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愛媛豪雨災害

県内自治体 緊急放流想定せず ダム直下 急激に増水 上昇幅「予測は困難」

2018年9月9日(日)(愛媛新聞)

野村ダムの緊急放流後、大規模な浸水被害が発生した西予市野村町=7月7日午前9時40分ごろ(読者提供)

野村ダムの緊急放流後、大規模な浸水被害が発生した西予市野村町=7月7日午前9時40分ごろ(読者提供)

 

 

西日本豪雨で緊急放流が行われた鹿野川ダム=7月12日午後、大洲市肱川町(小型無人機で撮影)

西日本豪雨で緊急放流が行われた鹿野川ダム=7月12日午後、大洲市肱川町(小型無人機で撮影)

 

 西日本豪雨で野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)の緊急放流後に肱川が大氾濫を起こして計8人が死亡し、緊急放流の危険性が現実化した。ダムを抱える県内自治体は想像していなかった被害に驚きの声を上げ、「これからはダム放流後の被害を『想定外』とは言えない」と危機感を募らせる。ダム放流による急激な河川の水位上昇に対応しようと、地域防災計画の改訂を検討する自治体も出てきている。

 

【教訓 水位で避難発令 危うさ】

 大洲市では河川の水が急に増えるダムの緊急放流に対して、水位を基に避難情報を発令する危うさが浮き彫りとなった。

 市はダム管理者から緊急放流の可能性を約2時間半前に通知されていたが、肱川の水位の上昇に注目していたため、市内に避難指示(避難勧告よりも強い呼び掛け)を出したのは実施の5分前と直前になった。

 最も問題なのは、ダム直下の肱川地域への対応だ。市内のほかの地域には河川の水位を基に避難勧告を発令するなどしていたが、肱川地域では緊急放流5分前の避難指示が、最初の避難の呼び掛けとなった。

 肱川地域は、水位計ではなく現地の職員が目視で河川を確認していたが、市災害対策本部に水位上昇の報告は入っていない。緊急放流でダム直下は急激に水位が上がり、1時間もたたないうちに家屋の2階まで浸水した。

 西予市も緊急放流に備える計画はなかった。ダム管理者から約4時間前に「(緊急放流は)不可避」と予告を受けたが、「夜間の避難は危険」として早朝まで避難情報を発信しなかった。緊急放流の1時間10分前、ダム直下の野村地区に避難指示。だが、防災行政無線が聞こえなかった住民もおり、消防団が戸別訪問を行ったが、逃げ遅れるなどして5人が死亡した。

 過去の緊急放流時に野村地域や肱川地域で浸水被害はなく、大洲・西予の両市はダム直下の甚大な被害を想定していなかった。西予市野村地域では、河川管理者の県が洪水浸水想定区域を指定していないため、住民避難の基本情報となる洪水ハザードマップもなく、市も何トンの緊急放流でどこまで浸水するかが分かっていなかった。

 一方、両ダムを管理する国土交通省は緊急放流の危険度の高さを認識していた。「被害が出かねず、実施するとなった段階では絶対に避難してもらう必要がある。そのため事前に自治体などに通知している」(鹿野川ダムを管理する同省山鳥坂ダム工事事務所)。「人がいると思って流していない」(同省野村ダム管理所)。管理所、事務所ともサイレンを鳴らし、警報車を走らせるが、避難勧告などを出して地域住民に主に避難を促すのは自治体との立場。だが、「市や住民への伝え方は考えていかないといけない」とする。

 兵庫県立大の室崎益輝教授(防災計画学)は「ダム管理者、行政、住民の間で事前のコミュニケーションが不足し、根底で危機感に差があったのではないか。緊急放流は、大量の水が一気に流れ込んでくることが事前に分かっているため、いざというときの行動、計画を決めておかなければならない」と提言する。

 

【現状 対応後手に回る恐れも】

 「緊急放流後の被害は衝撃的」「ノーマークだった」。県内の主なダムを抱える自治体の担当者は、野村ダム、鹿野川ダムの下流で起きた大規模な被害について一様にショックを口にする。

