判決後の会見で「今日が裏金根絶の第一歩」と話す仙波敏郎巡査部長=30日午後2時45分ごろ、高松市の香川県弁護士会館 「本件控訴を棄却する」―。県警の仙波敏郎巡査部長(59)による国家賠償請求訴訟の控訴審判決で高松高裁は三十日、一審判決を不服とした県の訴えを退けた。直前まで緊張の面持ちで裁判長を見つめていた仙波巡査部長は、判決を聞き深く一礼。裁判官が退廷すると傍聴席の支援者から拍手がわき、仙波巡査部長に笑顔が戻った。「ありがとうございました」と支援者に頭を下げる姿に、拍手は一層大きくなった。
「当然だが正直うれしい」。閉廷後、記者に囲まれ、照れるように話し始めた仙波巡査部長。「正義を認めてもらうのがこんなに厳しいのか」。三年九カ月の闘いの勝利にほおを緩めたのもつかの間、「これまでは準備期間。今日が裏金をなくす第一歩」とすぐに表情を引き締めた。
判決後の会見で薦田伸夫弁護団長は、訴えの根幹である配置転換の違法性が認められた点を強調。「配置転換は『嫌がらせ』『見せしめ』とまで表現され、今後の社会で重要性を増すだろう内部告発者の保護との観点からも良い判例となるだろう」と判決を評価した。
ただ控訴審判決は、仙波巡査部長の告発会見の妨害行為を違法とは認定せず、一審で主張が認められた県警本部長の関与も「証拠がない」とされた。また「裏金」の存在にも触れなかった。薦田弁護団長は「(裏金に)踏み込んだ事実認定を求めていただけに残念。期待外れだった」。
「『嫌がらせ』とまで言いながら、なぜその嫌がらせをする必要があったのか、その背景に踏み込んでいないのは残念だ」。弁護団の一人は「本部長の関与についても明らかな事実はたくさんある。今回の判決は高裁がさまざまなものに目をつぶった結果」と悔しがった。
仙波巡査部長は「自分の言葉に一片でもうそがあれば、懲戒免職になってもおかしくない。判決が裏金に触れなくても真実は一つ。正しい警察に戻ってほしい」とかみしめるように話した。
仙波巡査部長らは同日夜、松山市内で支援者らに判決を報告。弁護団は一日、上告を断念するよう県、県議会各派、県警本部長らに申し入れを行う方針だ。
【公費で“連敗” 重く 県議会各会派 上告に厳しい見方】
県の控訴を棄却した、仙波巡査部長による国賠訴訟の二審判決。敗訴の中にも意義を見いだそうとする県警幹部。一方で控訴議案を可決した県議会各会派は「連敗」を受け、上告には一様に厳しい見方を示した。
敗訴の知らせは県警本部にすぐに伝わり、幹部らは「やはり」と肩を落とした。しかし判決理由で警察組織にとって最大の争点だった「本部長の関与」が否定されたと知ると、にわかに空気が緩んだ。ある幹部は「結果は敗北だが、内容に前進があった」と控訴した意義を強調した。
昨年の九月県議会で、県警が求めた控訴を支持した最大会派の自民。篠原実県連幹事長は「県警としては非常に残念だろうが、控訴棄却の判断は尊重しなければならない」と表情を引き締める。
自民とともに賛成の立場に立った笹岡博之公明党県本部代表は「配置転換などは県人事委員会の認定を追認しており、これ以上争うことに県民の理解は得られない」と県警側に上告断念を求めた。
一方、反対に回った民主の横山博幸県連幹事長は「県警はメンツがあったのだろうが、恥の上塗りだった」と厳しく指摘。同様に社民党県連の村上要代表も「控訴は無理があると思っていたが、その通りの判決が下った」と分析した。共産も上告断念を求める方針だ。
県警によると、控訴審での県側の訴訟費用は九十一万円、一審と合わせて三百万円を超える支出があったという。横山民主県連幹事長は「公費を使った訴訟対応なので、県も県警も判決を真摯(しんし)に受け止め今議会で県民に説明すべきだ」と強調した。