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「風の伝言を彫る」から 版画家 名嘉睦稔

<3>月下美人乃花滝 群れ在る花に高鳴る胸

2017年4月27日(木)(愛媛新聞)

「月下美人乃花滝」(2011年)

「月下美人乃花滝」(2011年)

 今回伊予の国に、南の島からいろいろ絵を運んできた。その中には花の絵もずいぶんとある。

 「月下美人乃花滝」と題名する絵も、そのひとつ。まるで滝のようにして、咲花が群れ在るのに驚いて、その驚きのまま、絵にとったものだ。

 今は昔、「月の下の美人」に取りつかれているとうわさされる翁(おきな)がいた。平助じいさんと親しまれている方だったが、30年も育てている内に、花に恋したようになって、いよいよ奇奇としていたという。ばあさんを早くに亡くしたことも一理あったのだろう。

 7間ほどの土手一面に、一度に花を咲かすという。それはそれは、すごいことになると思い、旧暦の6月15日の深夜、私は平助じいさんの土手の園を訪れた。

 望月は皓々(こうこう)とさえわたり、そのさやけき光をそっくり写したように、すでにそこら中が満開だった。いずれかのガがハラハラと移動していた。まるで花の川か、あるいは終始流れ落ちる滝だ。こんなにも数が開くと、幽玄な情趣は影を潜め、しぶきも激しい水の異相に見え、私は胸の高鳴りが納まらなかった。

 平助じいさんの月下美人の花輪の数は何と、500を軽く超えていた。月下美人の花は2、3本を見ると、美しい乙女を想えなくもない。月の光に楚々(そそ)と写る姿を思いながら始めたには違いないと思えるのだが、翁は、花の海に浸って最後に何を思ったのだろうか。

 月下美人の園の傍らに、ちょうど良い感じでアファレカの葉が盛り上がっていたので、それをほど良い所に寄せて描いた。暗緑に、美しく映えて目に心地いい案配のものになった。

    ×   ×

 「名嘉睦稔展―風の伝言(イアイ)を彫る」は、松山市堀之内の県美術館で5月7日まで開かれている。

 

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