 自治体は災害対策基本法で、住民の避難方法などを地域防災計画にまとめるよう定められている。だが、県内自治体は同計画で、ほぼ緊急放流を想定していなかった。ダム管理者は緊急放流を予告する際、放流量の予測なども伝えているが、県内自治体は洪水の避難勧告などを出す際、河川の水位を主な判断基準としている。

 水位は河川氾濫の危険を示す重要な情報だが、大量の水が一気に押し寄せる緊急放流時は対応が後手に回る可能性がある。特にダム直下は危うい。さらに県内自治体はダムの放流量の情報を得ても、それによって、どのくらい河川の水位が上がるかをほぼ把握できていない。支流などの影響もあるため予測が難しい面もあるが、「現在の計画や基準では緊急放流に対応するのは困難」とみる自治体もある。

 両ダム以外で、緊急放流を実施したことがある県内の主なダムは、鹿森ダム(新居浜市)7回▽新宮ダム(四国中央市)4回▽黒瀬ダム(西条市)3回▽柳瀬ダム(四国中央市)、山財ダム(宇和島市)1回。各ダムの管理者などによると、西日本豪雨まで緊急放流後の人的被害はなかったが、多くの専門家が気候変動の影響などから今後、異常な降雨が続くと予想している。緊急放流の回数が増え、規模が大きくなる可能性がある。

 国や県、水資源機構の管理する県内12ダムのうち、柳瀬ダムを除く11ダムでは下流の集落などに浸水被害の出る恐れがある。石手川ダム管理支所は、緊急放流を実施する際は下流の避難が完了しているのが理想とし、「こちらも空振り覚悟で自治体に早めの情報伝達をしなければならない」。11ダムでは放流の1時間以内に人家などのある地域に水が到達する見込みで、ダム管理者と自治体の早期かつ正確な情報共有と、確実な住民の避難対策が求められている。

 

【対策 地域防災計画改定 浸水区域指定 必要】

 西日本豪雨の被害を受け、県内の複数の自治体は緊急放流への危機感を高め、住民避難の在り方を見直し始めている。宇和島市や今治市は、ダムの緊急放流対策を盛り込み地域防災計画を改定する方針。今治市の担当者は「国も方針を示すだろうが、先手を打っていく」と述べた。

 四国中央市は担当課内の運用として、ダムから緊急放流の連絡が来た時点で避難情報の発令を考えている。新居浜、西条、松山の3市は国・県の動向を注視した上で改定を検討するとしている。

 ダム管理者と自治体の連携を密にする動きも。6ダムを管理する県は8月中に水防連絡協議会を開き、自治体関係者や利水者らと緊急放流の際の連絡系統などを話し合った。石手川ダムでも、管理する国土交通省松山河川国道事務所が県や松山市などに説明した。

 ただ、自治体担当者の多くは地域防災計画の改定に当たって「放流でどこまでの地域が被害を受けるか分からない」と悩む。浸水想定がないためだ。

 河川を管理する国や都道府県は水防法で、洪水時に大きな被害が懸念される河川を指定し、洪水浸水想定区域を定めることとなっている。県内での区域指定は、国管理19河川のうち4河川。県管理は1157河川のうち11河川。国、県とも「中山間部が多いため周辺に人家のない河川が多数ある」などとしているが、ダム直下が含まれているのは、市街地に近い宇和島市の須賀川ダムのみとなっている。

 県は、西日本豪雨で被害があった西予市野村地域と大洲市菅田地区については、洪水浸水想定区域を策定する予定としている。

 一般的に同区域の策定を受けて、自治体はハザードマップを作成し、住民に配布し、避難を促すこととなる。そのため、多くの市が県に指定を要望している。「(県に)シミュレーションをしてほしい。今後はどうなるか分からない」(今治市)「(緊急放流が行われた)2004年にあと1時間続いたら危ないと黒瀬ダム関係者から聞いた」(西条市)。宇和島市は毎年、山財ダムの下流を洪水浸水想定区域に指定するよう県に求めている。

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