負担のないポーズ指導
乳がん経験者にヨガを 松山で教室 体ほぐし気分明るく
2019年3月20日(水)(愛媛新聞)

鎌田美佳さん(右)の指導を受けながら、ヨガに取り組む乳がん経験者=松山市朝美1丁目

鎌田美佳さん(右)の指導を受けながら、ヨガに取り組む乳がん経験者=松山市朝美1丁目
生涯のうちに女性の11人に1人がかかるとされる乳がん。手術後に腕や肩が動かしにくくなったり、精神的に落ち込んだりする人は少なくない。乳がん経験者の心身のケアに、生活の質(QOL)を改善する効果が期待されるヨガを活用する取り組みが近年、注目されている。松山市では、乳がん経験者を対象にしたヨガ教室が開かれている。
2月下旬、松山市朝美1丁目のヨガスタジオ。「呼吸のリズムを感じて」「背中の後ろで手を組み、肩甲骨を広げましょう」。講師の鎌田美佳さん(43)の声に合わせ、2人の女性がさまざまなポーズをとっていく。
1時間ほどのレッスンが終わると、参加者には汗がにじんだ。約1年前に乳房の摘出手術を受けたという50代女性は昨年10月から月1回、ヨガを続けている。「術後は血流が悪くなり、腕がしびれることもある。ヨガをした後は体がほぐれ、気持ちがいい」とほほ笑んだ。
乳がんの手術では、がんが広がっている恐れのある乳房や脇の下のリンパ節の切除などを行う。筋肉や脇の下の皮膚が縮むため、少し動かすだけで肩関節が突っ張ったり痛んだりする。乳房の喪失などで精神的なショックを受け、不安や無力感を抱く人も多い。
こうした乳がん経験者のQOL向上のため、米国ではヨガが広く用いられているという。ヨガに関する医学的な研究は国内外で進んでおり、厚生労働省も「統合医療」情報発信サイト内でヨガの効果を紹介。予後を改善するかどうかは不明とした上で疲労や不安、抑うつ気分を軽減するなどとしている。
鎌田さんは市のNPO団体としてヨガサークルを主宰。家族のがん闘病を経験した生徒からの要望を受け、2017年に乳がん経験者のためにクラスを設けた。体に負担のないポーズの教え方などを学ぶ民間の乳がん患者向けヨガ指導者の資格を取得しており、現在は同スタジオや市内のカルチャースクールで教室を持つ。
受講者は30~60代が中心。症状には個人差があるため、鎌田さんは準備運動をしながら、その日のメニューを考えるという。「ヨガを通して心身をリラックスさせてほしい。不安を抱え込み、家から出られない人が一歩を踏み出すきっかけになれば」と語る。
がん患者のリハビリに詳しい岡山大病院整形外科の中田英二医師は「術後にヨガに取り組む場合、直後から行わなければ効果は限定的だが、骨転移がなく、全身状態も不良ではない化学療法、放射線療法中の乳がん患者にとってヨガは有効。ただ、無理なポーズは関節痛の原因となり、注意が必要」としている。