完全燃焼 みんなの夏
<聖カタリナ学園>亡き父の言葉 仲間鼓舞、チームに貢献
2018年7月22日(日)(愛媛新聞)

身ぶり手ぶりでチームメートに声援を送る河本悠=21日、西条ひうち球場

身ぶり手ぶりでチームメートに声援を送る河本悠=21日、西条ひうち球場
頭上で大きな丸をつくったり、拳を突き上げたり―。聖カタリナ学園3年の河本悠(18)は身ぶり手ぶりを交え、ベンチから仲間を鼓舞した。亡き父親譲りの明るい性分。「声出しで一番を取って、周りをいい雰囲気にしたい」と誰より大きく声を張り上げた。
居酒屋を営んでいた父・健さんは2月、がんで亡くなった。息子を応援し、合宿には店を休んで炊き出しに駆け付けた。栄養たっぷりの豚汁をはじめ、プロの味は球児たちに大好評。自慢の父だった。
河本は部活が終わると店に寄り、一緒に帰宅した。相談相手はいつも父。練習漬けの毎日に心が折れた時も「絶対辞めるな。そのうち生かせることがある」と励ましてくれた。
河本が生まれた頃から、父はがんと闘っていた。話し好きで盛り上げ上手。あちこち転移していたが、話ができなくなるのは嫌だと声帯摘出だけは拒んでいた。「生死の境をさまよっても、ひゅっと生き返った」。入退院を繰り返していたが、今回も大丈夫だと信じていた。だが願いは届かず、57歳で天国へ旅立った。
ぽっかり、心に穴があいたようだった。野球にも集中できなかった。そんな時、父の死を知った仲間が寄り添ってくれた。何も言わず、そっと。悲しみを乗り越えられたのは仲間のおかげだ。
「思いやりを持って行動しろ」。父の言葉を胸に、迎えた3回戦。グラブや水分を手早く渡し、気持ちよくプレーしてもらえるよう気配りを心掛けた。接戦の末、7―9で敗退。「もっとチームのために働けていたら…。悔いは残ってる」。声を詰まらせながらも、気丈に言葉を紡いだ。