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県内豪雨半年

住民犠牲4市対応検証 遅れた避難勧告・指示

2019年1月6日(日)(愛媛新聞)

西日本豪雨で土石流などが起きた宇和島市吉田町白浦。男女4人が犠牲となった=2018年7月12日正午ごろ(小型無人機から撮影)

西日本豪雨で土石流などが起きた宇和島市吉田町白浦。男女4人が犠牲となった=2018年7月12日正午ごろ(小型無人機から撮影)

 

 

 

 

 

左上の斜面から押し寄せた土石流で民家が倒壊し、小学生2人と母親が亡くなった現場=2018年7月7日午前、松山市上怒和

左上の斜面から押し寄せた土石流で民家が倒壊し、小学生2人と母親が亡くなった現場=2018年7月7日午前、松山市上怒和

 

 

 昨年7月の西日本豪雨では土砂災害が多発し、宇和島、松山、今治、大洲の4市で計17人が死亡した。17人が土砂災害に巻き込まれた時、4市から避難勧告や避難指示は出ていなかった。ただ、避難の判断材料となる一定の情報が4市のほか、県や気象台から提供されていた。土砂災害は危険な場所から避難していれば、命だけは助かる。なぜ、17人もの犠牲者が出たのか。豪雨災害の頻発化、激甚化が予想される中、今後どうすればよいのか。4市の対応を中心に検証する。

 

【土砂災害危険度 発令レベル 発災前の「見送り」課題 】

 大雨が降った際、土砂災害に備えて避難するかどうかを決めるのは住民だが、判断するには適切な情報が必要だ。国や県、市町村は土砂災害の特徴を踏まえて、大きく分けて三つの情報を住民に提供することになっている。住民の一部からは西日本豪雨で、避難勧告や避難指示などが発令されなかったことを問題視する声が上がっている。

 土砂災害は、川の水位などを確認できる洪水などと比べて、事前予測が難しい。発生後に逃げることはほぼ不可能で、被災すれば家屋を全壊させるほどの破壊力があり、死傷者が出やすい。ただ、危険な場所は調査すれば、かなり特定できるという側面もある。

 こうした特徴から土砂災害対策は、①県が事前に危険性の高い場所「土砂災害警戒区域」を公表し、②大雨時に気象庁や県が雨量などを分析して各地の土砂災害の危険度をできる限り示し、③危険度に応じて市町村が避難を呼び掛ける―という形になっている。事前予測は困難なので、早めの避難が非常に重要だ。

 県内の土砂災害警戒区域は5686カ所。同区域では自治体がハザードマップを作成する。西日本豪雨で死者の出た県内土砂災害現場10カ所のうち、区域外だったのは1カ所。区域内だけが危険地帯とは限らないが、避難判断の目安として有効であることがあらためて示された形だ。土砂災害警戒区域の場所は県のホームページ(HP)で公表されている。

 土砂災害の危険度について、気象庁は大雨警報(土砂災害)など複数の情報提供を行っているが、中でも極めて重要なのが県と共同で出す「土砂災害警戒情報」だ。政府の中央防災会議の土砂災害対策検討ワーキンググループは報告書で「発表されれば数時間以内に土砂災害が発生する危険性があるため、避難行動を取るべきだ」としている。

 大雨警報や土砂災害警戒情報はいずれも市町村単位で発表されているが、より細かく危険地区を判別できるのが、気象庁のHPにある地図情報だ。地図を5キロ四方ごとに5段階で色分けして危険度を示している。名称を「土砂災害警戒判定メッシュ情報」という。県砂防課のHPにも類似の地図情報がある。

 西日本豪雨では発災前日、死者の出た4市に土砂災害警戒情報が発表されている。災害現場周辺のメッシュ情報が、最も危険度の高い「紫」になったのは今治、松山の2市が6日深夜ごろ、大洲、宇和島の2市は7日未明ごろで、いずれも発災前だった。これらの情報は、自治体担当者や住民の避難判断に一定程度、有効だったとみられる。

 市町村の避難の呼び掛け方は、主に3種類ある。危険性が高い順に「避難指示(緊急)」「避難勧告」「避難準備・高齢者等避難開始」となっており、市町村は、それぞれに発令の基準を設けている。一般的に、気象庁の土砂災害警戒情報の発表が避難勧告レベルに相当。メッシュ情報では「紫」が避難指示、「薄紫」が避難勧告のレベルに該当する。

