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主体的な学び 方法探る

宇都宮で第24回NIE全国大会

2019年8月29日(木)(愛媛新聞)

大村はまさんの実践を紹介する苅谷夏子さん=1日、宇都宮市

大村はまさんの実践を紹介する苅谷夏子さん=1日、宇都宮市

白〓大学の渡辺裕子さん(中央)が考案した「つぶやきNEWSッス」のわいわいタイムでは、初めて顔を合わせた教員たちが積極的に発言していた=2日、宇都宮市 ☆〓は鴎のメが品

白〓大学の渡辺裕子さん(中央)が考案した「つぶやきNEWSッス」のわいわいタイムでは、初めて顔を合わせた教員たちが積極的に発言していた=2日、宇都宮市 ☆〓は鴎のメが品

クマ出没情報の小さな記事に色ペンや付箋で連なる「つぶやき」

クマ出没情報の小さな記事に色ペンや付箋で連なる「つぶやき」

児童生徒や記者らが意見交換したパネルディスカッション=1日、宇都宮市

児童生徒や記者らが意見交換したパネルディスカッション=1日、宇都宮市

津吉優樹教諭

津吉優樹教諭

森朗教諭

森朗教諭

松本直美教諭

松本直美教諭

 第24回NIE(Newspaper In Education/教育に新聞を)全国大会が1、2の両日、宇都宮市で「深い対話を育むNIE」をテーマに開かれた。2020年度から順次始まる新学習指導要領「主体的・対話的で深い学び」を見据え、教員や新聞社の関係者ら約1100人が講演やワークショップを通して、教育現場での新聞活用法を探った。大会内容の一部を紹介する。

 

◆子どもたちに言葉の力 新聞使い「表現比べ」もの考える処方示す◆

【講演「NIEの先達 大村はま」 苅谷夏子さん】

 戦後の国語教育をけん引した大村はまさん(1906~2005年)。戦争の反省に立ち、複雑な世界を生きる子どもたちに言葉の力をつけようと奮闘した。大村さんの教え子であり「大村はま記念国語教育の会」事務局長を務める作家・苅谷夏子さんが大村さんの実践例を紹介しながら、現代を生きる私たちにとっても指針になると言及した。

 複雑な世界をつかもうとするときに手がかりとなるのは「言葉の力」だ。この複雑な社会で生きていくために、子どもたちを一人前の言語生活者として世に送り出そうとしたのが大村はまだ。

 大村は戦後、一面焼け野原の東京で新制中学校に赴任した。受け持ったのは100人のクラス。生徒は何とか生き延びた喜びや安堵(あんど)感で、蜂の子をつついたように騒がしく、20年のベテラン教師もお手上げ状態だった。だが「これが本物の教師になるときだ」と大村は活を入れ、荷物の中から新聞や雑誌を引っ張り出し、100の教材を作り、一人一人に手渡していった。同じ課題をしている子は一人もおらず、誰かと比べることもない。実社会と結びついた本物の言葉に、ただの犬ころのようだった子どもたちは、机やノートもない中、気付けば思い思いの姿勢で静かに勉強し始めた。これが大村が教育に新聞を使った最初だと思う。

 大村が特に気に入っていたのが、現役生活最後の1979年、隅田川花火大会を報じる記事の「表現比べ」の実践だ。4紙の七つの記事から、人手や花火が打ち上がる音、川面の様子などの表現の違いを、子どもたちは夢中になって探した。記事が並んでいるだけで見えてくるもの、気付けることがある。そのうれしさがさらに学びのエネルギーになる。大村は「ものを考える処方」を子どもたちに教えた。

 学びというのは力の出し惜しみや加減をせず、本気で向き合ったときにブレークスルーが訪れる。大村は「子どもの経験や知力をしのぐテーマは、言葉を鍛えるのには向かない」と言っていた。新聞は本当に面白い。だが、どうしようもない矛盾や苦しみ、悲しみを内包する記事に教室で全力で向き合うのは難しい。その点、花火はどれだけ突き詰めてものみ込めない苦しさなどがない、いいテーマ、教材だった。

 今は情報の量や質も変わり、社会は混沌(こんとん)を極めている。確かな情報を選び、判断し、自分の考えを形成するのは昔よりさらに困難になっている。苦い戦争の反省から、子どもに言葉の力をつけさせようとした大村の実践は、今の私たちにとっても、大事な指針となるだろう。

 

◆記事に連なる書き込み 考えを「見える化」意見交換活発に◆

【WS「つぶやきNEWSッス」】

 模造紙に貼られた記事の周りにカラフルな書き込みが連なる。記事への「つぶやき」だ。特別分科会の一つ、ワークショップ(WS)「『つぶやきNEWSッス』でアクティブラーニング」では、参加者が「つぶやき」を基に話を膨らませ、意見交換し盛り上がっていた。

