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西日本豪雨1年

奇跡の犬 集落の宝 宇和島・吉田の奥白井谷 家屋倒壊 6日間生き抜く

2019年6月30日(日)(愛媛新聞)

「奇跡の生還」から約1年たち、すっかり元気になったみなみと、(左から)伊藤健二さん、和子さん、宮本キヌ子さん=23日、宇和島市吉田町

「奇跡の生還」から約1年たち、すっかり元気になったみなみと、(左から)伊藤健二さん、和子さん、宮本キヌ子さん=23日、宇和島市吉田町

【救出劇 復興の支えに】

 西日本豪雨からまもなく1年。宇和島市吉田町の奥白井谷地区で被災直後、倒壊した家屋の下で6日間生き抜き、救出された犬がいる。柴犬の「みなみ」(雌、10歳)。「復興の見通しも立たない時期、みなみのおかげで笑顔になれた。1年たった今でも、集落の宝物」と、住民の語り草になっている。

 

 みなみは同地区の伊藤和子さん(79)と暮らしていたが、2017年7月ごろ、伊藤さんが市内の介護老人保健施設に入所。以来、近くに住むいとこの宮本キヌ子さん(73)らが、散歩や食事の世話を担当。伊藤さんの長男健二さん(55)も、時々仕事帰りに立ち寄るなど、皆で見守っていた。

 昨年7月7日、未曽有の豪雨が奥白井谷を襲った。「ミカン山が崩れた」「竹やぶが流された」。早朝から被害が相次ぐ中、伊藤さん宅の上にある砂防ダムが決壊した。「みなみは?」。宮本さんは心配したが、集落を貫く一本道は、あふれ出た水がゴーゴーと川のように流れ、途中がれきや土砂でふさがり、近づくことができない。間もなく住民の集団避難が始まり、宮本さんも後ろ髪を引かれながら出発した。

 隣接地区の白井谷集会所での避難生活が続く中、宮本さんは12日、「まだ危ない」と制止する声を振り切り、長男一成さん(52)と2人、みなみを捜しに出掛けた。伊藤さん宅は土石流で家屋2棟が倒壊、車庫や蔵は押し流されたと聞き、覚悟はしていたものの、どうしても自分の目で確かめたかったからだ。ぬかるみに足を取られながらたどりつき、必死に捜したが、みなみの姿はない。落胆して持ってきた花を手向け、静かに手を合わせた。

 「奇跡」が起きたのは、翌13日。清家明さん(56)ら地区の十数人が、被災後初めてミカン山の様子を見に出掛けた。伊藤さん宅のがれきのすき間から「何か」がちらっと見えた。と、その瞬間「ワン、ワン」―鳴き声が聞こえた。

 「みなみか?」。のぞき込むと、いた。斜めになった建材の下、泥まみれで、リードがからまった姿で。「生きとるぞ」。男性2人ががれきの下に潜り込み、リードを切った。6日ぶりに救い出されたみなみは、足を引きずるようにはい出て、水たまりの水を飲んだという。

 「良かった」「みなみ、助かったね」。歓喜が広がる中、一成さんが集会所の宮本さんに電話し、急ぎ連れ帰った。やせて衰弱したみなみは震えていた。「よう頑張った」。宮本さんは涙をこらえながら、泥で固まった毛を、お湯で洗い流してやった。

 健二さんがみなみを引き取り、動物病院に連れて行った。2~3日は食べ物を受け付けなかったが、徐々に回復。その後、奥白井谷を2回訪れ、宮本さんらに元気な姿を披露した。

 伊藤さん親子は、「奥白井谷のみなさんにも無事を喜んでもらい、感謝しかない」と頭を下げる。「他の地区では復旧工事が始まり、みんなの焦りがピークに達する中、みなみの生還は、唯一のうれしい出来事だった」と清家さん。宮本さんは「みなみに勇気づけられ、つらいことも乗り越えられた」と振り返る。

 「昔からまとまりのよい集落」(宮本さん)という奥白井谷だが、10世帯のうち戻ってきたのは6世帯。他の住民はみなし仮設住宅など、今も地区外で暮らす。今後も復興へ険しい道のりが予想されるが、「みなみ救出劇」が結束を示す一つのエピソードとして、住民の心に刻まれている。

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