 土砂災害で死者の出た県内4市はほとんど、発災前にこの3種類の情報を出せておらず、今治、大洲の2市が「避難準備・高齢者等避難開始」を発令しただけだった。4市ともメッシュ情報などは避難勧告の基準に達していたが、「総合判断の結果、見送った」としている。ただ4市は発災前、早めの避難などを防災行政無線や消防団の呼び掛けで伝えていた。

 自治体だけの責任とは言い難い側面があるが、一部の住民からは「市の危機管理は甘い」という声も上がっている。3種類の避難情報を出せなかったのは、県内土砂災害対策の大きな課題として浮かんでいる。

 

【「空振り」「夜間」懸念 次の災害で逃げてもらえない 情報活用 早めの行動を】

 西日本豪雨の際、死者の出た県内4市の土砂災害現場では、発災前に避難勧告、避難指示が出ていなかった。その理由を4市は「土砂災害の予測は困難で、発令して災害が起きずに『空振り』すれば、次から住民に逃げてもらえなくなる可能性がある」「夜間に発令すれば、住民が無理な屋外避難をして被害が出かねない」などとする。背景には、土砂災害の情報や避難の仕方が住民の間で理解されていないのではないかという懸念がある。

 4市は災害が起きる前、共通のジレンマを抱えていた。モニターに映し出される土砂災害警戒判定メッシュ情報のデータが避難勧告の発令基準に達しても動かなかった。「命を守るには早めの避難呼び掛けが重要だが、空振りの可能性が高くなる。空振りすれば次から住民が逃げなくなるのではないか」。4市は検討の末、避難勧告や避難指示を本当に被害が出る場所に出そうとした。

 そのため、メッシュ情報などの予測データに加えて現実の情報を求めた。「現場から被害や前兆情報がなかった。市内ではもっと雨が降っている所があったが、被災情報は入っていなかった」(松山市)「現場の情報がなかった」(宇和島市)。今治市は「避難指示は強制に近いので、危険度が高い詳細な地域が分からないと出せない」として場所を絞ろうとした。

 だが、静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は「本当に被害が出る所だけにピンポイントで避難勧告を出そうということだろうが、現在の降雨予測・実況情報に、そのような精度は期待できない」と指摘する。

 ジレンマ解消の鍵は住民の姿勢にありそうだ。政府の中央防災会議の土砂災害ワーキンググループは報告書で「住民が早めに避難し、何も起きなければ幸運と思う心構えが重要」と提言。空振りに終わっても土砂災害が起きる危険性が高かったことに変わりはなく、早めの避難を常に心掛けるよう強調している。

 4市が避難勧告などを発令しなかったもう一つの理由は、夜間だったことだ。住民が夜道を避難すれば、あふれた水路にのみ込まれたり、土砂災害に巻き込まれたりして被災する恐れがあると懸念した。

 内閣府のガイドラインによると、本来、土砂災害の避難は危険区域から逃げることだけを意味しない。屋外が危険な場合は建物の上層階や、山からできるだけ離れた部屋へ移動することが有効な場合もある。ガイドラインは夜間でも原則、避難勧告を発令し、取るべき避難行動を住民に伝えるよう提言している。

 ただ、こうした条件付き避難勧告は、住民が日ごろから避難に備えていなければ使いにくい。例えば宇和島市は今回、「住民が避難勧告や避難指示を『屋外への避難』という意味に受け取るのではないか」と恐れて発令に踏み切らなかった。市担当者は「上層階への避難などを住民に周知できていれば発令もあり得るが、そこまでできていなかった」と振り返る。

 広島大大学院工学研究科の土田孝教授(地盤工学)は「自治体や自主防災組織などが連携して住民への周知、訓練をし、夜間も想定して避難勧告を出せるよう準備しておくことが必要だ」とする。

 よりよい方法は夜間避難にならないよう、空振りを許容して明るいうちに早めに避難することだ。新潟大の田村圭子教授(危機管理学)は「避難勧告や避難指示は助けにいけないレベル。避難準備情報を活用し、早期の自主避難を促したり、住民がすぐに逃げられる状態にしておくことが大切」と力を込める。牛山教授は「情報は広く公開されている。住民も『行政が知らせてくれなかった』とばかり言っていてはいけない」と呼び掛けている。

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