2006/05/27付愛媛新聞
[社説]告発警官異動取り消し
県警の権力的体質が指弾された
県警の捜査費不正支出を内部告発した仙波敏郎巡査部長が配置転換された問題で、県人事委員会は県警の処分を取り消す裁決をした。
県人事委員会は「報復人事だ」とする巡査部長の不服申し立てを受け、口頭審理などを進めてきた。裁決は配置転換について「健全な社会通念に照らし妥当性を欠く」と結論付けた。真っ当な判断だ。
問題の発端となったのは、二〇〇五年一月、仙波巡査部長が捜査費問題で現職警察官として初めて実名による告発に踏み切ったこと。「組織ぐるみの不正や私的流用があった」などとする証言内容は具体的で、県警の内部調査を根本的に覆すものだった。
これに対する県警のなりふりかまわぬ対応は尋常ではなかった。会見の一週間後に地域課鉄道警察隊から通信指令室への異動を発令し、「自殺防止」などの理由で拳銃を取り上げた。「本人の実績、経歴をふまえた適正な人事」といった説明も、県民の不信感を増幅させるだけだった。
今回の裁決は、巡査部長の不利益を認定し県警の主張を退けた。「異動先の係新設などは恣意(しい)的になされた」「行政目的上の必要性はない」「異動後の業務量は著しく少ない」などの判断である。拳銃保管に関する請求は退けたものの「自殺防止」などは認めなかった。
さらに、配置転換処分について「告発会見したからといわんばかりのタイミングで行われ、会見との強い関連性がある」と指摘したことは見逃せない。報復的な意図があった疑いを示唆するものだ。
弁護団によると、公務員の人事不服申し立てが認められるのは極めてまれだ。それ自体注目すべきだが、さらにより重い意味を見いだしたい。
まず、県警の「疑惑隠しには何でもあり」という体質に異議が唱えられたことだ。そこには人事権の乱用にとどまらない根深い問題がある。恣意的で理不尽ともいうべき警察権力の一面をのぞかせたのではないか。県警は裁決を厳粛に受け止めるべきだ。
告発内容が事実無根なら県警はなぜ処分に走ったのか。県民の素朴な疑問だろう。
また、裁決の背景には、四月から施行された公益通報者保護法があるだろう。「少なくとも会見したこと自体で不利益を与えないよう配慮すべきだった」と指摘したのは、公益を目的とした内部告発に対する不利益を戒める姿勢を示したといえる。評価するとともに、告発者保護の流れが今後とも定着するよう期待したい。
そもそも現職警官が告発した問題は依然、全容解明されていない。歯がゆい限りだ。県監査委員が特別監査で疑義を指摘したうち一部については県警も不適正な支出と認めた。それでも疑念に応えるには程遠い。
「うみを出し切って再出発してほしい」。こう願うのは当の巡査部長だけではない。県民多くの思いだろう。