成。学校では小中学生向けに作られたマイ・タイムライン教材「逃げキッド」を活用して防災講座を行っている。

 逃げキッドは避難のタイミングを学ぶことに特化した教材で、授業時間に合わせて45分間で簡易なマイ・タイムラインを作れるようにしてある。子どもが持ち帰って保護者に伝える効果も見込んでいる。

 プロジェクトのもう一つの柱が18年11月に始めた「マイ・タイムラインリーダー」制度。作り方を教えられる人をリーダーに認定するもので普及活動の一翼を担ってもらうのが狙い。これまでに約250人が認定され、経験に応じて講師や補助役を務めている。国土交通省関東地方整備局下館河川事務所の永井一郎調査課長は「逃げるタイミングを把握し、災害への危機感を強めてもらえれば」と期待している。

 

「タイムラインは作成する課程が大事だ」と説明する東京大大学院の松尾一郎客員教授=8月22日午後、東京都新宿区

「タイムラインは作成する課程が大事だ」と説明する東京大大学院の松尾一郎客員教授=8月22日午後、東京都新宿区

「タイムラインは作成する課程が大事だ」と説明する東京大大学院の松尾一郎客員教授=8月22日午後、東京都新宿区

「タイムラインは作成する課程が大事だ」と説明する東京大大学院の松尾一郎客員教授=8月22日午後、東京都新宿区

 

【東京大大学院客員教授 松尾一郎氏(防災行動学) 住民側に逃げる仕組みを 作る過程の議論大事】

 タイムライン研究の第一人者で、県内でも策定作業をリードする東京大大学院の松尾一郎客員教授(防災行動学)に効果などを聞いた。

 

 -一口にタイムラインといってもさまざまな種類がある。

 自治体を中心に気象庁や河川管理者などで作る「多機関連携型タイムライン」。町内会などを軸に民生委員や消防団などが地域の避難ルールを決める「コミュニティータイムライン」。家族単位などのタイムライン。どれか一つ作ればいいのではなく、いずれも重要。それぞれ連動する必要がある。

 例えば行政がいくら適切に避難を呼び掛けても、住民側に逃げる仕組みがなければ意味がない。地域や家族でタイムラインを作れば「危険かもしれないと気付いて被害を想像し、正しい判断で行動する」という流れができる。

 

 -作成のポイントや平時も含めた活用の仕方は。

 参加者が話し合い、合意する過程が大事だ。従来の防災対策は行政のトップダウンが多く、住民が動く仕組みになっていなかった。今後の防災はボトムアップでなければならない。

 作った後は出水期の前に訓練し、台風シーズンが終わる11月に、その年の対応を振り返る。仮に災害がなくても年2回は使うことになる。毎年試して検証し、改善することが大事だ。

 

 -西日本豪雨で大きな被害が出た肱川流域の緊急対応タイムライン策定部会長を務めている。国や大洲、西予両市などが合同で作成する狙いは。

 肱川は河川管理者が区間によって違う。西日本豪雨では堤防が被災した所もある。関係機関が情報共有しなければ絶対に市は対応できない。

 9月に案を提示して台風などで使ってもらい、ブラッシュアップしていく。西予市野村地域など肱川の一部区間で作成されているタイムラインとも連動する形にすればいい。内子町や伊予市など今は入っていない流域自治体も加えたい。

 

 -どうすればタイムラインは普及するか。

 先進地の三重県紀宝町はやる気がある地区をモデルケースにして広げた。高知県大豊町では何度も使うことで周辺地区が可能性と効果を知り始めた。法律で義務化できればいいが、知事や市町長らトップの「広げていくぞ」という強い思いが推進力になる。

 

 

 

 

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