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社会とつながり拡大

支援施設「スマイル」活動10年目、感性光る障害者アート

2018年5月22日(火)(愛媛新聞)

土山啓一さん(左)が描くみずみずしい絵に、詩を添える森田欣也さん=11日、松山市余戸南6丁目

土山啓一さん(左)が描くみずみずしい絵に、詩を添える森田欣也さん=11日、松山市余戸南6丁目

 

 

 障害者の感性や創造性を生かしたアート制作に取り組む障害者支援施設「スマイル」(松山市余戸南6丁目)の活動が、5月で10年目を迎えた。動植物や人物などをモチーフに、利用者が思うままに表現し命を吹き込んだ作品は地域の展覧会で発表され、社会とのつながりを深めるきっかけになっている。

 11日午後。スマイルの1階ホールに20人ほどの利用者が集まっていた。レクリエーション教室で書道を楽しむ人の傍らに、チラシを黙々と折ったり、詩を書き留めたりして創作に打ち込む人の姿があった。

 絵筆を口にくわえてカエルを描いているのは、交通事故により四肢まひとなった田中潤也さん(19)=伊予市。昨年から週2回スマイルに通い、長ければ2時間近くを制作にあてている。「絵が好き。しんどい時に描くとモチベーションが上がる」と口元を緩めた。

 田中さんから少し離れたテーブルでは、2015年から共同制作を始めた入所者の土山啓一さん(57)と森田欣也さん(54)が筆を走らせていた。土山さんのみずみずしい絵に、心に浮かんだ詩を添えていく森田さんは「作品は生きた証し。土山さんの絵でなければ詩を表現できない」と満足そうに話した。

 食事や入浴などの介護をはじめ、日常生活上の支援を提供しているスマイルは、利用者により充実した日々を過ごしてもらおうと09年、アート制作を日中の活動に取り入れた。

 施設には美術の専門家がいなかったため、スタッフは県外の先行事例を参考に研修を重ね、手探りで進めてきた。利用者のほとんどは複数の障害がある重複障害者。言葉が話せず、体の可動域が限られる人も少なくない。筋緊張のある人が筆を握りやすいようにタオルを巻いたり、筆圧が弱い人には柔らかな書き味のペンを用意したり、一人一人の障害特性に合わせて画材を選び、制作をサポートしている。

 現在、創作活動に取り組むのは10~70代の入所・通所者約20人。それぞれのペースで仕上げた絵画や造形作品は市内外で年4、5回開かれる展覧会などで披露する。モチーフや色使いに独創性が光る力作は来場者の人気を集め、13年からはポストカードとして販売。70枚の商品が1日で完売するなど地域のファンは多い。

 活動の手応えについて、スタッフの田村恵理さん(38)は「利用者との信頼関係を土台に、自由な発想で制作できる環境をつくってきた。展覧会への出展で利用者は目標を持つようになり、達成感や喜びを感じているようだ」と語る。

 個性豊かな作品は近年、全国の美術公募展で入選を重ねており、評価も高い。昨年は、クレパスによる重厚で鮮やかな表現力を持ち味とする通所者の沖野あゆみさん(40)=伊予市=の絵がデザイナーの目に留まり、みかんジュースのラベルを手掛けた。“スマイルアーティスト”の活躍の場は広がりつつある。

 大野恭子理事長(66)は「不用になった画材を贈ってくれる菓子店や中高生の協力もあり、続けてこられた。施設のメインは生活介護ではあるが、今後も利用者が持つ力を存分に発揮し、生き生きと暮らしていけるようアート制作を後押ししたい」と話している。

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