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トーク&ライブ制作

風のイアイに生命を感じ描く 名嘉睦稔さん

2017年4月8日(土)(愛媛新聞)

 

 

 風を感じる。首里城にそよぐ風、渦巻くように草木を揺らす風、海へ、そして未来へと吹き抜けていく風…。4月8日、愛媛県美術館で始まった「名嘉睦稔展-風の伝言(イアイ)を彫る-」。作品のそれぞれに異なる表情の風が存在している。

 

 代表作「節気慈風」の前で、沖縄県在住の版画家、名嘉睦稔(なか・ぼくねん)さんのギャラリートークは始まった。恵みの風の流れと生命を表現した畳12枚もの大作だ。生まれ故郷の沖縄県伊是名島で過ごした少年時代の原風景を描いたという。立春から大寒までの24節季、季節の移り変わりを風の変化で表現し、自然の中に生きる人間、バッタ、カメ、魚、トカゲたちを描いている。

 

 

 睦稔さんは、風に耳を澄ませ、肌で感じ、風が運んでくる自然からの、地球からの「イアイ」を心で感じ取る。

 「風は動いている。心の中で感じ、気持ちの中で、とりとめのない思いが見えてくる。悲しいこと、悔しいこと、人間の身勝手さも含めて無数の感情がある。「愛」と「憎」が人間の中に同じように存在している。揺れ動いている。それは生きているからこそ。生きていることのすごさを感じる」

 

 風のイアイに、「生命」の神秘や、生きていることへの思いを深める。

 「森の中で風を感じる。夕映えが残影として残る夕刻。やがて木はシルエットだけになる。真っ暗な森。怖さに圧倒され、逃げ出そうか、という感情に押しつぶされそうになりながら踏みとどまる。午後10時半ごろから森は変わる。木々が生き物のように、動き出す。怖さが薄れゆき、朝までゆったりとした時間が流れ、森全体に同化する。安楽の時が訪れる」

 

 

 心の中に浮かんだ「イアイ」を、絵に込める。埋め立てられる沖縄の干潟。魚たちの餌場を奪い、人間のためだけの土地にされる。「彼らの居場所であることを忘れている」。その思いは、代表作である大作「大礁円環」など数々の作品に込められる。

 「絵は見る人のもの。その人が感じるもの」と睦稔さんは言う。見る人と自分自身が思いを共有できた時、無上の喜びを感じる。それが「描き続けている理由」なのだと。

 

 

 

 砥石を水で湿らせ、入念に彫刻刀を研ぎ、精神を研ぎ澄ます。木版をじっと見つめ、両手で優しくなで、合掌。膝に置いていた手拭いを、頭に巻く。静から動への転換。木版に入れる彫刻刀の動きは約40分間、止まることなく、版を掘り続けた。

 

 8日、愛媛県美術館で行われたライブ制作。取り囲む人たちは、ただ、ひたすらにその動きに視線を注ぐ。大きく息を吐き、表情が変わった。口角が上がり、目じりを下げた睦稔さんは、完成した作品をゆっくりと観客に披露した。

 

 

「堀端の桜」。そう名付けた、桜が満開を迎えた愛媛県美術館近くの風景を描いていた。

 愛媛展開催にあたり、県内各地を巡った。「宇和島の段々畑に感激し、新居浜の太鼓祭りに興奮した。山や海、土地が持つ豊かさを感じている」。これまでに愛媛の風のイアイを彫った作品は10点余り。「イメージの扉を少し開いただけなのに、50点くらいのイメージが心の中に炸裂している。まだ、愛媛を全然描いた気がしない。この豊かな土地のその奥にもっとイアイがある気がする」と睦稔さんは語った。

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