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えひめ認知症対策 支え合う地域

<2>「土香里」の挑戦(下)「できる」意欲を力に

2018年6月5日(火)(愛媛新聞)

「皆で歌うのも、食事の手伝いも楽しい」。慣れた手つきで夕食の支度をする土香里の入所者=5月2日午後、伊予市

「皆で歌うのも、食事の手伝いも楽しい」。慣れた手つきで夕食の支度をする土香里の入所者=5月2日午後、伊予市

 5月上旬の昼下がり。伊予市大平のグループホーム「土香里(とかり)」の広々としたリビングに、タンタン、タンタンと小気味よい包丁の音が響く。夕飯のメニューはマーボー豆腐と酢の物。慣れた手つきでキュウリを刻むのは入所者の女性らだ。

 BGMの懐メロを口ずさみながらモヤシの芽を取る山本慶子さん(83)は2014年に入所した際、要介護4で車いすが手放せなかった。「お金を取られた」と怒ったり、同じ物をいくつも買ってきたり、認知症の症状もあった。今では要介護1に改善し、一人ですたすたと歩く。「洋裁学校へ通ったころ、ダンスホールで流行歌に合わせて踊ったんよ」。穏やかな笑みをこぼした。

 料理の支度が整うと、アカペラの童謡大会が始まった。「ソソラソラソラ、うさぎのダンス」―。歌詞本をめくりながら4、5人の女性が歌う。傍らで熱心に新聞を読む男性、ペットのチンチラを膝に抱く女性。職員にレクリエーションを強制されることもなく思い思いの時を過ごす。

 ここではお年寄りも職員も自由が基本。「たとえ骨折しても気持ちが折れなければ大丈夫。歩きたい、皆と同じことがしたいという意欲があれば改善する」。施設長の河本圭仁さん(50)は食事の支度も洗濯も、入所者にできることは任せる。「できなかったことも、やってみたらできるようになる。ばあちゃんもじいちゃんも貴重な人材です」。多くの入所者の状態が改善する理由がここにあるのかもしれない。

 

 もう一つのこだわりが地域との関わりだ。ゴールデンウイーク明けに開いた運営推進会議。入所者の家族や地域関係者にサービス内容を説明するため義務づけられた会だが、約40人が集まり地区の集会所がいっぱいになった。「地域に溶け込むために壁を外して、外の風も中の風も共有できるのが理想」。河本さんが卓話で語りかけた。

 「家族のように接してもらいありがたい」と話す家族。「人それぞれ。いろんな目で見ることが大切」という医療関係者。さまざまな立場から自由な意見が次々と出て、話は尽きない。

 近所の人が「元気かな」とひょいと遊びに来る。野菜ができた、タケノコが採れたと持ってきてくれる。「何かあったときにはAED(自動体外式除細動器)があるけん、いつでも言うてよ」。施設からも地域に声を掛ける。災害時の避難所としての活用も、地区の役員と話し合っている。

 3日は毎年恒例のホタルまつりを開いた。「今年は入所者の皆と一緒に準備をした」と河本さん。内向きではなく、来てくれた近所の人や家族をもてなすイベントになった。「昔のようにばりばり動いている姿を見ると、家族はうれしいでしょう」。土香里の挑戦は続く。

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