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先進医療 病気腎移植を不承認 厚労省専門家会議 医学的問題多い 2012年08月24日(金)

病気腎移植の先進医療申請を認めない判断をした厚労省の専門家会議=23日午後、東京・霞が関(撮影・多田良介)

 宇和島徳洲会病院(宇和島市住吉町2丁目)などが申請していた直径4センチ以下の小径腎がんを用いた第三者間の病気腎(修復腎)移植の先進医療適否を審議する厚生労働省の「先進医療専門家会議」(座長・猿田享男慶応大名誉教授、21人)が23日、同省であり「医学的、倫理的な問題が多い」として、一部保険が適用される先進医療に認定しなかった。

【徳洲会 再申請の意向】
 同病院は今後、指摘された点を検討して再申請する方針。
 会議は医療各分野の11人が出席。「ドナー(提供者)にとって有効性は考えられない」「(被移植者の順位などを決める)第三者機関と称するものが申請施設内にあり、公平性、透明性、医学的妥当性の全てが不十分」と厳しい意見が相次ぎ、「先進医療以前に、病気腎移植の在り方や条件整備に時間をかけた議論が必要」などの指摘もあった。
 猿田座長は議論継続の「保留」を提案したが、会議内の意見を受けて不承認と結論付けた。座長は「最先端医療を実用化させ、いかに早く患者に届けるかが会議の大きな目的だが、安全性は絶対に確保しなければならない」とし「申請施設が今日の論点を検討して再提出すれば審議したい」と述べた。
 傍聴した徳洲会グループの能宗克行事務総長は「指摘された手続き論、透明性と公平性、フォローアップも含めカバーできる資料を早急に用意する」と再申請の意向を表明。患者団体「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長は「1回で認められるとは思っていなかったが、もっと議論が進展してほしかった。患者がいる以上、道を閉ざしてはいけない」と話した。
 一方、先進医療適用に反対する日本移植学会の湯沢賢治理事(国立病院機構水戸医療センター移植医療研究室長)は「例外はあるが、基本的に部分切除という日本泌尿器科学会のガイドラインにのっとれば、小径腎がんが全摘(全部摘出)になるわけがない。客観的に見て妥当な判断」と述べた。
 宇和島徳洲会病院は2011年10月、臨床研究として行っていた病気腎移植の先進医療適用を厚労省に申請。今年4月、書類不備などを指摘され、直径4センチ以下の小径腎がんと診断されたドナーから摘出した腎臓を修復し、慢性腎不全で透析中の患者に移植する点に絞り6月に再申請していた。
 日本移植学会など関連5学会は2月、国際的な腎がん治療指針から懸け離れているなどとして、適用しないよう厚労相に要望書を提出。病院側や患者団体は反論の声明を発表していた。(森口睦月、山根健一)

【認定に高いハードル】
 第三者間の病気腎移植を先進医療と認めなかった23日の厚労省の専門家会議では、ドナーの安全性確保が議論の中心となった。ほかにも小径腎がんの全摘の正当性や患者選定の透明性・公平性など多方面で課題が浮き彫りになり、認定には高いハードルが課せられたといえる。
 申請があった病気腎移植の前提となる小径腎がんの治療について、徳洲会や患者団体は声明などで「全摘が標準」と主張してきた。しかし愛媛大医学部の横山雅好教授(泌尿器科)は内視鏡で腫瘍部分のみ摘出する治療手法が近年、急速に進歩していると指摘。県立中央病院(松山市)でも腎がん部分切除の件数は増加傾向で、同病院の泌尿器科医は「腎機能を温存するため、可能なら部分切除が標準」と話す。
 日本移植学会などは反対声明で「結局は医師の意図通りに全摘が行われる」とした。会議に提出された意見書でも摘出の妥当性をめぐる問題は指摘され、現時点での宇和島徳洲会病院の態勢では「推進派による全摘の偏重説明の可能性が存在し得る」と踏み込んだ。
 患者選定の透明性や公平性についても問題視する声が相次ぎ、同病院を舞台にして発覚した2件の臓器売買事件を受けて強化されたはずの院内の倫理委員会の判断が説得力を持っていないとも受け取れる発言もあった。
 一方、透析患者などが増える中、ドナー不足は深刻だ。県臓器移植支援センターによると、県内透析患者は2011年末で約3500人。109人がレシピエント(被移植患者)として日本臓器移植ネットワークに登録している(12年6月末現在)。平均待機年数は約15年で、ドナーが見つかるのは県内で年間2人前後にすぎない。国内の腎移植希望者は1万2300人(7月末)にも上る。
 会議では、問題点の列挙だけでなく「少しでも道があれば、そこへ向かう道を忘れてはいけない」との意見も出た。
 絶対的ドナー不足の中で移植希望者をどう救うのか。先進医療の適否にとどまらず、「ドナー、レシピエント双方の利益は何か」との原点に立ち返った議論もさらに必要だろう。(森口睦月)