 白〓大学(栃木県小山市)の非常勤講師、渡辺裕子さんが考案。新聞や模造紙、色ペン、付箋などを用意し、4人一組となり、各自新聞を読んで気になった記事や広告、写真を切り取る。ストックした中から自分の一押しを選びその理由を簡単に説明し、模造紙に貼れば「つぶやきタイム」がスタートする。自分のペンの色を決め、感じたこと・考えたことを余白に書き込んでいく。他の人の「つぶやき」につぶやくこともできる。

 渡辺さんは「つぶやきニュース」の魅力の一つに、子どもから大人まで気軽に取り組めることを挙げる。「いきなり感想文を書くよう言われると気負ってしまうけど、つぶやきなので自然体で思ったことを出せる」。その場で他人の考えや価値観に触れられ、自分の「つぶやき」に誰かが反応してくれる喜びが、自己肯定感を育むことにもつながるという。

 一通り書き込んだ後は「わいわいタイム」。「つぶやき」が種となり、自然と深い対話が生まれる。他のグループの「つぶやき」に、グループ外と区別できるよう付箋に書いて貼ることも。渡辺さんによると、「つぶやきニュース」を廊下に展示し、子どもたちが通りすがりに書き込めるようにしている学校もあるという。「自分の考えを整理し、分かりやすく伝える訓練の場にもなる」と強調した。

 参加した兵庫県尼崎市立大庄北中学校の中嶋勝教諭は「自分と人の考えをコンパクトな形で見える化できる。対話する力を育むため、ぜひ学校でもやってみたい」と話した。

☆〓は鴎のメが品

 

◆パネルディスカッション 「新聞で育む深い対話」◆

【興味なかったこと知る契機 栃木の高校2年・吹上さん/一人一人を主役にする 新聞協会・関口さん】

 パネルディスカッションでは、新聞スクラップに熱心に取り組む児童生徒を交え、記者らが主体的で対話的な学びにつながる新聞の可能性を論じた。

 栃木県立矢板東高校2年の吹上二海さんは、周囲にはインターネットで情報を得る人が多いが、新聞は見出しの大きさや写真の配置などの工夫があり「いろいろなニュースが目に入る。興味がなかったことにも目を向けるチャンスになる」と指摘。妹の大田原市立薄葉小学校4年の心海さんは「新聞はもう一度読めるのが便利。分からないことがあれば(先生や家族に)聞き、言葉を増やしている」と話した。

 新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」に話が及ぶと、文部科学省教育課程課の小栗英樹教科調査官は「将来、価値観や国籍の異なる人と共存し、互いに納得できる答えを探したり新しい価値を創造したりすることが求められる」と予想。対話を手掛かりに自分の考えを深め広げる重要性を訴え、「新聞は正確で公正な情報を届ける役割があり、優れた教材になる」と期待した。

 下野新聞社宇都宮総局長で論説委員の山﨑一洋さんは、相手の心情や考えを想像しながら話を引き出す取材自体が対話だとして「深い対話的取材ができれば深い記事ができる」と強調。5W1Hの情報が入り、重要なことから書く文体から人に伝える手法を学べ、文字情報を主体的に読んで背景を考え知識と組み合わせることで「論理的思考や生きる力が身につく」と力を込めた。

 助言者を務めた日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さんは、新聞購読率が高い地域は投票率も高い例などを挙げ、「新聞は一人一人を主役にする力を持っている。日常で新聞を囲んで会話し議論するようになれば文化は成熟していく」と締めくくった。

 

◆愛媛の参加教員◆

 【県NIEアドバイザー 今治市菊間中学校 津吉優樹教諭】記事を読んで考え、自分の意見を述べる子どもの姿から、NIEは「生きる力」を育み、持続可能な社会をつくるのに大いに役立つと感じた。新聞を情報の受信源としてだけでなく、積極的に投稿をし自分の考えを発信する場として捉えている学校もあった。地域の対話を広げ深めるNIEの可能性に期待している。

 

 【NIE実践指定校 松山市久米中学校 森朗教諭】深い対話がNIEにより育まれ「生きる力」につながること、NIEの意義や大切さを学んだ。一つの授業をつくるためには教師の協力体制と情報収集力が必要不可欠だ。公民の公開授業では、新聞記事から現代や未来の社会に関心を高める授業展開が勉強になった。今後の授業づくりや自己研さんに生かしたい。

 

 【NIE実践指定校 伊予高校 松本直美教諭】ワークショップに参加し、気軽に取り組めるNIEの新たな方向性が見えた。ホームルームや教員研修でも応用できる。新聞を入り口にして、生活の中の課題を発見したり深く物事を考えたりする力を身につけられると思っている。深い対話を通じて問題解決に向けて何ができるのかを考える学びを実践したい。

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