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令和の8・6 広島原爆投下74年

(中)高校生が描く「被爆」 聞き取って記憶に刻む

2019年8月17日(土)(愛媛新聞)

展示会の来場者に自身が描いた「原爆の絵」について説明する広島市立基町高校の小野美晴さん(右)=5日、広島市

展示会の来場者に自身が描いた「原爆の絵」について説明する広島市立基町高校の小野美晴さん(右)=5日、広島市

 ぼうぜんとさまよう人の群れのそばに横たわる、いくつもの遺体。重傷を負い力尽きた母親を、幼い子どもが途方に暮れた表情で見つめる。「亡くなった一人一人に証言がある。犠牲者に寄り添いたかった」。広島市立基町高校の創造表現コース3年小野美晴さん(18)は、自身が描いた絵に込めた思いを語る。

 同校は12年前から原爆資料館主催のプロジェクトで「原爆の絵」を制作している。生徒有志が被爆者と共に当時の記憶をたぐり、約1年かけて丹念に描く。これまでに約35人の被爆体験を聞き取り、計137点を手掛けた。作品は被爆者の証言活動の際、資料として活用される。

 地元・福山市で自分と同世代で亡くなった特攻隊員のことを知り、戦争体験継承の力になりたいと制作者に名乗りを上げた小野さんだが「制作する前は『ただの絵』だと思っていた」。被爆者と面談を重ねて制作を進めていくうち、キャンバス上の人物に魂を吹き込もうとするほど、経験のない惨状の描写に苦悩するようになっていく。

 一瞬で日常を奪われたこの遺体が、もし私や家族だったら―。突然訪れた死に絶望し、無念さが募った。犠牲者を描くたびに、それぞれの半生が脳裏を駆け巡る。手にハンカチを握りしめ、一人亡くなった女性も描いた。この人はどんな気持ちだったのだろう。好きな人ともう会えない悲しみをハンカチに託した。

 「原爆の日」を控えた5日、広島市で開かれた同校の展示会に小野さんの作品も並んだ。来場者には「ハンカチを握った女性、お母さんの遺体を見つめる子ども。一人一人の気持ちを想像してほしい」と呼び掛けた。大阪府の主婦西村仁咲さん(41)は「高校生の作品はポップで明るいものと思っていた。見るたびに心が痛くなる」ともらした。

 指導する橋本一貫教諭(60)は「より真に迫る作品という意味では、資料館にある被爆者自身が描いた絵にはかなわないだろう」と静かに話す。ならば、高校生が描く価値はどこにあるのか。被爆者の話を根掘り葉掘り聞かずして作品は完成できない。その制作過程が生徒の記憶に刻まれることこそ、作品の出来栄えより重要だと力を込める。

 小野さんは「もう一度描きたいか、そう聞かれるとためらいはある」と胸の内を明かす。「あの日」に近づこうともがくうちに、じわじわと心がそがれていくように感じたという。「身元が分からず燃やされる遺体、それを知らずに捜す家族。そこまで想像して、やっと被害の本質が理解できた。この経験を伝えていきたい」

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