五日閉会の九月定例県議会では、二つの事柄に対する議会の動きに県民の視線が注がれた。一つは県警捜査費不正支出問題の告発会見直後に配置転換された県警巡査部長による国家賠償請求訴訟の控訴議案。もう一つは、松山盲学校を松山聾(ろう)学校に移転・統合する計画案の慎重な検討を求めた請願だ。
県の控訴議案を審議した警察経済委員会で、自民党委員は県警側に裏金の有無を質問。「執行上の問題はあったが裏金の事実は認められなかった」という従来同様の答弁を受け、別の同党委員が「ほとんどの人は、裏金を隠す大きな権力を相手に警察官個人が戦って勝ったと思っている。裏金がないなら、きちんと主張しなければ今の論調が正しいことになる」と控訴を後押しした。
だが、県人事委員会は昨年六月に発表した配置転換取り消しの裁決で「会見を行ったこと自体を(配置転換の)理由としているとしか解せない」と県警による報復人事を事実上認定し、国賠訴訟の松山地裁判決も裏金について「内部告発内容の真実性を安易に否定することはできない」とした。世論の底流にはこうした公的機関の判断もある。
議会の役割の一つに「民意の反映」が挙げられるが、裏金の存在をかたくなに否定し続ける県警の主張だけに依拠し、世間の誤解を正せと訴える姿勢は、民意と乖離(かいり)していると言わざるを得ない。公益通報者を不利な扱いから保護する法の趣旨に照らしても、控訴に賛成した会派の対応に疑問が残る。
自民党は控訴議案採決前の討論で、司法の三審制を理由に「同情論や感情論で正当な権利を奪うな」と主張した。しかし、ハンセン病国賠訴訟の控訴を小泉純一郎元首相が断念したように、行政側には、民意に基づく政治判断という選択肢もある。
一方、松山盲学校の移転・統合問題では、計画の慎重検討を求める請願を全会一致で採択したことにより、県教育委員会は強引に事を運ぶことが難しくなった。理事者側の「暴走」をくい止めるチェック機能を発揮した事例として県民に記憶されるだろう。
県から市町への権限移譲や深刻な財政難などで存在感が以前より薄らいだとも言われる県議会だが、その権能は大きい。果たすべき役割を自覚し、持てる力を県民本位で行使してこそ、重い負託に応えられよう。
(政治部・山本良)