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6月から医療保険適用

がんゲノム、途上の検査 現状や課題

2019年7月31日(水)(愛媛新聞)

 がん患者の遺伝子変異を調べて最適な薬を選ぶ「がんゲノム医療」のための遺伝子パネル検査について、国は6月から公的医療保険の適用を認めた。しかし、病院ごとの準備状況に差があり、県内では2カ月たった今もまだ始まっていない。県内で治療を受けられる愛媛大医学部附属病院と四国がんセンターの2施設の現状や、がんゲノム医療の課題、患者側の留意点などをまとめた。

 

【保険適用2ヵ月 県内ゼロ 準備膨大 開始に壁】

 

連携する中核拠点病院の京都大医学部付属病院が主催する週1回の専門家ウェブ会議に参加し、実例から学ぶ愛媛大医学部附属病院のメンバーら

連携する中核拠点病院の京都大医学部付属病院が主催する週1回の専門家ウェブ会議に参加し、実例から学ぶ愛媛大医学部附属病院のメンバーら

連携する中核拠点病院の京都大医学部付属病院が主催する週1回の専門家ウェブ会議に参加し、実例から学ぶ愛媛大医学部附属病院のメンバーら

連携する中核拠点病院の京都大医学部付属病院が主催する週1回の専門家ウェブ会議に参加し、実例から学ぶ愛媛大医学部附属病院のメンバーら

 保険適用の検査と治療を実施できるのは、遺伝子解析や研究開発などを行う全国11カ所の「がんゲノム医療中核拠点病院」と、中核病院と連携して治療に当たる県内2施設を含む156カ所の「連携病院」。日本のがんゲノム情報を集約管理する国立がん研究センターの「がんゲノム情報管理センター」(C―CAT)によると、保険適用検査情報の登録は既に始まり「順調に増加している(件数は非公表)」という。

 しかし医療現場では、保険適用要件を満たすため、中核・連携病院間の細かな取り決めや情報セキュリティーの強化、院内手続きのひな形作りなど、多くの準備が必要。国内の中心的ながん専門病院で中核病院の国立がん研究センター中央病院・東病院も、開始はともに7月3日だった。愛媛をはじめ「保険適用ゼロ」の病院もまだ多く、格差が生じている。

 愛媛大医学部附属病院は昨年4月に連携病院に認定され、同8月に「がんゲノム医療外来」を開設した。薬師神芳洋・腫瘍(しゅよう)センター長は「いざ薬が見つかったときに早く治療に入れるよう、膨大な院内手続きの簡略化、迅速化を急いでいる。できるだけ早い開始を目指しているが、最終調整中」と話す。今年6月以降に相談に来た患者は「(保険適用まで)待ってみる」と引き返したという。

 外来開設以降、これまで3人が自己負担で検査したが、使える薬が見つからなかったり、有効な薬が見つかったが月数十万円と高額で、やむなく別の薬を選んだりと、思わしい結果には結びついていない。「まだ成熟段階の医療とは言い難く、やはり駄目だったかと落胆する場合が圧倒的に多い。その辺りを踏まえ、病院とよく相談し決断してほしい」と呼び掛けている。

 同様に連携病院で、昨年9月に外来を開設した四国がんセンターも、保険適用開始は「早くて8月末か9月以降」の見込み。体制はほぼ整ったが、連携する中核病院である岡山大病院の「他施設との専門家会議の実施」(保険適用要件)などを待っている。

 上月稔幸臨床研究センター長は、保険適用のニュースの反響は大きく相談も増えたが「今は残念ながら、病状が許すなら待ってもらうか、急ぐ場合は自由診療で実施する形」と説明する。保険適用前は3件の検査を実施、2件が治験参加につながった。他にも検査を希望した人を岡山大に紹介したり、新たな治療が期待できる臨床研究に参加してもらったりした例が1年で約70件あり、より早く治療に結びつきやすい方法も検討している。

 

【遺伝子情報 配慮不可欠 精神負担や「差別」懸念】

 

患者らの勉強会でがんゲノム医療について語る愛媛大医学部附属病院の薬師神芳洋・腫瘍センター長(奥)=松山市末広町の「町なかサロン」

患者らの勉強会でがんゲノム医療について語る愛媛大医学部附属病院の薬師神芳洋・腫瘍センター長(奥)=松山市末広町の「町なかサロン」

患者らの勉強会でがんゲノム医療について語る愛媛大医学部附属病院の薬師神芳洋・腫瘍センター長(奥)=松山市末広町の「町なかサロン」

患者らの勉強会でがんゲノム医療について語る愛媛大医学部附属病院の薬師神芳洋・腫瘍センター長(奥)=松山市末広町の「町なかサロン」

 「保険が使えるのは、あくまで検査だけ。そして治療にたどりつける確率はかなり低い。お金をかけたけど残念でしたとか、治療に何十万円もかかります、というのはあまりに酷」「5年後、10年後は大きく進展すると思うが、現時点では『夢の治療』とは言えないですね」。松山市末広町の「町なかサロン」で7月、遺伝子パネル検査の勉強会が開かれた。講師の愛媛大医学部附属病院の薬師神芳洋・腫瘍センター長は、デメリットも丁寧に説明しながら質問に答えた。

 他に大きな問題として、検査で「知りたくない遺伝子情報が明らかになる可能性」も挙げた。数%の確率で、生まれつきがんにかかりやすい遺伝性腫瘍の遺伝子異常が見つかることがある。家族に告げれば大きな不安をもたらす。黙っていれば、将来がんを早期発見できずに悪影響が出るかもしれない…。

 こうした付随的遺伝情報は「2次的所見」と呼ばれる。伝えるかどうかは患者の希望によるが、そうした心配も含めた患者・家族への慎重かつ丁寧な遺伝カウンセリングが欠かせない。

 また、遺伝情報によって保険の加入や採用などで差をつけられる「遺伝差別」も懸念される。全国がん患者団体連合会(全がん連、39団体)は昨年末、患者らが社会的不利益を被らないよう法規制を求める要望書を厚生労働相に提出した。

 NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会の松本陽子理事長は「ゲノム医療はがん医療の大きな前進。一方で、複雑な情報や限界を患者が理解できるよう、これまで以上に丁寧な説明と精神的負担へのサポートを求めたい」と話している。

 

【がんゲノム医療】まず遺伝子パネル検査で、採取されたがん組織を用いて多数の遺伝子を一度に解析、合う薬があるかどうかを調べる。遺伝子変異が見つかり、効果が期待できる薬があれば病院の専門家会議(エキスパートパネル)で使用を検討し、主治医を通じて患者に提案する。

 これまで先進医療や臨床研究、自由診療(全額自己負担)などで実施されてきたが、複数の検査システムのうち2種類に初めて保険適用が認められた。検査費はともに56万円。保険適用で患者の自己負担は1~3割で済み、高額療養費制度を利用すればさらに軽減。数十万円の負担減になる。

 対象は、固形がん(血液がん以外)で標準治療が効かなくなった人や、希少・小児・原発不明がんなど標準治療がない患者。選択肢が限られる患者にとって、再び治療が受けられる可能性が広がる検査への期待は大きい。

 ただ、検査から治療までは1~2カ月かかる。検査の結果、遺伝子変異があっても使える薬がない場合や時間的な制約、体調の悪化で治療に入れない場合もあり、薬が見つかって治療にたどりつける患者は10~15%程度と低い。

 国立がん研究センターは一般向けに、サイトからダウンロードできるパンフレットや情報集を作成している(https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/index_kan_jya.html)。

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