久万高原の大雪 教訓生かす

[西日本豪雨5年]災害対応 円滑連携へ 高齢化・人手不足 自衛隊・事業者と備え強化

2023年7月5日(水)(愛媛新聞)

 高齢過疎化で地域のマンパワーが縮むなか、2018年に起きた西日本豪雨など大規模な自然災害への対応力をどう高めるかが課題となっている。昨年12月に県内を襲った大雪災害を受け、県は市町と自衛隊、事業者の連携をより重視するようになった。日ごろから顔の見える関係づくりを進め、備えの強化を目指す。

 

 12月23日からの記録的な積雪により、久万高原町では観測史上最大の76・8センチを記録した。幹線道路の国道33号が通行止めとなり、町内は孤立。大規模停電が続くなか、県は高齢者の転倒など副次的な被害が多発しかねないと懸念し、翌24日、自衛隊に災害派遣を要請した。

 

 当初、町は自衛隊をスムーズに受け入れられなかった。最初に除雪を予定した場所は災害派遣の要件である「緊急性・公共性・非代替性」の3要素を満たさず町は再度協議を余儀なくされた。隊員が同町上黒岩の集落に向かったのは、町役場に到着してから3時間が過ぎていた。

 

 もともと、市町と自衛隊はカウンターパートになっているが、久万高原町の担当者は「(自衛隊への依頼は)敷居が高いと思っていた」と話す。

 

 とはいえ、町は自力で危機を乗り切るのが難しくなりつつある。高齢化率は5割に迫り、1人暮らしのお年寄りも多い。除雪を請け負う土木業者や重機も十分とはいえない。

 

 県はこれらが一つの自治体に限った問題ではなく、今後、自衛隊への派遣要請が増えると予想。そこで5月、県と20市町、自衛隊による担当者連絡会を設置。要請手順を点検し、有事の際はためらわず情報共有することなどを確認した。8月の県総合防災訓練では自衛隊も参加し、積雪や土砂によるライフライン被害、孤立地区対応を想定した訓練を実施する予定だ。

 

 事業者との間でも連携を進めている。大雪によって停電が長時間に及んだこともあり、県は四国電力と勉強会を開催。四電は断線したエリアを見つけた時点で一報を入れ、場所の特定後にも連絡する2段構えの運用に改めた。四国電力送配電の担当者は「土砂崩壊の場合でも同様の対応を取る可能性がある」と話す。県は今後も定期的に勉強会を開き、「最善の手を尽くせるようトレーニングを重ねたい」とする。

 

 兵庫県立大大学院の紅谷昇平准教授(都市防災学)=松山市出身=は自治体と民間の災害協定の締結などが進むなか、「一度できた関係を実効性のあるものにしていくことが大事だ」と指摘。平時からコミュニケーションを図り、いざという時に住民の命を守る力になることを期待する。(織田龍郎)

 



ライフライン情報一覧へ
災害ニュース一覧へ