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1医師に移植全権 求められる監視機能 県内他病院にも「穴」 2006年10月03日(火)

臓器売買事件に絡み家宅捜索を受けた宇和島徳洲会病院=1日午前8時35分ごろ、宇和島市住吉町2丁目

 複数の医師らが医療倫理について協議する倫理委員会は未設置、生体腎移植の全権は一人の医師が掌握する。臓器売買の「舞台」となった宇和島徳洲会病院(宇和島市住吉町二丁目)の特異な体質が二日、浮かび上がってきた。だが「妻の妹」と紹介されたドナー(臓器提供者)の身元確認をしなかった点については、県内の他病院でも同様の違法行為を見逃しかねない「穴」が存在することも分かった。

 死体腎移植はドナー、レシピエント(移植を受ける患者)の選定手続きなどが厳密に決まっているが、生体腎移植は医学的条件が整えば病院が自由に行えるという明確な違いがある。だからこそ移植医療を行う病院には臓器売買などの違法行為を見逃さない監視機能が求められる。
 日本移植学会の倫理指針では、ドナーとレシピエントの関係を「六親等以内の血族と三親等以内の姻族」に限定。該当しない場合は医療機関の倫理委員会の承認を得た上で、同学会に意見を求めることになっている。
 年間約二十件の生体腎移植を手掛けている県立中央病院(松山市)は、学会指針に基づきドナーを選定しているが、倫理委を開く必要があるケースはこれまでなかった。外形的に問題はなくても人間関係が疑わしいと感じた場合は、倫理委に諮ることになるという。
 移植件数が累計百六十件の愛媛大医学部付属病院(東温市)も同様だが、担当医師は「指針の範囲でも売買の疑いがあるときは倫理委にかけることになる」と説明。県立三島病院(四国中央市)は、二親等以内の親族と夫婦間に限定。夫婦の場合は医学的に不適合なケースがある上、将来の離婚も考えられるため、複数の院内組織で検討することにしている。
 一方、宇和島徳洲会病院では、院長代行で腎移植で全国的に名の通った万波誠医師(65)に、移植関係は任せっきり。万波医師は日本移植学会に所属していなかった。院内の倫理委員会規程も五月にできたばかりで、倫理委は未設置だった。
 さらに腎移植約三十年の経験を持つ万波医師は「臓器は普通、親族しか提供してくれない」との移植観を示す。「妻の妹と申告されて信じた。だまされた」と言う。
 ただドナーが本人や患者の申告通りかの人物確認は、県内の多くの病院が「医師と患者の信頼関係」「怪しい場合は面談する中で分かる」とあいまいに答える。「患者側を疑ってかかることはしないし、できない」が基本的な考え方で「戸籍などの書類で本人確認はしないのが普通」。宇和島徳洲会病院だけの問題とは言い切れない。
 しかし、ドナーの名前や住所では親族と判断できない場合もある。現状の生体腎移植医療のシステムには臓器売買が入り込む余地があることを、今回の事件は示した。
 ドナーの身元確認が、医師と患者側の信頼関係に委ねられている現状をいかに見直し、違法行為をどう防ぐかが今後の議論の焦点になりそうだ。
【移植学会倫理指針】
 日本移植学会倫理指針の生体臓器移植に関する条文の要旨は次の通り。
 生体臓器移植は親族に限定する。親族とは6親等以内の血族と3親等以内の姻族を指す。
 親族に該当しない場合は、当該医療機関の倫理委員会で、症例ごとに個別に承認を受ける。その際の留意点は、有償提供の回避策、任意性の担保など。実施を計画する場合は日本移植学会に意見を求める。学会は倫理委員会で親族以外のドナーからの移植の妥当性を審議し、是非の見解を当該施設に伝えるが、最終的な決定と責任は当該施設にある。
 提供は本人の自発的な意思によって行われるべきであり、報酬を目的とするものであってはならない。
 提供意思が他からの強制ではないことを家族以外の第三者が確認する。「第三者」とは移植医療に関与していない者で、提供者本人の権利保護の立場にある者を指す。
 いかなる理由があろうと、売買された臓器の移植を行ってはならない。国内外を問わず売買に関与する医療施設や医療関係者、臓器の売買を斡旋する者に患者を紹介することを禁じる。
【疑う余地なく「だまされた」 万波医師一問一答】
 宇和島徳洲会病院の生体腎移植をめぐる臓器売買事件に関連して二日、会見した手術の執刀医・万波誠医師の一問一答は次の通り。
 ―日本移植学会が示した臓器移植に関する倫理指針(ガイドライン)をどう考えるか。
 ガイドラインは当然重要だが、それより前に腎不全に苦しむ患者と医師が話し合って信頼関係を築くことが大事。口頭で患者に納得いくまで説明している。これまで(以前の勤務先での執刀を含め)六百症例以上の腎移植をしたが、術後に患者やドナー(臓器提供者)と紛争になったことは一度もない。
 ―この事件では、ドナーが親族でなかった。
 臓器移植は普通は親族の間でしかあり得ない。術前に戸籍謄本などの公的書類で調べるようなことはしない。ドナーは(ドナーを自分の妹と紹介した)松下容疑者と体形も似ており、積極的に臓器を提供する意思も見られ、疑う余地がなかった。だまされたと思う。
 ―事件が移植医療への逆風になるのではないか。
 逆風になるとは思わない。腎臓が悪くて困っている患者は多い。手術の技術も向上している。現在では手術後の腎臓の五年生着率も95%だ。これをきっかけに、逆に移植手術を進めていきたい。明日、明後日も移植手術を予定通り行う。
 ―臓器売買が発覚したが、氷山の一角との指摘がある。
 ほとんどの医師もそう考えているのではないか。(ドナーと患者が)兄弟であっても金銭が動いていないとは限らない。背後に何が起きているかは、こっちでは分からない。