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| 告発から1年を前に記者会見する仙波敏郎巡査部長(左から2人目)と支援弁護団長の薦田伸夫弁護士(左)=19日、松山市 |
県警地域課の仙波敏郎巡査部長(56)が県警の捜査費不正支出の実態を実名告発してから二十日で一年になる。警察の裏金問題は北海道や高知県など全国各地で浮上しているが、現職警察官による実名告発はほかに例がない。県警や県民に与えた衝撃は計り知れなかったにもかかわらず、全容解明されていないのが現状だ。具体的な告発が、なぜ県警の“牙城”を崩し切れないのか。訴訟や国会論議にまで発展したこの一年を振り返る。
(県警不正経理取材班)
「実力で(会見を)止めましょうや」「そういったことをできるわけがなかろうが」。仙波さんが告発の記者会見をする前日の昨年一月十九日夜。県警本部内で、ある幹部が実力行使による告発阻止を提案し、仙波さんの当時の上司、地域課長が反対したという。昨春定年退職した課長が昨年末、県人事委員会の審理で明らかにした。
このやりとりから、告発に対する県警の危機感の大きさがうかがえる。既に浮上していた裏金疑惑を否定できなくなる可能性もあることを、県警自身が最も分かっていた証しともいえる。
告発後、仙波さんは鉄道警察隊から通信指令室に異動させされ、拳銃も取り上げられた。これらが報復に当たるとする仙波さんは、国家賠償請求訴訟を起こし、現在係争中だ。
この訴訟で仙波さんは陳述書を提出、こう訴えた。「裏金づくりを拒否する者、それを口外する者は『こうなるぞ』と言わんばかりのなりふり構わぬ異動だ」
仙波さんが感じる「圧力」は、まだある。陳述書で、管理職がほかの職員に「仙波と話をしないように」と指示したことや、仙波さんと電話で話した同僚が数日後に上司から事情聴取されたことなどを挙げ、批判している。
告発内容を調査した県警は昨年六月、「事実は確認できなかった」と全面否定。捜査費に関しては「不適正な会計処理があった」としながら、私的流用や裏金の存在は一貫して認めなかった。県民の疑念は残ったままだ。
「県警はうみを出し切って再出発しなければいけない」―。仙波さんが告発に込めた思いは、県警には届かないのか。
仙波さんはこの一年を振り返って思う。「幹部にはわずかな望みを持っていたが、駄目だった。腐り切っている」。失望感をも覚えるが、告発を後悔することはない。「これまでの警官人生の中で、一番正義を貫けた一年だった」
若い警察官からは「僕らが言えないことを言ってくれた」などと声を掛けられるという。「彼らが志を持って仕事を続けられるためにも、最後まで不正を追及する」と心に決めている。