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肱川氾濫ダム操作

放流考慮し避難発令へ 検証最終会合、対応案まとめる

2018年11月22日(木)(愛媛新聞)

野村、鹿野川両ダムの操作や情報提供を検証する会合=22日、大洲市

野村、鹿野川両ダムの操作や情報提供を検証する会合=22日、大洲市

 西日本豪雨による肱川氾濫を受け、野村、鹿野川両ダムの操作や住民への情報提供を検証する最終会合が22日、大洲市であった。ダム操作の情報が「避難指示発令へ直接的に結び付かなかった可能性がある」と指摘し、ダム放流情報を考慮した避難情報発令基準への見直しや、豪雨時に被害がより軽減できるような操作規則の変更を盛り込んだ対応案を大筋でまとめた。

 検証会合を設置した国土交通省四国地方整備局は「最終案を年内に公表する」と表明。ダムの操作規則変更について「より効果的な操作を具体的に考えたい」とした。対応案には電光掲示板の放流情報を危険度に応じて異なる色で示すことも盛り込んでおり、住民へ危機感が伝わるようにするには「関係機関が連携しハード、ソフト両面で対応することが必要」と説明した。

 会合では、来年4月の運用を目指す鹿野川ダムの洪水吐(ばき)トンネルによって、現在の洪水調節容量1650万トンに740万トンが上乗せされることに関し議論。管家一夫西予市長が、操作規則変更で野村ダムの安全とされる放流量はどこまで引き上げられるか▽規則変更の協議の場に下流自治体の意見は反映されるか―の2点を問うた。

 整備局は具体的数値は示さず「検証で出た方策に国が具体案を追加し、県を中心とし、西予・大洲両市も含め今後調整したい」と回答した。二宮隆久大洲市長は「野村ダムの放流量増はある程度、大洲市としてもやむを得ない。下流域への影響はおさえておく必要がある」と述べた。

 二宮市長は、肱川の水位への影響が大きい支流小田川についての記述を盛り込むことも要望。整備局は追記する考えを示した。

 対応案では、ダム操作に関し、ダム直下に被害が出始める放流の開始を両ダムとも約40分遅らせる効果があったなどと分析した。住民説明会などで要望があった、雨量予測を活用した柔軟なダム操作は「予測が外れた場合、本来回避できた浸水被害が発生するため困難」などとした。

 

【ダム操作検証 取りまとめ骨子】

▽鹿野川ダム改造完了(2018年度)や河道整備に合わせた操作規則の変更(国交省)

▽野村ダムでの250万トンの事前放流を継続、一層の容量拡大へ協議(国交省)

▽ダム放流情報を考慮した避難情報発令基準への見直し(国、県、大洲市、西予市)

▽電光掲示板などにダム放流情報を危険度に応じて色分け表示(国交省)

▽事前の防災行動を時系列に整理した「タイムライン」を住民参加で作成(大洲市、西予市)

▽洪水ハザードマップの作成(大洲市、西予市)

 

【被災者 根強い不信 住民と対話継続を】

【解説】 国土交通省が22日にとりまとめた西日本豪雨時の野村、鹿野川両ダムの操作や住民への情報提供の在り方を巡る検証は、情報伝達改善や治水強化の方向性は示したが「被害を減らすすべはなかったのか」との被災者の疑問に明快に答えたとは言い難い。西予、大洲両市や県を含め、検証を続ける必要がある。

 焦点の一つは放流や避難の情報伝達。関係機関や住民に確実かつ理解できるよう伝える重要性の指摘が有識者から相次いだ。確実な避難には平時から住民に意識を共有してもらう取り組みが不可欠だが具体化は容易でなく、国や県、市、教育機関などが住民と粘り強く対話していくしかない。

 避難はいわば最後のとりで、被災地でより注目されたのは、洪水を防ぐダムや堤防などの治水機能の在り方だった。生活や事業の再建に関わるためだ。「もっと被害を減らす操作ができたのではないか」との両ダムへの不信も根強い。

 複数の識者は、雨の降り方や規模に即した柔軟なダム運用の検討を促したが、難色を示した国の主張に沿った結論となった。

 座長の鈴木幸一愛媛大名誉教授は22日の会合後「検討したが、柔軟な運用は研究段階。西日本豪雨やこれまでの(大雨の)予測と実績を見ると、精度が上がらない限りできない」と説明。一方、国には「いろいろな方法があり、まったく考えられないというのはどうか。新しい研究成果が出ればぜひ取り入れてほしい」とくぎを刺した。

 検証では現行操作規則の妥当性は掘り下げられなかった。両ダムの規則は1996年、大規模洪水対応から中小規模洪水対応に変更。河川整備が完了していない鹿野川ダム下流の水害頻発への対策だが、大規模洪水で被害が大きくなり一長一短がある。

 今後は現状をベースに中小規模対応のメリットを残して河川やダムを改修。規則を順次見直し、西日本豪雨並みの雨量でも被害が出ないよう両立を図る。それでも西日本豪雨を超える災害発生は否定できない。

 規則変更は西予、大洲両市にとって利害がぶつかる部分もある。会合ではこれまで「どういった根拠で(96年の改定が)決まったのかはダム操作を考える上で大事」「急激な降雨や気象の激甚化で、どこを重点的に守るか考える必要がある」との提言もあった。国はダムや河川堤防の限界を示し、流域の自治体や住民と丁寧に議論していく必要がある。

 

【「ダムだけでは限界」「スタートライン」 傍聴者や委員ら】

 野村、鹿野川両ダムの操作や情報提供に関する対応案をまとめた22日の会合。傍聴者や委員からは継続的な検証や、ダム操作規則変更に関して多様なシミュレーションを求める意見が聞かれた。

 「ダムだけの洪水対策には限界がある。情報提供による避難で命が助かればいいという問題ではない」。大洲市の無職女性(81)は検証作業に不満を示しつつ、河道掘削などで安全度を高めるよう求めた。

 大洲市議会肱川流域治水対策特別委員会の村上松平委員長は「現状では適切な検証だったのでは」とし、洪水ハザードマップなどで啓発する必要性を訴えた。

 別の市議からは、国が示した大規模洪水に対応した1996年までのダム操作規則で操作した場合のシミュレーション結果を巡る注文も。「旧規則ならもっと早く放流できたのではという住民の疑問がある程度、立証された形だ」「柔軟な操作は難しいと国は言うが、より有効な操作規則を追究するためにも、柔軟に操作した場合のシミュレーションも行うべきでは」と指摘する。

 西予市の管家一夫市長は「地元の意見を取り入れながらダム操作規則見直しなどを進めることを盛り込むなど前進があった」と評価し「具体化のスタートラインに立ったばかり。検証を継続しなければ」と気を引き締めた。「住民としっかり意思疎通し、研修や啓発などを進めたい」と強調するのは大洲市の二宮隆久市長。市独自の検証は「県の検証も踏まえ、何をすべきか今回のことを分析する」としつつも、具体的な組織設置は「これからの問題」とした。

 国土交通省四国地方整備局の佐々木淑充河川部長は「治水施設整備後に完全に安全になったわけではないと普段からきちんと説明していなかったことが反省点」と振り返り、県河川課の野間俊男課長は「さまざまな意見を踏まえて課題や取り組みが整理された。県民の安心安全につなげていきたい」とコメントした。

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