県警の捜査費不正支出問題を内部告発した仙波敏郎巡査部長が県を相手に慰謝料を求めた国家賠償請求訴訟で、松山地裁は請求通り百万円の支払いを命じた。
高橋正裁判長は判決で「配置転換は社会通念上、著しく妥当性を欠く」と指弾し、違法と断じた。報復人事で精神的苦痛を受けたとする仙波巡査部長の主張を認めた判断は、すんなり腹入れできる。きわめて厳しい判決の重さを、県側はかみしめなければならない。
県警地域課鉄道警察隊に所属していた仙波巡査部長は二〇〇五年一月二十日、捜査費問題で現職警官として初めて実名による告発に踏み切った。会見を開き「過去に偽名領収書を作成するよう上司から依頼された。裏金づくりのシステムだった」などと赤裸々に語った。その数日後、県警は仙波巡査部長に地域課内の通信指令室への配置転換を内示し、同二十七日に地域課長が辞令交付した。
仙波巡査部長はこの異動を不当として国賠訴訟を起こし、「告発会見に対する報復人事。県警本部長ら上層部の関与があった」と主張した。その理由として告発会見直後に拳銃を取り上げられたのは見せしめ行為で、外勤職場にいられなくした―などを挙げていた。
対する被告側の県警は「同一課内の配置転換は地域課長の権限で決定した」と上層部の関与を否定した。通信指令室企画係の新設は〇四年末に内定済みで、拳銃を携帯できない原告の勤務場所として前倒し設置は適切だったなどと反論し、請求棄却を求めていた。
双方の主張は真っ向から対立していたが、判決は明快そのものだ。「新たな係の増設や配置人員は県警本部長の権限で、本件配置替えについて県警本部長が関与したことを否定することはできない」と指摘した。県警の組織ぐるみのかかわりを認めた判断を評価したい。
原告勝訴の判決には伏線もあった。仙波巡査部長は県人事委員会に配置転換処分の取り消しも申し立てていた。これに県人事委は昨年六月、「配置転換は人事権の乱用」と県警の処分を取り消し、仙波巡査部長は鉄道警察隊に復帰した。県人事委の裁決も「健全な社会通念に照らし妥当性を欠く」と結論付けていた。繰り返された批判を県警は重く受け止めるべきだ。
今回の判決は県警の「裏金問題」にも踏み込み、裏金づくりについて「告発の真実性を安易に否定することはできない」とした。仙波巡査部長は一九七三年から九一年にかけ、偽領収書の作成を上司から指示されたとする。証人出廷した元北海道警幹部は「全国の警察組織の中で長年にわたり組織的に敢行されている」と証言した。裁判所がそれらを重視したからにほかなるまい。
また仙波巡査部長に告発会見をやめさせようとした上司の説得は「相当性の程度を超えたもので、違法」と戒めた。県警の完敗で県民不信は募ったはずだ。県警の対応が問われる。